
製造、物流、販売、eコマース業などを中心に「在庫」を正確かつ効率的に管理し、効率化するIT製品「在庫管理システム」を導入し、成果を上げる企業が増えています。その一方で「コストがかかるので……」「どう選べばよいのか分からない」などで、従来の方法に課題があるのは分かっていつつも脱却できない状況にある企業も多くあります。
本記事では、そんな企業に向け、まずは「無料」で始められる在庫管理とともに、クラウド型/SaaS型在庫管理システムの利点や選び方のポイントを詳しく紹介していきます。最初はコストをかけずに、在庫の管理と最適化を実現できる方法を検討してみてはいかがでしょうか。
目次
この記事のポイント
- 無料版の有効活用方法: 無料版は「操作性の確認」や「スモールスタート」に最適です。ただ、ビジネスの成長に伴い有料版が必要となる時期もくるでしょう。
- Excel管理の限界: リアルタイム共有やバーコード連携ができないExcel管理は、規模拡大とともに人的ミスと機会損失を招くリスクがあります。
- 有料版の投資価値: セキュリティ、高度なデータ連携、手厚いサポートなど、有料版にはコスト以上の業務改善効果(ROI)が見込めます。
- 製品比較の重要性: 無料版で現場のニーズを明確にした上で、将来の拡張性も含めて複数の製品を比較検討していきましょう。
無料の在庫管理システムが求められる背景と課題
在庫管理に課題を抱える多くの現場では、いまだに手書きの台帳、あるいはExcelを用いたPCでの手動管理が主流です。
しかし品目数が増えるにつれて、旧来のアナログ的手法では、入力漏れや二重入力といった人的ミスが頻発し、実在庫と帳簿上の数字が合わない「在庫不一致」が深刻な課題となってきます。
特に中小企業やスタートアップ企業においては、自社商材の魅力とともに、競合に負けないスピード感や正確性・信頼性も求められます。
そこで、コストを抑えつつ、管理精度を高める手法として「在庫管理システム」で課題を解決する企業が増えています。併せて、どうしても大掛かりでお金も手間もかかりそうな購入型のパッケージ製品やオンプレミス型システムに対し、クラウド型ならば「無料版もある(無料で使える/無料で試せる)」ことも認知されるようになってきています。
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関連記事在庫管理システムってそもそも何? どんなことができるの? という人はこちらもご覧ください
手書き管理の課題
手書き管理は最も簡単で直感的で、旧来からある方法の1つです。特別な技術やツールを必要とせず、どんな業種でもすぐに始められます。例えば、ノートや紙を使って在庫リストを作成し、入出庫の際に手書きで記録を残すといった管理方法です。
しかし手書き管理は、人の手で作業するので記録ミスや情報の紛失がどうしても発生してしまう課題があります。効率的かつ正確さを高める運用のために在庫リストのテンプレートを作り、入出庫のタイミングで必ず記録を行うといったルールを設ける手段などが有効ですが、在庫量が増加したり、複数人で在庫管理を行う場合には限界があります。
デジタルには不慣れといったシーンも大いに考えられます。しかし、「正確性」の面でやはり必要に応じてデジタルツールへの移行を検討することが勧められます。
Excel(スプレッドシート)管理の課題
ノートや紙への手書き記録に続く、Excel(Microsoft Excelなどのオフィスツール)管理の方法も一般的です。ExcelやGoogle スプレッドシートは多くのビジネスシーンで既に広く使われており、ユーザー(従業員)の習熟度もそれなりにあり、新たにソフトウェアを導入するコストもかかりません。
また、「計算ミス」をするリスクを減らせます。Excelで計算しつつ、基礎データを一元化して管理することで、少なくとも「数値」におけるミスは起こりにくく、検算、確認もしやすく、数や金額の誤りなく在庫管理ができるようになります。汎用性の高いCSVなどの形式へ変換し、他システムと連携させることも比較的簡単に行えます。
しかし、Excelそのものに人手の入力や選択ミスを防ぐ機能はありません。もちろん、できないことはありません。しかし、使う人/作る人によってできることの幅が大きく変わるのです。
このため、特に課題となる「在庫不一致」につながる人的ミスの発生リスクが残ります。データの消去や紛失、漏えいといったリスクも解消しにくいです。
そもそもなぜ在庫管理が重要か
在庫管理は、無駄なコストを削減し、効率的な事業運営を可能にするためのビジネスにおいて特に重要なタスクです。特に「正確な在庫情報」は需要予測や再注文時期の決定に欠かせない要素です。
例えば、在庫過剰な状況は保管コストの増加や製品の廃棄リスクを引き起こします。一方で、在庫不足は販売機会の損失や顧客満足度の低下を招きます。
これらの問題を避けるためには、在庫状況を常に把握し、適切な在庫レベルを維持することが必要です。いくつか業種・業界別に在庫管理の重要性を振り返ってみましょう。
小売り業の場合
小売業は、正確な在庫管理が収益に直結します。
在庫不足が発生すると、販売機会を逃し、売上が減り、そして顧客満足度の低下につながります。過剰在庫も倉庫コストを圧迫し、また販売時期を逃したり、原価割れで販売する事態に陥ったりするリスクを抱えることになります。
製造業の場合
製造業は、部品と原材料を含めて広範囲に在庫管理することが求められます。そのため正確な在庫管理は生産効率と密接に関連します。
仮に特定の部品1つが不足していただけで、生産ライン全体を停止する事態に陥るかもしれません。多種多様な部品をたくさん使い、多くの人手や時間を掛けて1つの製品として製造される自動車や電化製品などを想像するとより分かりやすいことでしょう。
物流業の場合
物流業界は、輸送と倉庫の運用に影響を与えます。在庫情報は運送計画や配送スケジュールにも密接に関わりを持ちます。
過剰在庫は倉庫を物理的に圧迫し、また運送計画に破綻が生じる恐れがあります。逆に在庫不足で配送物が少ないとしても、輸送力や人員体制、コストに大きな無駄が生じる可能性があります。
適切に在庫管理することで効率的に倉庫を運用でき、また適切な輸送計画を実行することにつながります。
eコマース業/ECサイトの場合
eコマース業は、商品がオンラインで販売されるため、正確かつ「リアルタイム性」のある在庫管理が売上と顧客満足度に直結します。
不正確な在庫情報・在庫データや在庫不足は注文、そして販売の大きな障害になります。適切に販売できなければそもそも売上機会を逸しますし、在庫不足などで配送遅延を招けば顧客の不満につながるだけでなく、ライバル社に顧客を奪われてしまいます。
なぜ無料で提供できるのか
法人向けIT製品の多くは開発や維持にコストがかかるため、本来は「有料」での提供が原則です。
「無料版」は一定の条件のもとで個人事業主から中小規模シーンでの導入に向け、または選定・検討に向けたお試しのために用意される、「無料プランのある製品」あるいは「無料トライアルを用意する製品」のことを差します。
無料プランが用意されている主な理由は、ユーザーに実際の操作性を体験してもらい、その有用性を納得した上で有料版へステップアップしてもらうための「エントリーモデル」としての役割があるからです。
一定の条件とは、利用できる機能が基本的なものに限られる/利用できるユーザー数に制限がある/保存できるデータ数に制限がある/保存期間に制限がある/広告が表出するなどがあります。
これらの条件・制限を理解した上で、その範囲で使えると判断できるならば無料プラン、あるいは無料トライアルで「無料の範囲で試験的にスモールスタート」し、システムの機能や効果を検証したいといったシーンにとても適しています。遠慮なく活用していきましょう。
参考おすすめ記事在庫管理アプリおすすめ8選 無料アプリ、主な機能と導入メリット、選び方を目的別・業種別にじっくり解説
在庫管理システムを無料で導入する6つのメリット
無料システムを導入することで、Excel管理では実現できなかったデジタル化の恩恵を早期に享受できます。
- 人的な入力ミスを大幅に削減できる
- 実在庫をリアルタイムに共有できる
- スマートフォンをハンディターミナル化できる
- 棚卸し作業の時間を短縮できる
- 適正な在庫レベルを維持できる
- 現場への定着を確認できる
人的な入力ミスを大幅に削減できる
例えば「バーコードスキャン機能」を活用すれば、品番の打ち間違いを防ぎます。手入力による作業を自動化し、正確なデータ登録が可能です。仮に1日に100件以上の入出庫が発生する現場でも、スキャンを活用すれば数分で作業を完了できます。
実在庫をリアルタイムに共有できる
クラウド上でデータを管理するため、外出先や別拠点からも最新の在庫数を確認できる体制を容易に構築できます。情報のタイムラグによる発注ミスを防止します。
スマートフォンをハンディターミナル化できる
スマートフォンのカメラ機能を利用して検品や棚卸しが行える機能を備える製品もあります。専用のハードウェアを購入することなく、導入のハードルを低く抑えられるのが利点です。
棚卸し作業の時間を短縮できる
クラウド型製品は一斉に複数人で作業するようなシーンにも対応しやすいです。データ入力の順番などを待つことなく、結果として手間と長時間を要していた棚卸し業務を大幅に短縮できます。現場の負担軽減に直結します。
適正な在庫レベルを維持できる
クラウド型製品は「デジタルデータ」で情報や状況を管理します。デジタルデータである利点を生かし、過去の入出庫履歴を分析するといったことも容易に行えるようになります。
この分析が、過剰在庫や欠品を未然に防ぐ機能としてとても有効です。データの分析に基づいた発注タイミングの可視化により、無駄な仕入れの把握や抑制の判断も容易になります。
現場への定着を確認できる
無料版は、有料版(本導入)の前に、現場のスタッフがシステムを使いこなせるかを試せます。導入後の形骸化を防ぎ、自社の運用に最適な機能を見極めるための重要なステップとなります。
無料版の限界 ビジネス成長に伴う「壁」とは
無料版は製品導入のハードルをとても下げられます。しかし、企業が成長するにつれて「限界」も訪れます。多くの場合、以下が「壁」となります。
登録データ件数やユーザー数の制約
無料プランの多くは、商品登録数やユーザー数に上限が設けられています。取り扱い商品が増え、管理を分担するスタッフが増えた時点で、無料版のままでは運用が立ち行かなくなる可能性があります。
外部連携と自動化の不足
在庫管理システムで扱う「在庫の情報」は、登録するECポータルサイトや自社販売サイト、さらには自社の会計システムやPOSシステムなどと連携することが想定されます。
これをシームレスに自動化する「自動連携機能」は、多くの場合有料版での提供となります。手動でのデータ出力・取り込み作業が残るため、完全な自動化による効率化は望めないかもしれません。
サポート体制とセキュリティの差異
無料版はトラブル時のサポートが制限されていたり、高度な権限管理設定ができなかったりと、「サポート体制」「セキュリティ機能」が足りない可能性があります。サポートは提供側にコストがかかることから、無料版では、有料版にはある手厚いサポートメニューを利用できないことが多いです。
企業の信頼性を維持することが主目的であれば、堅牢なセキュリティと充実したサポートを備えた有料版が不可欠となる時期も早期に来るでしょう。
参考おすすめ記事在庫管理を自動化したい その方法とは?|棚卸・発注を自動化する技術とメリット、失敗しないシステムの選び方
在庫管理システム 無料版と有料版の違い/機能差
無料版の在庫管理システムは多くの場合、以下の機能・仕様に制限があります。もちろん製品によって/製品固有の特色に応じて制限の有無や範囲、ほかいくつかに差異はあります。製品選びにおける機能の有無や仕様を調査するポイントに据えるとよいでしょう。
- ユーザー数の上限
- 在庫アイテム数の制限
- データ保存期間の限定
- サポート体制/メニューの制限
- レポート機能の制限
- 他システムとの連携機能の制限
- より高度な機能の制限
ユーザー数の上限
無料プランは1~2ユーザー程度、有料版は料金プラン別に数十、数百~無制限です。無料版は個人事業主・小規模企業やチーム・部署単位向け、有料版は中小~大規模企業向けとなります。
在庫アイテム数の制限
無料プランでは「管理できるのは最大●アイテム/個まで」といった制限があります。有料版は無制限となるでしょう。小規模ビジネスなので無料プランの範囲で足りるといった判断の仕方もできます。
データ保存期間の制限
過去データを保存しておける期間の制限です。無料プランは最長で●年まで、対して有料版は契約し続ける限り永久に可能といった差があります。無料版は特定シーンや短期プロジェクト向け、有料版は長期的なデータ管理や分析などを行うならば必要となるでしょう。
サポート体制/メニューの制限
一般的にサポート、特に人力・専門スタッフによるサポートは相応にコストが掛かります。そのため無料プランは多くの場合、サポートメニューや範囲が限られます。
無料プランでは例えば、Webでのヘルプページやユーザーコミュニティコーナー程度は用意されるものの、対人サポート・専門スタッフへ直接聞く/即時対応を求めるといったサポートは範囲外、あるいは有料となります。一方の有料版は、導入・活用初期の支援から運用中のトラブルサポート、24時間365日サポート、即時対応支援なども期待できます。
レポート機能の制限
無料プランは多くの場合基本レポートのみ、対して有料版は高度な分析を含めたカスタムレポートやにも対応するといった差異があります。有料版は詳細にデータを活用し、戦略化を強化していきたいシーンには必要となるでしょう。
他システムとの連携機能の制限
有料版は多くの外部システムとの連携性も考慮されている/機能を備えていることが多いです。無料プランは単体/シンプルな運用/本格導入に向けたスモールスタート用で、一方の有料版は高度な業務統合を考えているシーンで必要になります。
より高度な機能の制限
無料プランは基本機能こそ使えるものの、有料版に備わる高度な機能は省かれることが多いです。例えば「AI分析」「自動発注機能」のような利便性や独自性、自動化を推進する高度な機能は、有料版でないと使えない場合があります。
自社のニーズとしても合致する機能の有無があるかどうかによって、無料プランで大丈夫か、それとも、ゆくゆくは有料プランにすることを前提に計画するのかを定めていくことになるでしょう。
無料の在庫管理システムの選び方
ここからは、無料で始められる在庫管理システムの選び方のポイントをご紹介します。
- 自社のニーズに合っているか
- カスタマイズが柔軟にできるかどうか
- ユーザーフレンドリーか/自社に合う使い勝手かどうか
- デモと無料トライアルは遠慮なく活用する
ビジネスのニーズに合っているか
まず、ビジネスの具体的なニーズを明確にしましょう。
どのような商品や資産を管理し、どの程度の在庫を扱うかを把握します。
カスタマイズが柔軟にできるかどうか
自社の業種やプロセス、要件に合わせて柔軟にカスタマイズできるかも重要なポイントです。
カスタマイズ可能であれば、独自の要件に合わせて機能を調整できます。
また、既存のプロセスを最適化して、さらなる運用の効率化も図れます。
自社のニーズに合う使い勝手か
利用者が使いやすいシステムであれば、トレーニングや導入がスムーズに行えます。
また、使いやすく直感的なUIは誤操作を防止できるため、生産性の向上も期待できます。
デモと無料トライアルは遠慮なく活用する
候補に絞った製品やシステムについて、デモを見たり、試用版/無料トライアル版を使ったりして、具体的な操作感や機能、カスタマイズすべき要素や機能を確認していきましょう。無料プランからスモールスタートしてみるのもよいでしょう。
これは、システムが実際の業務に適合するかどうかを確認するとても重要な行程です。評価時と同様に、機能や操作感、どこまでカスタマイズが可能か/応えてくれるか、などを遠慮なくベンダーに聞いて、納得いくまで確認します。
これらのことに寄り合ってくれる/信頼できるベンダーかどうかなども見極めつつ、導入する製品を絞り込んでいきましょう。
参考おすすめ記事中小企業におすすめの在庫管理システム6選|主な役割と導入効果、失敗しない製品の選び方(無料版あり)
(参考)在庫管理でよく使われる用語
| SKU(Stock Keeping Unit) | 個別の商品や商品のバリエーションを管理するための識別番号で、最小の管理単位になる |
| 在庫回転率 | 一定期間内(主に1年間)にどれだけ早く販売して在庫がなくなり、再注文するサイクルを回したかを示す指標で、在庫回転率が高くなるほど効率的な在庫管理を示す |
| 発注点 | 在庫が減っていき、補充商品の発注が必要になる在庫レベル |
| 安全在庫 (セーフティストック) |
予測外の需要変動で、在庫不足が発生しないための余分な在庫のこと |
| ABC分析 | 商品を在庫回転率の高さに応じてA、B、Cの3段階に分類し、管理の重点を設定する方法で、Aは最も高く、その次にB、Cと続く |
| バーコードスキャニング | 商品に割り当てられたバーコードを使用し、在庫アイテムを素早く識別してトラッキングする技術 |
| バッチ管理 | 類似した商品をグループ化して一括で処理し、在庫を追跡する方法 |
| ロット追跡 (ロット管理) |
商品をロット番号で識別し、製造から販売までを一元管理することで、適正在庫の保持に役立てたり、不良品の発生時に追跡しやすくする方法 |
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