
(iStock/Galeanu Mihai)
紙やPDFで毎月大量に届く請求書の処理に追われていませんか。手作業によるデータ入力、承認のための社内確認、支払い処理、そして長期保管しなければならないファイリング……。これらの煩雑な業務は、ヒューマンエラーや支払い遅延のリスクと常に隣り合わせです。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も加わり、経理担当者の負担は増すばかりです。
こうした課題を根本から解決するのが「請求書受領システム」です。請求書の受け取りからデータ化、仕訳、承認ワークフロー、支払い、保管までの一連のプロセスを自動化し、経理業務を劇的に効率化します。
本記事では、請求書受領業務はなぜこれほどまでに煩雑なのか、その根本原因を振り返り、システムのメリットや自社に最適な選び方のポイントを解説します。併せてご紹介するおすすめ製品(全6製品/2025年10月時点)とともに、貴社の課題解決と業務効率化に向けた第一歩を踏み出しましょう。
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目次
その請求書受領、非効率かも? アナログな業務に潜む3つの課題
多くの企業が請求書受領業務で非効率な手間を抱えています。ここでは、システムの導入を検討するきっかけとなる、3つの典型的な課題を見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
- 終わらない「手作業ループ」と「人為的ミス」のリスク
- 物理的な「紙」に縛られるコストと非効率
- 複雑化する「法改正」への対応負荷
課題1:終わらない「手作業ループ」と「人為的ミス」のリスク
郵送で届いた請求書の内容を会計システムへ手入力したり、PDFの内容を目で見て転記したりする作業はヒューマンエラーの温床です。
金額の入力ミスや支払先の選択ミスが起きやすく、その防止策として二重、三重のチェックが常態化しているケースも少なくありません。しかし担当者の負担が増えるばかりで、根本的な課題解決には至っていないのが実情です。
課題2:物理的な「紙」に縛られるコストと非効率
「請求書を処理するために出社する」という状況は、いまだに多くの企業で見られます。届いた請求書を確認し、承認印をもらうために社内を回り、支払いが終わればファイリングして書庫に保管する──。この一連の作業は、担当者を時間的にも場所的にも拘束し、ペーパーレス化や多様な働き方の実現を妨げる大きな要因となっています。
さらには、紙の請求書を保管するためのキャビネットや書庫スペース、過去の書類を探し出す手間も、見えないコストとして積み重なっています。
課題3:複雑化する「法改正」への対応負荷
インボイス制度や改正が続く電子帳簿保存法への対応は、経理担当者にとって大きな負担です。
- 適格請求書発行事業者の登録番号が正しいかを確認する
- 税率ごとの消費税額が正確に記載されているかチェックする
- 電子データで受け取った請求書は、法令要件を満たして保存する
これらの法改正に手作業だけで対応し続けるのは、確認項目が増え業務負荷がかかるだけでなく、法令違反のリスクも伴います。
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請求書受領システムとは? 基本を1分で理解
請求書受領システムとは、取引先から受け取るあらゆる形式の請求書を、クラウド上で一元管理するツールです。
主な機能として、紙やPDFで届いた請求書をAI-OCR(光学的文字認識)技術で自動でデータ化し、会計システムへの仕訳入力や、社内の承認ワークフロー、電子帳簿保存法に準拠したデータ保管までを自動で行います。
データはクラウド上に安全に保管されるため、いつでもどこでも最新の状況を確認でき、経理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現します。
| 課題 | 請求書受領システムの機能による解決策 |
| 1. 手作業とミス | AI-OCRによる自動データ化と会計システムへのAPI連携。請求書をアップロードするだけでAIが情報を読み取り、仕訳データまで自動生成。手入力と目視確認が不要になります。 |
| 2. 紙の非効率 | ペーパーレス化の実現。郵送で届く請求書も代理で受領・スキャンするサービスを利用可能。データはクラウド上で保管されるため、物理的な保管スペースは不要になり、検索も一瞬で完了します。 |
| 3. 法改正への対応 | 法令に準拠した機能の標準搭載。インボイス制度の要件チェックや、電子帳簿保存法の保存要件に自動で対応。法改正のたびにシステム側がアップデートされるため安心です。 |
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請求書受領システム導入のメリット6選
請求書受領システムを導入すると、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、業務効率化にとどまらない6つの主要なメリットをご紹介します。
- 請求書処理の多くを自動化し、作業工数を大幅に削減できる
- 人為的ミスや支払漏れを防ぎ、ガバナンスを強化できる
- ペーパーレス化で保管コストと紛失リスクをゼロにする
- 場所を選ばない働き方(テレワーク)を実現する
- 会計システム連携で月次決算を早期化する
- 法改正にも自動アップデートで手間なく対応できる
メリット1:請求書処理の多くを自動化し、作業工数を大幅に削減す
郵送物の代理受領やスキャン、AI-OCRによる自動データ入力、会計システムへの自動仕訳連携などにより、これまで手作業で行っていた業務の大部分を自動化できます。担当者は、請求書の開封や入力、ファイリングといった単純作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中する時間を確保できます。
メリット2:人為的ミスや支払漏れを防ぎ、ガバナンスを強化できる
手入力作業がなくなることで、金額の誤入力や二重計上といったヒューマンエラーを根本から防止します。また、システム上で承認フローや処理状況が可視化されるため、「誰の承認で止まっているのか分からない」「支払いが漏れていた」といった事態を防ぎ、内部統制の強化にも繋がります。
メリット3:ペーパーレス化で保管コストと紛失リスクをゼロにする
請求書を電子データとして保管することで、紙代や印刷代、キャビネットや書庫といった物理的な保管スペースが不要になります。また、書類の紛失や劣化のリスクもなくなり、過去の請求書もキーワード検索で瞬時に見つけ出すことができます。
メリット4:場所を選ばない働き方(テレワーク)を実現する
インターネット環境さえあれば、オフィスにいなくても請求書の確認・承認・処理が完結します。これにより、経理担当者のテレワークやリモートワークが可能になり、多様な働き方を支援します。災害時などの事業継続計画(BCP)対策としても有効です。
メリット5:会計システム連携で月次決算を早期化する
多くの請求書受領システムは、主要な会計ソフトとのAPI連携機能を備えています。データ化された請求情報が仕訳データとして会計ソフトに自動で取り込まれるため、転記作業の手間やミスがなくなります。これにより、月次決算の締め作業を大幅に短縮し、経営状況の迅速な可視化に貢献します。
メリット6:法改正にも自動アップデートで手間なく対応できる
インボイス制度や電子帳簿保存法など、頻繁に行われる法改正に対して、システム側が自動でアップデートして対応してくれます。ユーザーは常に最新の法令要件を満たした状態でシステムを利用できるため、自社で法改正の情報を追いかけ、業務フローを変更するといった負担から解放されます。
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【失敗しない】請求書受領システムの選び方と比較ポイント5つ
自社に最適なシステムを選ぶには、押さえるべきポイントがあります。ここでは、導入後に後悔しないための5つの選定基準を具体的に解説します。
ポイント1:データ化の方法と精度(AI-OCR vs. オペレーター)
請求書・文書のデータ化はシステムの根幹をなす機能です。主に以下のタイプがあります。
- AI-OCR型: AIが請求書を読み取り、自動でデータ化します。読み取り精度99%以上を誇るサービスも多く、即時性やコスト感に優れています。
- オペレーター支援もあるハイブリッド型: AI-OCR機能を軸にしつつも、人のオペレーターが目視で入力・補正する機能・プランを用意する製品・サービスもあります。AIでは読み取りが難しい手書きの請求書などにも対応できます。
どのタイプにするかは、コストと時間の差、既存システムとの連携性、そして「より確実に」を望むかどうかで変わってきます。選定の参考として例えば、自社で実際に受け取っている請求書(特に複雑なフォーマットのもの)を読み込ませて、データ化の精度やスピードを比較検討してみるとよいでしょう。
ポイント2:対応できる請求書の形式(紙・PDF・電子インボイス)
取引先から受け取る請求書の形式は様々です。
- 紙の請求書: 郵送物の代理受領やスキャン代行サービスがあるか。
- PDFの請求書: メール添付やWebダウンロードされたPDFをアップロードできるか。
- 電子インボイス: Peppol(ペポル)などの標準規格に対応しているか。
将来的な電子インボイスの普及も見据え、あらゆる形式の請求書を一元的に扱えるシステムを選ぶことが重要です。
ポイント3:既存の会計・業務システムとの連携性
現在利用している会計ソフトやERP(統合基幹業務システム)とスムーズにデータ連携できるかは、業務効率化の観点から非常に重要です。APIによる自動連携に対応しているシステムであれば、ボタン一つでデータを反映でき、転記の手間を完全に排除できます。
連携可能なシステムのラインナップや、連携方法(APIかCSVかなど)を事前に必ず確認しましょう。
ポイント4:自社の承認フローに合うワークフロー機能の有無
「課長→部長→経理担当者」といった自社の承認ルートを、システム上で柔軟に設定できるかを確認しましょう。
金額による承認者の分岐設定や、代理承認、コメント機能など、きめ細やかなワークフロー設定ができる製品は効率化とともに、内部統制の強化に役立ちます。
ポイント5:料金体系とサポート体制
クラウド型サービスの料金体系は、「ユーザー数単位の月額課金制」や「月額基本料金+従量課金(処理枚数やデータ化の方法に応じる)」など、比較的シンプルに構成されていることが多いです。シンプルな料金体制ならば、ランニングコスト=月にいくらのコストが発生するかを把握しやすいことが利点です。
選定においては、月額料金で利用できるユーザー数や機能制限などをしっかり確認し、自社の請求書枚数や利用規模に合ったプランを選びましょう。
また、導入時の設定支援や、運用開始後の問い合わせ対応(電話、メール、チャット)など、サポート体制の充実度も安心して利用するための重要なポイントです。
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メリットの大きいクラウド請求書受領サービスですが、その効果を最大限に引き出すには導入前の準備が成功の鍵を握ります。ここでは、導入時につまずきがちな3つのポイントと、その対策を具体的に解説します。
- 注意点1:業務フローの見直しと社内への周知を徹底する
- 意点2:取引先への事前説明と協力依頼を丁寧に行う
- 注意点3:セキュリティとサポート体制を必ず確認する
注意点1:業務フローの見直しと社内への周知を徹底する
最も重要なのが既存の業務フローの見直しです。しかし、「とりあえずシステムを導入すれば何とかなるだろう」といった考えで進行してしまうのはいけません。現場が混乱し、かえって業務が非効率になるケースも少なくないからです。
システムはあくまで道具であり、それを使いこなすための社内ルール作りが不可欠です。導入プロジェクトを開始する際に、最低でも以下の項目を明確にしましょう。
- 新しい承認フローの設計:誰が請求書の内容を確認し、どの部署の誰が承認し、最終的に誰が支払処理を実行するのか。システム上で完結させる新しいワークフローを設計します。
- 役割分担の明確化:紙で届いた請求書は誰がスキャンするのか、取引先からの問い合わせには誰が対応するのか、といった担当者の役割を具体的に定めます。
- 関連部署との連携:請求書処理は経理部門だけの問題ではありません。実際に発注を行う営業部門や購買部門にも、導入の目的やフローの変更点を事前に説明し、理解を得ることがスムーズな移行に繋がります。
注意点2:取引先への事前説明と協力依頼を丁寧に行う
請求書の発行元である取引先の協力なくして受領業務のDXは実現できません。自社の都合だけで電子化を進めるのではなく、取引先・パートナーとの丁寧なコミュニケーションを心がけながら進行していきましょう。
例えば、請求書の送付先変更などを依頼する場合は、少なくとも1〜2カ月前には書面やメールでアナウンスするのが理想です。その際には単に変更をお願いするだけでなく、以下の事項を明記し、相手の不安や手間を解消する配慮が求められます。
- 変更の理由(例:ペーパーレス化推進、支払い処理の迅速化のため)
- 具体的な変更内容(例:送付先メールアドレス、アップロード先のURLなど)
- 変更の開始時期
- 問い合わせ窓口
また、全ての取引先が電子送付に対応できるとは限りません。従来通りの郵送を希望する取引先への対応方法も並行して検討しておくと万全です。
注意点3:セキュリティとサポート体制を必ず確認する
請求書は取引情報や金額が含まれる企業の重要情報です。そのため、サービスを提供するベンダーが信頼に足るセキュリティ対策を講じているかを確認することも、改めてですが極めて重要です。
具体的には、公式サイトなどで以下の点を確認しましょう。
- 通信の暗号化(SSL/TLS)
- 不正アクセスや情報漏えいに関する対策
- データのバックアップ体制
- ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証やプライバシーマークの取得状況
また、導入後に操作方法で不明点が出たり、万が一トラブルが発生したりした際のサポート体制も重要な選定ポイントです。
サービスの中には、「問い合わせはメールのみ」「対応は平日日中だけ」といったメニューしか用意されない製品もあります。サポートメニューはプランやオプションによって変わるサービスも多くあります。基本的にサポートは「有料」と考えると齟齬が起きにくくなります。
サポートメニューについては「多くは必要ないので、その分コストを抑えたい」といった考え方の企業もあれば、「システム・ITの専任担当者はいない」「導入・運用が心配である」ために都度サポートを受けながら進めたい企業も多くあるでしょう。緊急時に業務が滞る可能性を考慮し、電話やチャットでのサポート有無や対応時間などを事前に確認し、自社が安心して運用できるメニューを用意する/自社のニーズを叶えられる体制・プランを示してくれるベンダーを選びましょう。
おすすめの請求書受領システム
「請求書受領」を主な機能に据えるおすすめ製品は以下の通りです。(製品名abcあいうえお順/2025年10月時点)
また、請求書“発行”や管理の機能も含めた「クラウド請求書」まで含めると、このほかにもおすすめの製品があります。搭載機能や特徴、評価/口コミ数などで絞り込み/並べかえができる「おすすめ請求書管理システム一覧&検索&比較コーナー」をぜひお試しください。またITセレクトでは、IT製品・サービス選定に詳しい専門スタッフに聞ける「ITセレクトのコンシェルジュ相談サービス(無料)」も用意しています。こちらもぜひご活用ください!





















