SAS Institute Japan(以下、SAS)は5月22日、ビッグデータを可視化する超高速インメモリソリューション「SAS Visual Analytics」を発表した。新開発の超高速分析エンジン「SAS LASR Analytic Server(レーザー・アナリティック・サーバ)」を利用して大量・多種のデータを超高速で分析し、目的に応じて表組み、棒グラフ、バブル、ヒストグラムなど、多彩なビジュアルで表現できる。さまざまなデータ項目のドリルダウン、相関分析なども自在に行え、意思決定のスピード、精度をともに高めるという。7月に提供開始する。
SAS Visual Analyticsは、同社の主力製品群である「SAS High-Performance Analytics」製品群の最新製品。新開発の超高速分析エンジン、SAS LASR Analytic Serverに対応した第一弾の製品となる。ヒューレット・パッカードやデルといった低コストの業界標準ブレードサーバを複数台使用し、Hadoopを使って各サーバのメモリ上にデータを均等に分散、並列分散処理を行うことで超高速でのデータ分析を実現する。必要に応じてブレードサーバを追加するスケールアウト型のアーキテクチャの採用により、分析するデータ量の増大にも効率的に対応可能とした。「これにより、これまで数時間から数日かかっていた分析や、ハードウェアの制約で実現できなかった分析を、数分、数秒以内で実行できる」(SAS ビジネス開発本部 Information Management&Analyticsグループ 担当部長 畝見真氏)。
特徴は大きく分けて3つ。1つは、従来のようにデータを一部抽出したりサンプリングしたりすることなく、また特別なスキーマを事前に設定することなく、利用可能な全データを対象に探索的分析を行えること。また、IT部門に多次元データベースの再構築を依頼することなく、各データ項目について、ユーザー自身で自由に階層を指定し、ドリルダウンすることもできる。
2つ目は、表、バブル、ヒストグラム、棒グラフ、地図など、分析したデータを多彩なビジュアルで表現できること。ユーザーはビジネスに寄与する知見を直感的に得られるほか、各データ項目、分析結果をドラッグ&ドロップで重ね合わせるだけで、相関分析も容易に行える。3つ目はiPadなどのモバイルデバイスでもこれらの機能を活用できることだ。
製品は、各機能に各ユーザーの権限に応じてアクセスするための入り口となる「ハブ」、データロードやサーバモニタリングなどを行う「データ準備」、アドホックなデータ探索を行うための「エクスプローラー」、Web/モバイル用のレポート、ダッシュボードを作るための「デザイナー」、デザイナーで作成したレポートやダッシュボードをモバイルで閲覧するための専用iOSアプリ「モバイルBI」の5つのコンポーネントで構成する。これらを超高速分析エンジン、SAS LASR Analytic Server上で稼働させる。価格は最小構成(ブレードサーバ8枚)で約2000万円から。
同社代表取締役社長 吉田仁志氏は、「世界は社会、経済、政治などあらゆる面でつながっており、その動きも加速している。こうした中、企業はさまざまなリスクに備えなければならないほか、成長戦略を堅持するために、改善ではなくイノベーションを起こすことが求められる。そのためには大量・多種の“データが知っている事実”を、リアルタイムに“ビジネスに役立つ知見”につなげていく必要がある。弊社のソリューションも、単に“処理が速い”ことではなく、それによって迅速に有効な知見を得て、世界の動きが速い中でも“適切な対応策を立案する時間が取れる”ことに真のポイントがある」と解説。
今後も、「SAS High-Performance Analytics」製品群――複数のノードで並列分散処理を行う「SAS Grid Computing」、DWH側でモデリングやスコアリングなどを行い、その結果を分析エンジン側に渡すことで、I/Oの問題を回避しながら、分析の高度化・高速化を両立する「In-Database Analytics」、インメモリ上で処理を実行した上で、結果だけを分析エンジンに取り込んで分析を高度化・高速化する「In-Memory Analytics」――を拡充していき、データの探索からモデル構築、スコアリングまで、各社のニーズに最適な形で「分析ライフサイクル全体の高速化を支援する」と述べた。
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