クラウド時代のIT資産管理リポート IT資産管理イベント(3/3 ページ)

» 2011年04月20日 12時00分 公開
[唐沢正和,@IT]
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ソフトウェア資産はライフサイクルに沿った計画的な運用が大切

 4番目のセッションでは、ウチダスペクトラム サービス&ソリューション担当 執行役員の紀平克哉氏が、「ITコスト最適化を実現する、IT資産運用管理」と題して、ハードウェア/ソフトウェア資産のライフサイクルに沿った管理と、ソフトウェア資産管理の重要性について解説した。

ウチダスペクトラム サービス&ソリューション担当 執行役員の紀平克哉氏 ウチダスペクトラム サービス&ソリューション担当 執行役員の紀平克哉氏

 まず紀平氏は、昨今、多くの企業でITコスト最適化が喫緊の経営課題となっていることを指摘。特に急務とされているのが「既存のITコスト削減」と「IT調達・購買の最適化」だ。これらへの対策として、「ソフトウェア資産管理の重要性が一層高まっている」と解説した。

 「ソフトウェアはライセンスポリシーの変更やバージョンアップといった“変化”を認識して、確実に管理することが大切。また、ライフサイクルの概念に沿った管理も重要だが、多くのユーザーはそうした意識が薄く、調達・購買コストばかりが肥大してしまっているケースも多い」

 こうした現状を見据え、同社ではソフトウェア資産管理支援サービス「SAM N@VI」を提供している。2006年5月に策定されたソフトウェア資産管理の国際基準「ISO/IEC19770-1」に準拠したサービスで、ソフトウェアの戦略的な導入・活用、コスト削減、コンプライアンス担保などに対して“実効性のあるソフトウェア資産管理”の実現をサポートするという。

 また紀平氏は、IT資産全般の運用コストを最適化する「IT資産運用管理」のためには、

戦略的にIT資産を導入・運用するための「導入プロジェクト」と、ハードウェアの計画から調達、廃棄までを管理する「PCライフサイクル」、そして「ソフトウェアライフサイクル」という“3つのライフサイクル”を連携させて回すことが重要だと指摘する。

 「すなわち、IT資産の導入プロジェクトを軸として、PCライフサイクルとソフトウェアライフサイクルを“IT資産運用管理の両輪”として回すイメージだ。これにより、真の意味で無駄のない、永続的なITコスト最適化を狙える」

 紀平氏は最後にこのように述べ、計画的かつ、システム構成の変化にも確実に対応できる資産管理体制の整備を促した。

IT資産管理とは、戦力を把握し、戦略的に生かすための取り組み

 特別講演にはオリンパス コーポレートセンター IT統括本部(2011年4月現在、「IT本部」に変更) 本部長の北村正仁氏が登壇し、クラウド時代に向けた戦略的IT資産管理への取り組みについて紹介した。

 同社は、2006年に中期経営計画を策定したが、そのタイミングで情報システム部を再編し、IT統括本部を設置したという。「これにより、従来までの基幹系システムに加え、部門系システム、さらには全社のITガバナンスまでカバー領域を拡大した。言わば、システムを構築し運用するだけの部門から、ITを使って経営に貢献するための部門へと考え方を改めた」と、北村氏はその狙いを語る。

オリンパス コーポレートセンター IT統括本部(2011年4月現在「IT本部」に変更) 本部長の北村正仁氏 オリンパス コーポレートセンター IT統括本部(2011年4月現在「IT本部」に変更) 本部長の北村正仁氏

 そして、IT統括本部の大きなミッションとなったのが、ITガバナンスの強化であった。北村氏は以前、事業部でITに携わった経験を持つが、「全社のITシステムはブラックボックス化しており、当初は実態が把握できなかった」という。そこで、まずITの“見える化”を推進。IT資産や掛かっているコストを調べて「IT白書」を作成し、ITマネジメントを強化したほか、IT戦略推進委員会、IT施策展開委員会を立ち上げ、全社的なITガバナンス体制を整備した。

 ITガバナンス強化に向けた具体的な施策は、「ソフトウェアの資産管理」「ハードウェア資産管理」、そして「社内クラウドサービスの提供」の3つだ。

 ソフトウェアの資産管理では、各部門・子会社任せだった従来の管理体制を見直し、IT統括本部に各部の管理機能を集約。さらに、全社にPCのライセンス管理システムを導入することで、全社視点・全体最適でSAM(Software Asset Management)を行う体制を構築した。

 ハードウェア資産管理では、ITインフラの最適化を目指し、「インフラ最適化プロジェクト」を発足した。このプロジェクトでは、既存のITインフラを整理し、サービスレベルのパターン化を実施。併せて、統合化の基本方針を策定し、各サービスレベルのパターンを意識した最適化構成への移行を実現した。

 そして、こうしたインフラ最適化プロジェクトの成果の一つとして、2009年4月に新データセンターを構築。新データセンターにサーバを集約、仮想化し、社内クラウドサービスを提供開始している。現在、160台の仮想サーバが稼働しており、物理サーバ1台あたり10サーバの基準で、問題なくサービス提供できているという。

 北村氏は、こうした自社の成功事例を踏まえ、クラウド時代に求められるIT資産管理について、「IT資産は企業の戦力そのものだ。現在の戦力を正確に把握し、その戦力を集約・活用できなければ勝ち残れないだろう。従来のような受け身のIT資産管理から、攻めと守りの戦術に変革していくことが重要になる」との考えを示した。

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