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» 2011年10月31日 12時00分 公開

ガートナーと考える「明日のITイノベーターへ」(5):ITリーダーは、従業員のビジネス環境を真剣に考えよ (1/3)

スマートデバイスの導入、Windows XPのサポート切れなど、企業ITのクライアント環境は1つの節目を迎えている。特に東日本大震災以降は、事業継続性の担保という観点からデスクトップ仮想化も注目を集めた。今、企業のIT担当者には自社のクライアントコンピューティングの将来像を、しっかりと見極める力が求められている。

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

大きく変容しつつあるクライアントコンピューティング

 企業ITにおけるクライアントの位置付けが、大きく変わろうとしている。長きに渡り、企業ITにおけるクライアント端末の役割はWindows PCが担ってきたが、近年ではスマートフォンやタブレット端末といった、PC以外のデバイスをビジネスに積極的に活用しようという動きが活発化してきた。また、仮想化クラウドコンピューティングを使った新たなクライアント環境の在り方も現実味を帯びてきた。

 また、東日本大震災の影響も無視できない。震災発生以降、社員の自宅勤務体制を整備するために、既存のクライアント環境の見直しを始める企業も出てきている。その他にも、長くクライアントOSの主流を務めたWindows XPのサポート切れが目前に迫るなど、クライアントをめぐるトピックには事欠かない。

 そんな中、企業のIT担当者はどのような戦略をもって自社のクライアントコンピューティングの将来像を描いて行けばいいのだろうか。ガートナー ジャパンで主にクライアント分野の調査・分析を担当する、同社 リサーチ ITインフラストラクチャ クライアント・プラットフォーム シニアアナリストの針生恵理氏に、@IT編集長 三木泉が話を聞いた。

デスクトップ仮想化は“守り”ではなく“攻め”のソリューション

≪三木 近年、デスクトップ仮想化やクライアント・ハイパーバイザのような、デスクトップ環境をサーバ側に集約する技術が注目を集める中で、「デスクトップ」や「クライアント」という言葉がどうもしっくり来なくなってきているという印象があります。

針生恵理氏
ガートナー ジャパン リサーチ ITインフラストラクチャ クライアント・プラットフォーム シニアアナリスト

針生氏 そうですね。デスクトップやクライアントという言葉は本来、PCのような特定のデバイスを指すものではなくて、エンドユーザーのワークスペース、働く環境そのものを指す言葉です。つまりここでは、ユーザーが働きやすい環境を全体としていかに実現するかということがテーマになるわけです。従っておっしゃる通り、デスクトップやクライアントという言葉の語感がしっくり来ないというのもうなずけます。

三木 「働きやすい環境」というものも、なかなか一概には定義できませんね。つまり、企業が社員の生産性を上げるためにユーザーに提供する環境と、ユーザー自身が便利だと感じる環境とは、必ずしも一致するとは限りません。

針生氏 そういう意味ですと、これまではどちらかというと、企業から一方的に与えられた環境を使って社員が仕事をするというワークスタイルの方が一般的だったかと思います。別にそのこと自体が悪いわけではまったくないのですが、どうしても管理性やセキュリティといった企業側の都合を重視した環境になりがちです。

三木泉
アイティメディア @IT担当編集長

 一方では逆に、私物のPCやデバイスも含めて、ユーザーが使いたいものを自由に使わせるべきだという意見もあります。まあ、そこまで極端ではないにせよ、たとえ企業が社員に環境を提供する場合であっても、今後はユーザーの立場に立った使いやすさや働きやすさをより重視する必要があると思います。

三木 確かに、多くの日本企業ではいまだに、社内の端末からしか業務システムへのアクセスを許さなかったり、あるいは社内からのインターネットへのアクセスを厳しく制限していることが多いようです。確かにセキュリティの面ではこうした措置は有効ですが、その半面社員の生産性という観点ではマイナス要素になりかねません。

針生氏 昨今のデスクトップ仮想化を巡る話の中にも、そうした風潮が表れていると思います。デスクトップ仮想化はシンクライアントと同義にとらえられることが多いのですが、この両者は本来異なる目的を持つものです。

 シンクライアントはもともと、クライアントの管理性やセキュリティの強化を目的とした、どちらかというと企業にとっての“守り”のソリューションです。一方のデスクトップ仮想化の方は本来、ハードウェアやOSの制約から解放された柔軟なワークスタイルを実現するという“攻め”のソリューションです。

 多くの日本企業では、どうしても“守り”の方を重視しがちですが、“攻め”の発想も考慮していかないと仮想化の本来の効果は発揮できないと思います。

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