computer aided software engineering / ケース / コンピュータ支援ソフトウェア工学
ソフトウェアの設計・開発・保守といった各プロセスの作業をコンピュータで支援すること、またはそれを実現する技術やツールをいう。ソフトウェア開発を自動化するものとして、1980年代から1990年代半ばに掛けてブームとなった。
CASEツールとは、ソフトウェアライフサイクル・プロセス(分析・設計・開発・保守)を支援するツールの総称である。一般にCASEツールは対応するプロセスに応じて、上流CASEツール(分析・設計など)、下流CASEツール(開発・テストなど)、保守CASEツール(リエンジニアリングなど)に大別される。また、特定のプロセスのみを扱うものをコンポーネントCASEツール、全プロセスを統合したものを統合CASEツールという。
ソフトウェア開発者を支援するシステムに関する研究は1960年代の後半には行われていたようだが、CASEの語が最初に使われたのは1982年とされる。これはソフトウェア工学者のアルバート・ケース(Albert F. Case, Jr.)が設立した米国ナステックコーポレーションが自社製品を説明する言葉だった。また、この語が広く知られるようになったのは、『ウォールストリートジャーナル』が1986年9月24日付の記事で報じてからだという。
初期のCASEツールは特定のプロセスを対象とした単独型のツールだったが、さまざまなプロセスに対応したツールがそろうと、これらをソフトウェアライフサイクルの下に統合して、ソフトウェア開発の自動化が志向されるようになった。その理想形はダイアグラムを描けば、プログラムが自動的に生成されるというものである。
CASE適用を首尾一貫したものとするには方法論が不可欠である。1980年代には構造化技法やデータ中心アプローチ、オブジェクト指向などの方法論を具現化するCASEツールが続々と市場に投入された。
1989年、米国IBMは各社のCASEツールを接続するためにリポジトリを中核に据えた「AD/Cycle」構想を発表した。このプロジェクトは、この時代に進展したダウンサイジングがソフトウェア開発のスタイルを変えるとともに、IBMに経営不振をもたらしたこともあって1994年に中止となる。これ以降、ウォーターフォール系の方法論に準拠するCASEツールに代わって、主としてパソコン環境での開発ツールとして進化してきたIDEが隆盛するようになる。ただし、CASEを名乗るツールは現在でも使われている。
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