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» 2012年04月04日 12時00分 公開

業務効率化ツール最新トレンド(2):Chatterで考えさせられる“情報共有の真の目的” (2/3)

[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

物理的制約を超えて、社内の知見をタイムリーに共有できる

 「社内SNSを取り入れようという企業はまだ少ないと思う。弊社もその例に漏れず、SNSに積極的な企業文化とは言えなかった。しかし必要な情報をタイムリーに共有できる点で、Chatterには登場時から注目していた」

 こう語るのはサイバネットシステムの三宅氏だ。同社は、メーカーが新製品を研究・開発する際に使う試作品テストのシミュレーションソフトを開発・提供しているITベンダだ。顧客はメーカーだが、ひと口にメーカーといっても製品分野はさまざまであり、各分野に即したきめ細かな営業活動が不可欠となる。そこで、Chatterのリリース直後から計50ライセンスを試験的に導入。東京本社、西日本支社、中部支社の3拠点における営業スタッフとマーケティング部門の情報共有に役立てているという。

 「以前まで、情報共有ツールとしては掲示板を使ってきた。ただソフトウェア開発を行っている技術部にはきちんと使われていたが、営業スタッフにとっては使い勝手が悪かったためか、『技術情報をもっと手軽に共有したい』という要望を受けていた。一方、営業部の上長からは、各スタッフが自身の活動を記録する週報について、『もっと効率よく閲覧・コメントできる環境を作れないか』というリクエストを受けていた。私自身、マーケティング部の一員として、営業スタッフが日々接している顧客の声をもっとタイムリーに共有したいと考えていた」

 そこで同氏からマーケティング部門の上長に働き掛け、Chatterの部分導入を推進。掲示板は情報蓄積用、Chatterは情報共有用と位置付け、東京本社、西日本支社、中部支社の3拠点で導入した。その結果、拠点間の営業スタッフ、営業部とマーケティング部の間で、「あたかも同じ場所で働いているかのように情報を共有できるようになった」という。

 「弊社の場合、各営業スタッフが週報を書くと、自動的にChatterに公開されるようカスタマイズしている。これによって、全スタッフが全員の活動をほぼリアルタイムに把握できるようになった。また掲示板の場合、新しい情報は古い情報の下に追加されていくが、Chatterでは新しい情報がタイムラインの最上部に表示されるため、情報の見落としもなくなった」

ALT サイバネットシステム
メカニカル CAE事業部マーケティング部の三宅毅氏

 また、三宅氏は週報全てに目を通し、競合情報だけを抜粋してChatter上でシェアしているが、こうした環境を整備することで、「マーケティング部としても顧客がまさに今考えていることが分かるようになった」という。

 「特に便利と感じたのは、営業スタッフにいつでも気軽に質問できるようになったこと。例えば、施策のアイデアを考えている際などに、ちょっと質問したくなることがあるが、わざわざメールを送るほどでもない。そんなときにChatterで質問すると、その質問が3拠点の全営業スタッフに投げ掛けられ、すぐに誰かから返事が返ってくる。以前なら得られなかった知見をタイムリーに共有できる点は大きなメリットだと思う」

リアルタイムの情報共有で、ビジネスが加速する

 三宅氏の話を受けて、「情報だけではなく、価値観のすり合わせにも有効だ」と語るのは、AZホールディングス 執行役員の稲垣氏だ。同氏は同ホールディングスの事業会社で、Webデザインの制作/サイト構築/コンサルティングサービスを請け負うコンセントのPR/マーケティング担当者を兼任している。

 同社では2011年6月、Chatterを120ライセンス導入し、全社員に配布。同社は2011年4月に雑誌、書籍などの編集・デザインの受託制作を行うアレフ・ゼロと合併していたが、「日常的に両社のナレッジを交換、共有できるようになり、スタッフの共通言語を作る上で有効と感じている」という。

ALT AZホールディングス 執行役員の稲垣智彦氏

 また、稲垣氏は電子メールを使った意見交換や情報共有が、非効率的かつセキュリティリスクも高いことを指摘する。

 「メールを使って相談していると、1つのテーマに対するメッセージ履歴や引用文が長々とつながってしまう。その結果、全内容と意見交換の経緯を正確に把握するのに手間が掛かる上、議論もそれてしまいがちだ。送信ミスによって社外秘の情報が漏れてしまうリスクもある。その点、社内限定で使うChatterなら情報が漏れてしまうことを確実に防げる。特定のテーマについて相談する際も『あの件どうなってる?』ですぐに議論を始められるし、関連資料もすぐに添付・共有できる」

 さらに同氏は、「Chatterの活用によって会議の在り方が根本的に変わる」とコメントする。社内SNSツールとしてはYammerなどもあるが、Chatterの場合、前述のように、人だけではなくオブジェクトをフォローできるためだ。同氏は「この“オブジェクトをフォローし、オブシェクトが変化し次第、そのオブジェクトがフィードされるという仕組み”が、情報共有の相乗効果を大幅に高める」と話す。

 例えば、ある営業スタッフが「A商材が100万円分、売れる見込み」と書き込んだとする。その後、商談が進み「200万円で売れる見込みが立った」と書き込む。その進捗のフィードを見て、営業部門の上長は「なぜ200万円の見込みが立ったのか?」と理由を聞く。マーケティング部門のスタッフは「どのマーケティング施策が効いたのか?」と尋ねる。経理部門のスタッフは「その売り上げは今期分か来期分か確定してほしい」と書き込む――といった具合に、「1つのオブジェクトに対して、各部門の人間がそれぞれの立場から、ほぼリアルタイムに質問・コメントできることで、ビジネスがおのずと加速するほか、従来なら取りこぼしてきた暗黙知も共有できる」というわけだ。

 「やはりオブジェクトベースでコミュニケーションが図れる点が最大の特徴だろう。フォローするオブジェクトも、例えば『100万円以上の商談案件のみ』『プロダクトAのみ』といった具合にきめ細かく設定できる。これによって各人が必要な情報を集め、その情報にすぐさまコメントしたり、アクションを起こしたりすることで、会議にかける時間はおのずと削減される」

 実際、先の三宅氏の会社でも、「対面でのミーティング時間は確実に減っている」という。「先日も製品展示会の企画を練る際、営業部門、技術部門とChatter上で意見交換し、私が両者の考えをすり合わせた上で企画書をまとめ、さらにChatter上で企画書を共有して承諾を得た」そうだ。稲垣氏の会社でも、週1回あった営業案件共有会議をChatter上の会議に変更。「導入ROIを正確に測定することは難しいが、商談の進捗は確実に早くなっているし、あらゆる社内の知見を活用したことで、確度の低かった商談案件をクロージングできた例もある」という。

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