連載
» 2011年04月15日 12時00分 公開

疲れたあなたに微笑みの一時をLightSwitchで情シスを効率アップ(1)(2/2 ページ)

[吉村哲樹,@IT]
前のページへ 1|2       

リソース問題とユーザーリクエストの板ばさみに遭う情シス

 ただ問題は、情報システム部門がシステム化ニーズに応えられようと応えられまいと、エンドユーザーもまた、決められた期間内に決められたミッションをこなさなければならないという現実である。

 そこで出てくるのが、ユーザー部門が情報システム部門に頼らずに、独自にシステム化を行うケース、いわゆるエンドユーザー・コンピューティング(EUC)だ。特に、Microsoft Office Excel(以下、Excel)のマクロやVBAを使った小規模アプリケーションは、多くのビジネス現場で使われている。ある程度ITリテラシーの高い人がいる業務部門では、Microsoft Office Access(以下、Access)を使ったアプリケーションを運用している例もある。

 こうしたEUCによるアプリケーションは、現場の課題やニーズにいち早く対応できるという点では、今日のビジネス環境に極めて良くフィットする。しかしその半面、情報システム部門の立場から見ると、いくつかの問題点をはらんでいる。

 まず、こうしたアプリケーションのデータは部門サーバ、場合によっては個人PC上で管理されているため、多数のユーザーで共有するには限界がある。部門内の少人数で共有する程度なら問題はないだろうが、いざユーザーの対象範囲を広げようとなると、システム上の限界に突き当たる。また、データの整合性やセキュリティなど、ITガバナンスを担保するためには、各アプリケーションの存在を情報システム部門が把握し、しっかりと管理する必要がある。特にExcelのマクロなどは、個人が勝手に開発し、仕様書を作らないことで、本人以外、正しい使い方が分からなくなってしまうこともある。つまり、きめ細かく管理しなければ、業務ノウハウの属人化を招くことにもなってしまう。

 このように、社内で無秩序に乱立するExcelやAccessアプリケーションの管理は、情報システム部門にとっては頭痛の種である。しかし、かといってEUCを全面的に禁止してしまうと、今度は現場ニーズを迅速にシステム化するすべがなくなってしまうし、肝心の業務に支障を来たす恐れもある。ここにも、情報システム部門が抱える大きなジレンマがあるのだ。

業務システム構築の新たなメソッドを提唱するマイクロソフト

 では、情報システム部門のリソース問題と、ユーザー部門からのシステム化ニーズという課題を解決するためにはどうすれば良いのだろうか?

 実は、こうした課題を解決するためのソリューションは、複数のベンダから提供されている。本連載で取り上げる、マイクロソフトが2011年中に提供開始予定の「Visual Studio LightSwitch」(以下、LightSwitch)というツールも、その1つに数えられる。

 LightSwitchは本稿執筆時点(2011年4月)では、まだベータ2版の段階だが、その機能の多くはすでに日本語環境上で利用可能となっている。

ALT 図1 「Microsoft Visual Studio LightSwitch」のシンプルなUI。詳しい機能は次回から解説する(クリックで拡大)

 同製品は、一言で言えば業務アプリケーションの簡易開発ツールだ。「本格的な業務アプリケーションが驚くほど簡単に構築できる」というのが売り文句だが、確かにその使い勝手は開発ツールというよりは、Accessのそれに近い。しかし、Accessと異なるのは、Microsoft SQL ServerやMicrosoft SQL Azureなどのデータベースをデータソースとする本格的なデータベースアプリケーションが構築できるようになっていることだ(クライアントに一緒にインストールされたSQL Server Express上にテーブルを自動生成させたり、既存のデータソースから読み取ったりすることも可能) 。先ほど挙げたような、EUCが持つさまざまな問題点は、かなりの部分が解消できるのではないだろうか。

 一方、同じ開発ツールであるVisual Studioと比較した際も、LightSwitchの大きな特徴は、やはり「アプリケーションを作成するのが非常に簡単だ」という点になる。具体的には、「テーブルを新規に作成するか、既存のデータソースと連結する」→「画面のレイアウトを決定する」という2つのステップでアプリケーションを作成できる。しかも、その際に必要なのはツールの操作だけであり、コーディングは一切不要だ。

ALT 図2 テンプレートを使って、“コードを書かずに業務アプリを作れる”点がMicrosoft Visual Studio LightSwitchの大きな特徴だという。こうした機能が、情シス業務の効率化においてどのような意義を持ってくるのか??本連載で詳しく掘り下げていく(クリックで拡大)

 また、LightSwitchのデータソースには、サードパーティ製アプリケーションのデータベースを使うこともできる。この機能を使えば、LightSwitchで既存アプリケーションのフロントエンドを改善する??すなわち、使いやすいUIを作って「誰にとっても使いやすくする」ことで業務の属人化防止にも役立つのではないだろうか。複数のデータソース間のリレーションを管理することもできるため、簡易的なシステム連携も実現できるだろう。さらに、LightSwitchを使って構築したアプリケーションは、UIがSilverlightで自動的に構築されるため、「RIAを簡単に実装する」という目的も実現できそうだ。


 情報システム部門のリソース問題と、ユーザー部門からのシステム化ニーズという課題を解決するための製品は、「複数のベンダから提供されている」と先に述べた。しかし、そうした中でも、以上のように

“開発の手軽さを確保しながら、開発したアプリケーションの本格運用まで実現できる”という懐の深さは特徴的ではないだろうか。この点が本連載のテーマ、「情報システム部門の“その場限りではない”業務効率向上」の実現手段を考えるに当たって、本製品に着目した最大の理由だ。

 特に、情報システム部門で働く方にとっては、何と言っても「驚くほど簡単に、業務アプリケーションを構築できる」という点が気になるところだろう。もし本当にそうだとすれば、予算と要員不足のために、今までできなかったことの多くが実現できるようになる。

 とはいえ、ほかの多くのツールと同様に、LightSwitchも「魔法の玉手箱」ではないはずだ。できることとできないこと、利用が適しているケースと適していないケースがあることだろう。では、どのように使えば、今回挙げた情報システム部門の課題解決に役立つのか――次回から、具体的に検証していきたい。

筆者プロフィール

吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ