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» 2012年03月27日 12時00分 公開

ハイブリッド時代の「業務を止めない」運用管理レポート ハイブリッド環境運用セミナー(2/2 ページ)

[唐沢正和(取材/文), @IT情報マネジメント編集部(構成) ,@IT]
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クラウド混在を見据えた運用

株式会社野村総合研究所 システムマネジメント事業本部 主任 寺井忠仁氏 株式会社野村総合研究所
システムマネジメント事業本部
主任 寺井忠仁氏

 3番目のセッションでは、野村総合研究所(以下、NRI)システムマネジメント事業本部 主任の寺井忠仁氏が、既存環境とクラウドの混在環境における運用課題と、同社のシステム運用管理ソフトウェア「Senju Family」による具体的対策を紹介した。

 「オンプレミス環境とプライベートクラウド環境、さらにはベンダサイト側のパブリッククラウド環境が混在するハイブリッドクラウド環境では、IT部門に求められる運用課題も大きく変わってくる。IT基盤の管理を行うのはクラウドベンダの役割となり、これからのIT部門は、ITサービスを運用管理していくことが重要な役割になる」と、寺井氏はクラウド混在環境の運用に当たり、「IT部門は新たな課題に直面する」と指摘する。

 また、NRIが約10年間取り組んできた自動化/省力化の実績を踏まえ、クラウド混在環境を見据えた運用へのアプローチとして、「見える化」(混在環境の一元管理)、「標準化」(運用プロセスの標準化)、「自動化」(オペレーションの効率化、無人化)の3つを紹介。寺井氏は「この3つのアプローチは、順序が変わってもうまくいかない。最も優先順位の高い『見える化』から『標準化』、『自動化』へと段階的に進めていくことで、より効率的なクラウド運用を実現できる」と解説した。

 NRIの「Senju Family」は、以上のような“クラウド混在環境の運用に向けた3つのアプローチ”を支援する機能を提供するという。

 まず「見える化」では物理環境と仮想環境を一元管理する「バーチャルノードモニタ」、エージェントレスによる監視とジョブ管理、キャパシティ計画、ITリレーション管理、SLAモニタリングチャートといった機能を提供。

 「標準化」については、ポータルを活用した業務ワークフローの標準化、サービス要求マルチ画面、運用手順を標準化するチェックリスト機能、スマートフォンによる承認フローなどによって、運用プロセスの標準化を支援するという。

 最後の「自動化」では、「Run Book Automationによるオペレーションの自動化や、AWS Elastic MapReduceと連携したハイブリッド環境の運用自動化を可能にする。さらに、申請/承認から実行までを自動化するセルフポータルの提供により、迅速なサービス提供を実現する」として、具体的な機能を通じて、効率的なクラウド運用に向けたステップを解説してみせた。

結局は、どう自動化し、どう管理するかである

日本マイクロソフト エバンジェリスト 高添修氏 日本マイクロソフト
バンジェリスト 高添修氏

 3番目のセッションでは、日本マイクロソフト エバンジェリストの高添修氏が、仮想化・クラウド環境を1つのサービス基盤で統合管理していく仕組みについて、同社の運用管理製品の次期バージョン「System Center 2012」を用いて解説した。

 まず同氏は、「社内に仮想化を導入したものの、運用コストを削減できないケースが少なくない」ことを指摘。これを受けて、物理/仮想環境を集約するハイブリッドクラウドの活用によって運用コストを下げようとするのは自然な流れと言えるが、「ここで忘れがちなのが運用管理を効率化する意識」なのだという。

 「ハイブリッドクラウド環境では、システムの数だけ管理ツールが増え、IT管理者の負荷は増大する。また、運用を標準化するためにCMDB(構成管理データベース)を導入しても、管理ツールが減るわけではないため、現場の負荷は軽減されない」と、ハイブリッドクラウド環境における運用効率化の難しさを訴えた。

 その点を見据え、「System Center 2012」では、3つのアプローチでハイブリッドクラウド環境の運用効率化を実現するという。

 まず、仮想化管理ツールにPaaS機能を搭載。「仮想マシンだけではなく、ミドルウェアやネットワークの設定まで含めてテンプレート化し、サービスとして社内に展開できるようにする。これにより、1つ上のレイヤーから仮想化管理の自動化が可能になる」という。

 2つ目は、運用プロセスを自動化するRunbook Automationだ。仮想環境では管理ツールが増加することは避けられない。だが、Runbook Automationを活用すれば、複数の管理ツールを使う各種処理を集約し、一連のプロセスとして自動化することができる。

 そして、最後がCMDBとRunbook Automationの連携だ。高添氏は、「クラウド環境では、運用管理の自動化だけではなく、自動化された処理を管理することも重要になる。そこで、CMDBとRunbook Automationを連携し、『サービスカタログ』と『申請管理』の機能を追加した。これにより、CMDBを中心にした運用管理の統合化と自動化を実現する」と説明した。

【関連リンク:講演動画】
『結局はどう自動化し、どう管理するかである』(TechTargetジャパン)

プライベートクラウド基盤の構築・運用と経営から見たITの価値

 特別講演には、富士フイルムコンピューターシステム システム事業部 ITインフラ部 部長の柴田英樹氏が登壇。富士フイルムがプライベートクラウド基盤を構築するに至った背景と、「投資対効果に優れたITサービスを提供するためのクラウド運用管理」の取り組みについて紹介した。

富士フイルムコンピューターシステム システム事業部 ITインフラ部 部長 柴田英樹氏 富士フイルムコンピューターシステム
システム事業部 ITインフラ部
部長 柴田英樹氏

 富士フイルムでは、2007年末から基幹業務システムのサーバ統合と仮想化に着手。2008年半ばから、本格的に物理環境から仮想環境へのサーバ移行を進め、約2年半後の2010年末には予定通り基幹業務システムの仮想化統合を実現した。そして2011年に入ると、いよいよ、この仮想化基盤をプライベートクラウド基盤へと拡張していくことになる。

 「仮想化によって、ある程度の効率化や俊敏性は得られたが、経営者やユーザーにさらに早く、安く、満足のいくサービスを提供するためには、統合された共通インフラへの進化が必要だと考えた。そこで、仮想化をステップに、プライベートクラウド基盤を整備するべく、徹底した標準化と自動化を行った。また、必要に応じて段階的にプライベートクラウドに移行・活用できる準備も進めた」と、柴田氏は当時を振り返る。

 プライベートクラウド基盤の整備に伴い、同社では運用管理スキームについても強化を図っている。強化ポイントは、(1)メニュー化(2)自動化(3)セルフサービスの3つ。「特にメニュー化については、CPUやメモリ、ディスク容量、導入可能OS、基本設定などを、8つの基本メニューとして提供している。これらを選択式にすることで、ユーザーが直接入力する手間を省くとともに、運用管理側の確認・調整の時間・手間を極力排除した」。

 さらに、プライベートクラウド基盤では、障害発生時の問題特定および復旧の迅速化も大きな課題となることから、構成管理の強化にも力を注いでいる。「具体的には、アプリケーションとインフラの依存関係や、OSとCPUコアの関係、仮想サーバとひも付けられるスイッチやストレージの関係などを可視化した。また、業務への影響を考慮した復旧の優先順位も構成管理の要素として埋め込んだ」という。

 最後に柴田氏は、「プライベートクラウド基盤の運用管理を通じて、IT部門は、社内におけるビジネス価値をさらに高めていく必要がある」との考えを示した。

 「これからのIT部門は、従来のヒト/モノ/カネの管理ではなく、サービスを提供するという視点を持ち、プロセス/プロダクト/ピープル/ポリシーという4つのPを重視する姿勢が重要だ。これを通じて、ITによる革新的価値を提供し続けながら、ユーザー部門に対しては新規ビジネス価値創造を支援するパートナーになる??これこそが、クラウド時代のIT部門が目指すべき姿だ」と提言した。

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