改革を「スローガン」で終わらせない方法失敗しない戦略実現術、プログラムマネジメント(3)(3/3 ページ)

» 2012年05月31日 12時00分 公開
[清水幸弥, 遠山文規, 林宏典,PMI日本支部 ポートフォリオ/プログラム研究会]
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プロジェクトは、プログラムの中で実行される

 またプログラムのアーキテクチャーとは、プロジェクトのスコープと同様、プログラムのスコープを規定するためのものである。

 つまり、プログラムにおいても、プログラム・アーキテクチャーが明確になっていれば、それに則りながら、それぞれ適切なタイミングで必要なプロジェクトを立ち上げ、合理的にベネフィットの達成へ向かっていくことができる。以下の図4は、A社のプログラムの主要コンポーネントとそのスケジュールの概要である。

図4 プログラム全体スケジュール(クリックで拡大)

 さて、ここまで読んでいただいた読者の方々の中には、「結局、プロジェクトとプログラムで何が違うのだろう?」と思った方もいるかもしれない。プログラムは大きなプロジェクトのようでもあり、プロジェクトごとに成果物を創造するというのも、プロジェクトとサブプロジェクトの関係とあまり違いがないようにも思える。

 この点について、統一された見解があるわけではないが、個人的には、ポイントは「成果物」で見るのか、「ベネフィット」で見るのかの違いであると考えている。「成果物」はそれが完成することがゴールとなるが、「ベネフィット」とは物事の望ましい「状態」のことだ。

 ゆえに、プログラムにおいては、プログラム期間中に全体のアーキテクチャーは大きく変わらないまでも、プログラムのコンポーネント、つまりプロジェクトやその他の活動は、「状態」次第で見直され、再定義される

(ただし、期間が3年程度のプログラムの場合は、細かいプロジェクトレベルのオーソライズがなされるのは、最初の1年分程度であり、2年目以降は事業体の年度単位で洗い出しされ、オーソライズされていくのが一般的だ)のである。


 次回は、プログラムに必要な投資獲得について、「財務マネジメント」に焦点を当てて説明する。PGM標準(第2版)をお持ちの方のために、今回の内容に関連する項目を紹介しておく。

  • 5.2 プログラム目標と目的の定義
  • 5.3 プログラム要求事項定義
  • 5.4 プログラム・アーキテクチャー作成
  • 6.1 プログラム・スケジュール作成

参考リンク

PMI Japan Forum 2012(PMI日本支部)

▼注:ここに示した内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属企業・団体およびPMI日本支部の見解を代表するものではない。また、ストーリーに登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものである。


今回のポイント

  • ベネフィットとの整合性:プログラム・アーキテクチャーーはベネフィットを達成するために必要な構成要素を定義する。
  • アーキテクチャーーは枠組み:プログラムの初期段階で全てのコンポーネントを定義することは不可能である。プログラム・アーキテクチャーーは将来プログラム内で実行されるコンポーネントの枠組みを与える。
  • 定常業務の位置づけ:プログラム内で実行されるコンポーネントはプロジェクトだけとは限らない。ベネフィット達成に必要な定常業務も含まれる。

著者紹介

PMI日本支部ポートフォリオ/プログラム研究会

清水 幸弥(しみず ゆきや)

日本ヒューレット・パッカード株式会社にてITコンサルタント、エンタープライズアーキテクチャーやITガバナンス等のコンサルティング活動に従事。PMP、The Open Group Master Certified IT Architect

遠山 文規(とおやま ふみのり)

製造業・ベンチャー企業での研究開発、外資系ITコンサルティング会社でのコンサルティング・製品サポートでの経験を元に、開発現場の実務からIT導入までを得意分野とする。PMP

林 宏典(はやし ひろのり)

ジョージワシントン大PM修士コース終了。コンサルタントとしてPM、BPR、情報化計画等を専門とする。現在はデル株式会社で営業企画を担当中。PMP、PMS


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