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» 2012年04月04日 12時00分 公開

業務効率化ツール最新トレンド(2):Chatterで考えさせられる“情報共有の真の目的” (3/3)

[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
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ユーザーの抵抗を払拭し、どう浸透させるかがカギ

 とはいえ、Chatterもメリットばかりというわけではない。まず、新しいITツールを組織に浸透させるのは難しいのが常だ。Chatterも例外ではなく、ある程度の習熟や活用ノウハウが不可欠となる。そこで1200人、600社が所属しているユーザー会でも、各社の事例を基に、どの段階で活用につまずいているのか、どうすれば有効活用できるのか、段階的な浸透に向けた道標となるチェックシートを作成中だという。

 稲垣氏はこの点について、「実は弊社も現在、浸透に向けて格闘している段階。メール文化が根付いている企業ほど、最初はユーザーの抵抗が強いかもしれない」とコメントする。また、30〜40歳代にはTwitterやFacebookに慣れている人も多いが、それ以外の年代には受け入れられにくい可能性もある。対面での会議を良しとする企業文化も根強い。両氏は自身の導入経験を振り返って、「導入・浸透には推進役が不可欠だ」と口をそろえる。

 「理想的なのはやはりトップダウン。全社的に導入をアナウンスし、経営層が積極的にChatterを使えば確実に浸透するはずだ。実際、ユーザー会で発表される他社の導入事例を聞いていても、活用に成功しているところは経営トップを含めて、導入・活用のコンセンサスがしっかり取れている。特に全社的な導入になるとIT部門だけでは難しい」(稲垣氏)

ALT 「自社における情報共有の目的を、もう一度見直すことが肝要」(稲垣氏)「一定数以上の社員がおり、組織体制が複雑な企業ほどメリットを享受できる」(三宅氏)

 一方、三宅氏は教育の重要性を指摘する。Chatterの使用方法はもちろん、「どのように使えば効果的なのか」、考えられる目的に応じた使い方をマニュアルにまとめ、全ユーザーに指導する必要があるという。

 「実際、このユーザー会でも2011年4月からChatterを使っているが、当初はどのように使えば効果的なのかまったく分からなかった。しかし各社で活用シーンを共有し合ったことでノウハウがたまり、現在ではユーザー企業間の意見交換や議論の活性化に役立っている。以前も『有償ライセンスユーザーのみが使える機能を、一部無償ライセンスユーザーと共有できないか』と考え、ユーザーグループのChatterでつぶやいたところ、同様のカスタマイズ経験のあるユーザーから反応があり、その方法を教えてもらった。Chatterの活用が、企業の壁を超えたコミュニケーション、コラボレーションにもつながっている」

機能ありきではなく、情報共有の目的を見直すことが肝要

 ただ、このChatterの使いこなし方については、単に他社の活用ノウハウを取り入れれば成功するというものでもないようだ。稲垣氏は、「SFAは単なる情報共有が目的ではなく、営業スタッフに活力を与え、売り上げを向上させることが目的。ツールを使いこなすためには、自社における情報共有の目的を、もう一度見直すことが肝要だ」と提言する。

 「Chatterでは、トピックが提供され、更新され、それについて話し合える環境が作れる。しかし、より有効に情報を共有することを考えれば、営業スタッフの日報や週報にしても、必ずしも全情報を入力・共有すれば良いというものではないはずだ。例えば、自分が入力した情報に対する同僚や上司のコメントを見て、『どんな情報が必要とされているのか』に注目しながら使ってみる。そうすると各部門や上司の視点が分かるようになり、おのずと情報共有のサイクルが有効な形で回るようになるはずだ」

 また、部門を超えてノウハウを共有したり、商談の進捗や経緯を全社員が把握することによって、例えば『こういうノウハウを持ち、こういう話の進め方ができる人ほど売り上げが伸びる』といった営業スタッフの知見を、経理部門やデザイン部門のスタッフでも持てるようになる。「弊社もそこまでは進んでいないが、そのレベルに達すれば、企業の基礎体力が大幅に向上するのではないだろうか」(稲垣氏)。

 三宅氏も「Chatterの使い方を考えることによって、日報、週報の在り方が変わる」と指摘する。

 「日報、週報は単に活動を報告すれば良いというものではない。それを基に業務効率化や収益向上につなげることが目的のはず。その点、Chatterを上手に使えば、日報や週報を本来的な目的で活用することができる。特に市場動向を高精度で予測し、次のアクションに向けてより正確な意思決定を行う上で、Chatterのような情報共有方法は効果を発揮しやすいはず。対面での会議に意義を見出している会社にはマッチしないが、一定数以上の社員がおり、組織体制が複雑な企業ほどメリットを享受できると思う」

 以上のような指摘を受けて、両氏のコメントを振り返ってみると、一見、Chatterの機能について語っているように見えて、その実、一貫して情報共有の在り方そのものを考えていることが分かる。冒頭のアンケートにしても、「情報共有環境の課題」はツールの機能不足ではなく、情報共有の体制整備自体に問題があることが見て取れる。Chatterに限らず、ITツール全てに言えることだが、やはり有効に活用するためには、機能を基に「何ができるのか」と考えるのではなく、目的を起点に「何がしたいのか」と考える姿勢が重要ということなのだろう。

 情報共有ツールは特に製品数が多いカテゴリだ。各ベンダがそれぞれの考え方を基に、アプローチの異なる製品を提供している。Chatterもその中の1つであるわけだが、両氏のように「自社における情報共有・活用の目的と在り方」を根本から見直してみると、自社に最適なツールばかりではなく、自社の意外な弱点や収益向上のヒントなど、有益な発見が数多くもたらされるのではないだろうか。

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