スマホと80年代PC――比べて分かる活用のツボ企業のためのスマホ徹底“活用”術(1)(1/2 ページ)

» 2011年06月22日 12時00分 公開
[井上実,モバイルインターネットテクノロジー]

スマートフォンの企業導入が加速している。しかし、しっかりと使いこなすためには、どうすれば自社の業務に効率的に適用できるのか、従業員のどのようなニーズをかなえられるのか、その特性をよく把握しておく必要がある。本連載では、70年代からあらゆるITツールの変遷をウォッチし続けてきた井上実氏が、これまでのデバイスの歴史、トレンドから「企業におけるスマートフォンの効果的な使い方」を分析する。

急速に浸透するスマートフォン

 スマートフォンの普及が急速に進み、2012年には携帯電話の半数を占めるようになると推測されている(図1参照)。これに伴い、スマートフォンやタブレット・コンピュータの活用を本格的に検討する企業が増加している。

ALT 図1 「スマートフォン出荷台数・比率の推移・予測」(MM総研調べ)。コンシューマ市場への急速な浸透を受けて、企業導入も加速している

 しかし、検討を進めようとすると、「アイデア不足」「横並び症候群」「パートナー欠乏症」に悩まされるという(福田崇男著/「スマートフォンを導入したい企業が患う3つの病」/IT Pro「記者の目」/日経コンピュータ/2010年12月10日)。

 一方、スマートフォンの現在の状況をよく見ると、80年代のPCと非常によく似通った部分がある。そこで、現在のスマートフォンと80年代のPCの類似点と相違点を明らかにした上で、最適なスマートフォン活用方法を類推してみることにする。今回は類似点と相違点を明らかにしよう。

スマートフォンと80年代PCは似ている

 まずは現在のスマートフォンと、80年代のPCとの「類似点」から整理してみる。

プロプライエタリOSとオープンOSの戦い

 80年代のPCは、ハードウェアメーカー独自のプロプライエタリOSとハードウェアメーカーに依存しないオープンOSであるMS-DOSが競合する時代だった。例えば、富士通9450、NEC N5200、日立2020などが各メーカー独自のプロプライエタリOSで稼働するPCである。

 プロプライエタリOSの特徴は、疑似マルチタスク機能などの独自機能を組み込むだけではなく、メーカー保証による安定性、メーカー・コントロール力の強さにあった。

 一方、オープンOSであるMS-DOSは、メーカーでOS開発・維持を行う必要がなく、コスト的に有利であったため、マイクロコンピュータの大量消費・大量販売を目的としたメーカーの電子デバイス部門が、個人消費者をターゲットとしたPCを開発する際に多く採用した。

 しかし、MS-DOSは安定性に欠ける部分があり、バグ修正を含むバージョンアップが頻繁に行われ、市場には複数のバージョンが並存した。また、MS-DOSの不足機能を補うための機能強化や移植方法の相違から機種依存性が高く、例え同じバージョンのMS-DOSが稼働するPCであっても、メーカーや機種が異なると、同じアプリケーションが稼働する保証はなかった。機種依存性が解消されたのは、Windowsがリリースされてからである。

 現在のスマートフォンのOSは、80年代PCと同様に、アップルのプロプライエタリOSであるiOSと、グーグルのオープンOSであるAndroidで市場を二分している。2010年度通期のOS別出荷台数シェアは、Androidが57.4%、iOSが37.8%となっている(MM総研調べ)。

 iOSの特徴は「アップル社のハードウェアと一体となった安定性の高さ」と、「アップル社が認可しないとアプリを実質販売できないというメーカー・コントロールの強さ」にある。

 一方、グーグルのAndroidは無償で利用可能なため、多くのメーカーが採用し、さまざまな機種が販売されている。しかし、80年代MS-DOSと同様に、OSの安定性という面ではiOSの後塵を拝しており、バージョンアップ頻度もiOSに比較すると頻繁である。そのため、市場には複数のバージョンが併存している状況にある。また、同じバージョンであっても、完全に稼働するという保証はなく、機種依存性が存在している。

限られたコンピュータ資源

ALT 図2 スマートフォンとPCのコンピュータ資源比較(スマートフォン、PCともに機種により相違があるため、ここでは典型的な機種を比較)。

 80年代のPCは16ビットCPUが搭載されていたとは言え、現在のPCとは比較にならないほど処理能力が低く、メモリも256〜512Kbytes、ファイル容量もフロッピーディスクドライブ2台(1Mbyte前後/フロッピーディスク)または10Mbytesのハードディスク1台という非常に限られたコンピュータ資源しかなかった。現在のスマートフォンも現在のPCに比較すると、非常に限られたコンピュータ資源しかない(図2参照)。

パッケージソフト流通

 80年代のPCは、NEC PC98を中心にパッケージソフトが流通した時代だった。8bit時代に開発されたソフトの上位互換性を保証したことと、パッケージソフト開発会社への支援策が功を奏し、多くのパッケージソフトが流通した。ちなみに、ソフトバンクはこの時代にパッケージソフトの卸売会社として起業している。

 現在のスマートフォンもアプリという名前で多くのパッケージソフトが流通しており、iOS向けが35万種類、Android向けが25万種類、販売されている。

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