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経費精算ルールを作る上で迷わないためのポイントを解説

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経費精算ルールは企業の財務健全性を支える重要な基盤です。しかし、多くの企業では「申請内容のバラつき」「不正やミスの発生」「申請の遅延」といった課題に直面しています。本記事では、効果的な経費精算ルールの作り方から、交通費・出張費・交際費などの科目別のポイント、さらに2024年4月以降の税制改正に対応した最新事情まで、実務に役立つ知識を詳しく解説します。

 

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経費精算ルールとは?

経費精算ルールは、従業員が業務で立て替えた費用を、どの手順で申請し、どの基準で払い戻すかを定める社内規定のことです。経費として認める範囲や上限、申請方法、承認の流れまでを規定として文章で明確にします。

大規模な企業に対して中小企業ではこの観点が曖昧になっているシーンが多いとされ、「申請内容のばらつき」「不正やミス」「申請遅延」が起きやすく、経理の負担や財務の健全性にも影響していきます。まずは全体像を設計し、全社で共有するところから始めていきましょう。

経費精算ルールの役割を再確認

適切な経費精算ルールは、以下のような役割を果たします。

  • 経費申請の流れや承認フローを明確にできる
  • 無駄な経費や不正利用を抑制できる
  • 判断のバラつきを防止できる

経費申請の流れや承認フローを明確にできる

申請から承認、精算に至るプロセスが標準化されていると、従業員は「何を」「いつまでに」「どのように」申請すべきかを理解できます。承認者も同様に判断基準が明確になります。これにより手戻りが減少し、スムーズで正しい経費精算が実現します。

無駄な経費や不正利用を抑制できる

経費の範囲や上限額を明確にすることで不必要な支出を抑えられます。領収書提出義務や承認プロセスの徹底は、架空請求や私的利用などの不正防止に効果的です。会社の財務資源を守る防衛線として機能するでしょう。

判断のバラつきを防止できる

明確なルールがないと、「A部署では認められたのにウチのB部署では却下された。なぜだ」といった不公平や懸念が生じます。統一された基準を設けることで、属人性を排除し、公平な運用が可能になります。

具体的な改善手順は「経費精算を効率化するには? 業務改革のために知っておきたい実践ポイント」をご確認ください。

 

おすすめ経費精算を効率化する方法|業務改革のために知っておきたい実践ポイント

経費精算ルールを作る理由

経費精算ルールを適切に設ける理由は以下の4点が挙げられます。

  • 経費の無駄やトラブルを防止するため
  • 経理担当の負担を軽減するため
  • 社員間の不公平感をなくすため
  • 税務調査・監査リスクに備えるため

経費の無駄やトラブルを防止するため

基準が曖昧では従業員は判断に迷います。その結果、不要な支出が増加してしまうかもしれません。また、申請却下時のトラブルや部署間の対立といった社内摩擦も生産性がなく無駄なことと思います。

経理担当の負担を軽減するため

ルールの曖昧さは書類不備や計算ミスを誘発します。確認や差し戻し作業が増えます。明確なルールを周知することで、申請の質が向上し、経理業務の効率化につながります。

社員間の不公平感をなくすため

統一された基準・ルールは、承認プロセスから主観的な(誤った/身勝手な)判断を排除することにもつながります、「なぜあの人の申請は通るのに自分のは通らないのか」という不満を解消できる、つまり組織内の信頼関係を維持・強化することにつながります。

税務調査・監査リスクに備えるため

適切に整備したルールによって、会社の経費管理が体系的に行われている証拠にもなります。税務上などのリスクを大幅に低減できます。

現場フローからの統制強化の方法に着いては、「発注フローの標準化と効率化で業務の属人化解消と内部統制を強化」もぜひ一緒にご覧ください。

 

関連記事業務の属人化解消と内部統制を強化する方法

経費精算ルールで押さえるべき項目

迷いを減らすには、先に“定義と線引き”をつくることが近道です。必須の柱を固めてから詳細に進みましょう。主な要素は以下の通りです。

  • 1. 経費と認める範囲・上限を明確にする
  • 2. 自己決裁の禁止
  • 3. 申請期限を決めておく
  • 4. 領収書がない場合の対応を決めておく
  • 5. 例外の取り扱いを決める
  • 6. フォーマットや申請方法を統一する

1. 経費と認める範囲・上限を明確にする

まず、業務に直接関係する費用を基本に、交通費・宿泊費・会議費・消耗品費などを具体的に列挙します。認めない費用も併せて明記します。

費目ごとに上限を設定すると過剰支出を抑えられます。例として「国内出張の宿泊は1泊1万5000円まで」「会食は1人1万円まで」などです。役職や地域で段階を設ける運用が現実的です。

自社独自の基準がある場合はそれも規定に入れます。例として「航空機は原則エコノミーで」「会社指定のAという予約サービス・サイトを利用する」などが挙げられます。

なお参考として、国税庁の資料「よくある税の質問:交際費等の範囲と損金不算入額の計算」などによると、交際費のうち“1人当たり10000円以下”の飲食費は交際費等から除外される扱い(要件として日時・相手先・人数・金額・店名等の記録保存が必要)と記載されています。(令和6年4月1日以後の支出に適用)

社員への出張旅費・宿泊費・日当は“その旅行に通常必要な範囲”について、一定の記載を満たせば帳簿のみの保存でも仕入税額控除が認められる取扱いです。

参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
参考:国税庁パンフ「令和6年度改正(交際費:少額飲食費の基準1万円へ)
参考:国税庁「出張旅費・宿泊費・日当の帳簿のみ保存による仕入税額控除

より具体的な請求書・適格請求書の運用については、「請求書のデジタル管理を実践したい|インボイス制度、電子帳簿保存法対応」も一緒にご覧ください。

 

おすすめ!請求書のデジタル管理を実践|インボイス制度、電子帳簿保存法に正しく対応する方法

2. 自己決裁の禁止

申請者と承認者が同一だと不正の温床になります。直属の上長など第三者の承認を必須とします。

経費精算システムを使う場合は、同一IDで承認できない設定にします。人の注意に頼らず、仕組みでブロックする姿勢が大切です。

参考までに、金融庁の内部統制基準は、統制活動として「権限・職責の明確化や職務の分掌(承認の分離)」を整備することを求めています。

また、IPAによる「内部不正防止ガイドライン」でも、承認プロセスの分離・監視など体制面・技術面の統制を推奨しています。

参考:金融庁「内部統制の評価・監査の基準(改訂の公表)
参考:IPA「組織における内部不正防止ガイドライン(2025年5月19日)」

3. 申請期限を決めておく

「発生日の翌月5日まで」「出張から帰着後1週間以内」のように、誰が見ても同じ解釈になる期限を入れます。計上漏れや古い領収書の持ち込みを防止するためです。

期限の周知も重要です。研修や社内通達で繰り返し知らせることで順守率が上がります。

注意点として、会社の申請期限と法律(民法)の請求権の時効は別であることです。従業員の立替金請求権は5年間有効です。運用上の期限は厳格にしつつ、目的が迅速で正確な処理にあると明記してください。常習的な遅延には人事面の対応も検討します。

参考までに、金融庁の資料「内部統制の評価・監査の基準」では、必要情報を“適時・適切に識別・処理・伝達”することを求めており、期限設定・周知の必要性を裏づけています。

なお、民法により一般債権は“権利を行使できることを知った時から5年・客観的起算で10年”へ整理されています。時効と社内期限とは別の概念です。

参考:金融庁「内部統制の評価・監査の基準(改訂)
参考:厚生労働省資料「消滅時効の在り方に関する参考資料(民法改正:一般債権5年・10年)

4. 領収書がない場合の対応を決めておく

領収書、レシートの添付を原則とし、日付・金額・支払先・内容を必須とします。併せて、紛失など本人の過失がある場合は自己負担になる可能性を明確にします。

領収書が出ない費用には代替手続を用意します。出金伝票に利用日・支払先・目的・金額を記入し、上長承認で代替できるようにします。

※インボイス制度では、原則“帳簿+適格請求書等の保存”が仕入税額控除の要件です。(領収書等の保存を徹底)
※ただし、従業員への出張旅費・宿泊費・日当など“通常必要な範囲”は、帳簿のみの保存で控除が認められます(帳簿の追加記載が必要)。

参考:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)
参考:国税庁 質疑応答事例「出張旅費・宿泊費・日当の帳簿のみ保存」/国税庁Q&A「帳簿のみで控除が認められる場合

5. 例外の取り扱いを決める

原則として例外は認めない方針にすることを推奨します。例外を安易に認める体制は主観要素が強く、尾を引くことで基準を崩す引き金になります。

やむを得ない場合は、部長や役員など上位者の承認を必須する体制にします。適用のハードルを上げることで、乱用を抑制できます。

参考までに、金融庁による内部統制基準は、統制活動の整備とモニタリング(日常的監視+独立的評価)を求め、例外運用の厳格管理を裏付けるよう記されています。IPAによるガイドラインでも、承認・記録・監視の仕組みによる不正抑止を推奨しています。

参考:金融庁「内部統制の評価・監査の基準(改訂)
参考:IPA「組織における内部不正防止ガイドライン

6. フォーマットや申請方法を統一する

全社統一のテンプレートを用意し、使用を義務化します。申請日・氏名・勘定科目・日付・内容・金額など必須項目を最初から入れておくと、記入漏れ防止につながります。

Excelシートや管理システム上の入力欄を揃えることで、申請者・承認者・経理の確認が早く確実になります。

なお、法人の帳簿・書類の保存期間は“申告期限の翌日から7年(一定の場合10年)”と国税庁が定めています。電子保存の実務については、国税庁による「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」も参照するとよいでしょう。

参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)

科目ごとに押さえておきたいルール

利用頻度が高く判断が割れやすい科目は、個別の基準を先に決めておくと、差し戻しが減ります。実務の迷いが消え、処理も速くなります。

交通費のルール

最安値ルートで申請することを原則にします。経路検索で確認できるため、無駄なコストを抑えられます。

通勤定期券区間との重複は精算対象外にしてください。定期区間を登録して自動控除できるシステムがあると、二重払いを防げます。

タクシーは利用条件を具体化します。深夜・早朝、重い荷物の運搬、最寄駅から遠い場合、接待での利用などを条件に含め、領収書の提出を必須とします。

自家用車や社用車の利用は、距離精算やガソリン代の計算方法を前もって決めておきます。公平性と管理のしやすさを両立させてください。

自家用車利用時の経費計算方法の比較

計算方法 計算式 メリット デメリット
距離単価方式 走行距離(km) × 会社規定の1kmあたり単価(円) 計算がシンプルで公平性が高い。経理の負担が少ない。 ガソリン価格や燃費との乖離が生じる可能性がある。
実費精算方式 (走行距離(km) ÷ 車両の燃費(km/L)) × ガソリン単価(円/L) 実際の費用に近い金額で精算できる。 燃費の把握や単価適用が煩雑。管理コストが高い。

交通費精算と法対応の同時実現は「中小企業のための交通費精算と電子帳簿保存法対応|経費精算システムの選び方と対応の進め方」をご覧ください。

出張費・旅費のルール

まず「出張」の定義を決めます。片道100km以上や宿泊の有無など、判断基準を明確にしてください。

宿泊費や日当の上限は、役職や地域で設定します。物価差に合わせ、実態に合う金額を用意します。

日当は食事や諸雑費の補填として定額で支給します。旅費規程に基づく日当は、受け取る側は非課税、会社側は損金算入できます。

日当・宿泊費の上限額サンプル

役職 国内出張(主要都市)日当 / 宿泊費上限 国内出張(その他地域)日当 / 宿泊費上限 海外出張(北米・欧州)日当 / 宿泊費上限
役員 4000円 / 1万8000円 3500円 / 1万4000円 7000円 / 2万5000円
部長職 3000円 / 1万5000円 2800円 / 1万2000円 5500円 / 2万円
一般社員 2500円 / 1万2000円 2000円 / 1万円 4500円 / 1万7000円

高額の立替を避けるため、仮払いのフローも規定してください。申請→承認→支払い→帰着後の差額精算までを明文化すると、現場が迷いません。

天災・病気・事故などのトラブル対応も事前に決めておくと安心です。追加宿泊や日当の扱い、連絡体制まで含めてください。

交際費・会議費のルール

交際費の上限を定めます。2024年4月1日の税制改正で、飲食費の基準は1人5000円から10000円に引き上げられました。1人10000円以下の飲食費は、全額損金算入できる「会議費」などで処理できます。社内ルールにも反映してください。

会食の申請では、参加者、目的、相手先、人数、店名と所在地の記録を必須にします。10000円基準を適用する際の必要情報として徹底します。

目的での区別も重要です。関係構築なら交際費、業務の打ち合わせなら会議費という本質で判断してください。

参考:経済産業省資料「令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について」(令和5年12月)

交際費と会議費の比較(2024年4月1日以降)

項目 交際費 会議費
目的 取引先との関係構築や接待、贈答 業務の会議、商談、打ち合わせ
1人あたり飲食費基準 1万円を超える飲食費 1万円以下は会議費として処理可能
税務上の扱い 原則損金不算入(中小企業は特例あり) 全額損金算入が可能
必要書類 領収書+参加者・目的などの記録 領収書+参加者・目的などの記録

経費精算ルールの運用ポイント

良いルールも、現場で回る仕組みがなければ意味が薄れます。周知、見直し、システム化の三本柱で形骸化を防いでください。

ルールの周知と見直し

新入社員研修に経費精算を入れ、目的から申請方法まで丁寧に伝えます。既存社員には説明会や社内報、イントラ掲載で再確認できる場を用意してください。

事業内容や物価、税法改正に合わせて定期点検を行います。年に一度など見直しの機会を設け、現場の声を反映すると実用性が上がります。

問い合わせや差し戻しが多い項目は、時期を待たずに修正します。原因を洗い出し、記述の補足や手順の簡素化を行ってください。

システム化・ペーパーレス化を活用

経費精算システムに上限や承認条件を設定すると、申請段階で逸脱を防げます。自己決裁のブロックや金額超過の警告で、ミスや不正の見逃しを減らせます。

領収書はスマートフォンの撮影で添付し、電子帳簿保存法に沿って運用します。紙の保管を省ける場合があり、承認もオンラインで完結します。

会計システムと連携すれば仕訳を自動化できます。再入力が不要になり、月次の早期化に貢献します。

経費精算の効率化については「経費精算を効率化するには?」をご覧ください

経費精算ルールを整えて業務をもっとスムーズに!

経費精算ルールを明確にして運用を定着させると、社内トラブルやミスを防げます。無駄なコストの削減や不正防止にも直結します。費目の範囲と上限、申請期限、科目別の詳細まで整えると、経理の負担が下がり、従業員も迷わず申請できます。

システムの活用で社内ルール順守の仕組みを自動化し、ペーパーレス化を進めてください。バックオフィス全体の生産性が上がります。まずは自社の実態に合わせ、必要な項目から整備を始めましょう。見直しを続ける姿勢が、効果を長持ちさせます。

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