
ピッキングミスは、物流現場や倉庫で誰もが頭を悩ませる課題の1つです。ヒューマンエラーや環境、システムの問題など、ミスが生まれる背景は複数あります。
この記事では、よくあるピッキングミスの種類や原因を整理しながら、現場ですぐに実践できる具体的な対策を解説します。作業マニュアルの見直しや棚・リストの工夫、教育体制の充実、さらにデジタルツールやシステム導入まで、無理なく始められる改善策を丁寧に紹介します。
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目次
ピッキングミスが起こる理由
ピッキングミスを防ぐためには、まずその原因を正しく知ることが大切です。ミスは単なる不注意だけではなく、作業者の状態や現場の環境、使っている仕組みに深く関係しています。ここでは、ヒューマンエラーと環境・システム要因の2つの視点から解説します。
- 主因=ヒューマンエラー(疲労・思い込み・紙リストの行飛ばし)
- 環境要因=視認性不足(小さな棚番/暗い照明)・動線の悪さ
- システム要因=ロケ情報の齟齬・転記ミス・更新遅延
ヒューマンエラーが主な原因
倉庫現場でのミスは、多くがヒューマンエラーによるものです。例えば、作業者が長時間休まず稼働する状況だったり、繰り返し作業で集中力が落ちていると、判断ミスが増えてしまいます。
ヒューマンエラーは経験の浅い担当者だけでなく、ベテランも「思い込みによる確認不足」が起こりやすいことにも着目しましょう。慣れているからこその省略や勘違いがあります。また、人力・人の目だけに頼る紙のリストを使っているのでは数字の見間違いや行飛ばしといったミスも生じます。
ミスは新人にもベテランにも、誰にでも起こり、特に繁忙期や業務量が増えた時、集中力が切れやすい時間帯に発生件数が増える傾向があります。
おすすめ作業標準化の進め方のコツについては「ワークフローとは何か」をご覧ください。
作業環境やシステム面の課題
作業環境やシステムの仕組みも、ピッキングミスを誘発する要因となっています。
棚番号やラベルが小さくて見づらい場合や、照明が暗い現場、スペースが狭く動きづらいレイアウトでは、商品や棚を探すだけで余計な時間と労力がかかります。
ロケーション管理が徹底されていないと、実際の配置とシステム上の情報が食い違い、仮置きが増えてしまいがちです。また、リスト作成時の転記ミスやシステム更新の遅れによる情報のズレも、ミスの温床となります。
関連ピッキング対策の全体像については「物流システム・在庫管理・WMSの違い」をご覧ください。
ピッキングミスの種類と具体例
ピッキングミスには、どんなパターンがあるのでしょうか。実際に現場で起こりがちな事例を整理します。
商品間違い・数量間違い
商品や数量の間違いは、最も多いミスの1つです。似た色やサイズの商品を取り違えてしまったり、指示された数と異なる数をピックしてしまうことがあります。また、「個」と「ケース」のように単位を勘違いしたまま作業を進めると大きな損失につながります。
このように、ピッキングリストの情報が分かりにくいことに由来し、商品のロケーション番号や品番を見間違えてしまう──。ここに注意と対策が必要となります。
期限切れ・同梱物の入れ忘れ
食品や医薬品などでは、賞味期限や使用期限の見落としが発生することがあります。医薬品についての適切な流通・在庫管理方法については厚生労働省がガイドラインを出しているのでぜひ一読してみてください。また、納品先ごとに出荷基準が異なる場合や、キャンペーンのノベルティや特典品の入れ忘れもよくあるミスです。
特に複雑な条件の同梱物や、出荷先ごとのルールがあると、作業者が自分で判断しなければならず、ミスのリスクが高まります。
おすすめ棚・ロケーションの見直しは「倉庫ロケーション管理を利用した在庫の管理方法」をご覧ください。
現場で始められるピッキングミス対策
ピッキングミスは、現場の仕組みや日々のオペレーションを見直すことで、着実に減らすことができます。ここでは、コストをかけずに始めやすい改善策を紹介します。
- 作業マニュアルで標準化する
- ピッキングリストや棚の見やすさ改善
- ロケーション・保管方法の工夫
- 新人教育とOJTの仕組みを整える
- ダブルチェックや作業記録で再発防止
- 音声・画像認識やロボット活用
- 在庫管理システムの導入(ハンディ端末なども含む)
作業マニュアルで標準化する
ピッキング作業の品質を一定に保つためには、誰がやっても同じ作業、結果になるような標準マニュアルが必要です。手順ごとに「いつ」「どこで」「何を」「どのように」作業するのかを明確に決めておくことで、作業者ごとの判断の違いを減らせます。
マニュアルには写真や図解、動画を取り入れると分かりやすくなります。新商品やレイアウト変更など現場の変化に合わせて、半年に一度は内容を見直すと良いでしょう。現場の声も積極的に取り入れ、使いやすいマニュアルに改善、アップデートし、その共有と順守が当たり前になる体制にすることがポイントです。
ピッキングリストや棚の見やすさ改善
リストや棚の見やすさを高めるだけでも、ミスを防げます。棚番号や品番は大きくはっきり表示し、エリアごとに色分けするなどの工夫も効果的です。
リストには余計な情報を入れず、「どこで」「何を」「いくつ」というポイントが目立つようにします。品番など桁数の多い数字には区切り記号を加え、照合ミスを防ぎます。
ロケーション・保管方法の工夫
保管方法も、ミス対策に欠かせません。
似た商品は物理的に離して配置し、どうしても隣り合わせになる場合は仕切り板やラベルの色を変えて区別します。
出荷が多い商品は作業者が取りやすい場所へまとめて配置すると、歩行距離が短くなり、作業効率も上がります。不要品や期限切れ品を定期的に整理する「赤札作戦」や、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底も基本です。
教育・チェック体制でミスを減らす
ミスを防ぐためには、マニュアルや環境だけでなく、「人」への教育やチェック体制も重要です。
新人教育とOJTの仕組みを整える
新人スタッフが早期に戦力となるためには、教える側による内容のバラつきを防ぐ仕組みが役立ちます。トレーナー専用の指導マニュアルやチェックリストを活用し、教育の品質を統一します。
OJT(現場実習)だけでなく、座学や動画教材も組み合わせると、知識のインプットと実践の両方が効率よく進みます。新人がすぐに質問できる体制や、「分からないことは必ず確認する」という現場の雰囲気づくりも大切です。
ダブルチェックや作業記録で再発防止
作業の見直しや記録も再発防止には欠かせません。
ピッキング後には必ず別の作業者が検品するダブルチェックを取り入れると、流出ミスを防ぎやすくなります。
また、「品番確認」「数量カウント」「期限チェック」「同梱物確認」などのチェックリストを作業ごとに記録しておくことで、見逃しやすいポイントの再確認が徹底されます。
ミスが起こった時は、その原因や再発防止策を記録・共有し、発生傾向を分析することも忘れてはいけません。
棚卸と記録の徹底は「棚卸に強い在庫管理システム5選」をご確認ください。
システム・デジタル技術でミスを減らす
アナログな改善だけでなく、デジタル技術を活用することで、ヒューマンエラーをより確実に防ぐことができます。現場の規模や課題に応じて、導入しやすい仕組みを選びましょう。
音声・画像認識やロボット活用
音声ガイド付きのシステムを使うと、作業指示を耳で聞きながらピッキングできるため、リストの見間違いを減らせます。
また、スマートグラスなどのデバイスを使えば、視界にピッキング指示が表示されるので、類似商品の取り違い防止や新人教育にも効果的です。
さらに、ロボットによる自動搬送や、棚ごとにライトやデジタル表示で場所と数量を案内する仕組みも、作業者の負担とミスを減らす助けになります。
在庫管理システム・ハンディ端末の導入
バーコードやQRコードも活用する「デジタル化」した在庫管理システム(WMS)は、ベテランの思い込みによるミスも防ぎます。ロケーションや商品を端末でスキャンし、間違いがあればエラーを即時に表示します。
作業履歴をデータで一元管理できるため、クレーム発生時の原因追跡や、ミス傾向の分析にも役立ちます。また、ハンディ端末とWMSが連動すれば、入出庫の都度リアルタイムで在庫情報が更新され、情報のズレが解消されます。
| 対策手法 | 導入コスト | 導入難易度 | 主な削減効果 | 属人化の排除効果 |
| 5S・マニュアル整備 | 低 | 低~中 | 全般的なミス(読み間違い等) | 低 |
| ダブルチェック(人) | 中(人件費) | 低 | 全般的なミス(検品) | 低 |
| ハンディ端末 (WMS) | 中~高 | 高(システム) | 商品・数量間違い・期限 | 高 |
| デジタルピッキング | 中 | 中(設置) | ロケーション・商品間違い | 中 |
| 音声ピッキング | 中 | 中(教育) | 数量・読み間違い | 中 |
| ピッキングロボット | 高 | 高(設計) | 歩行負担・疲労の削減 | 高 |
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おすすめシステム導入の効果全般は「在庫管理システムの機能一覧」をご覧ください。
ピッキングミス対策は現場の改革から始まる
ピッキングミスは、人の注意力や確認だけでは根本的に解決しきれません。作業マニュアルや保管方法、教育、デジタルツールの導入など、現場に合った仕組みや環境を整えることで、着実にミスを減らせます。現状の課題を一つずつ整理し、無理なく始められる対策から、ぜひ取り組んでみてください。あなたの現場で「ミスの起きにくい仕組み」が根付くことが、これからの在庫管理の質向上に直結します。
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