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れこめんどDVD:「オリバー・ツイスト(HD DVD)」DVDレビュー(1/3 ページ)

» 2006年09月25日 14時24分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

「オリバー・ツイスト(HD DVD)」

発売日:2006年8月25日
価格:5040円
発売元:東芝エンタテインメント
上映時間:130分(本編)
製作年度:2005年
画面サイズ:シネマスコープサイズ・スクイーズ
音声(1):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/英語
音声(2):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/日本語

 「戦場のピアニスト」でアカデミー賞監督賞をはじめ、3部門を受賞した名匠ロマン・ポランスキー監督がイギリスの文豪チャールズ・ディケンズの映画化に挑んだ意欲作。「戦場のピアニスト」の倍以上もの製作費を投じたこの超大作は、現代ではどう生まれ変わったのだろう?

 また、格差社会が問題になっている日本では、無垢な心を持った孤児オリバーの姿はどう映るのか?6月には通常画質のDVDも発売されたが、今回は究極画質とも言えるHD DVDで視聴を行った。

まずはポランスキーについて

 いきなり私事で恐縮だが、筆者がロマン・ポランスキー監督の作品に初めて接したのは1981年の「テス」だった。まだ中学生だった自分にはデビューしたてのナスターシャ・キンスキーの美しさもさることながら、信念のために愛を貫き、最後は死に追いやられてしまうテスのドラマに完全に魅せられてしまった。それ以来、ロマン・ポランスキー監督は目が離せない存在になっていたのだが、彼については知れば知るほど興味が尽きない人物であることも先に書いておきたい。

 両親がポーランド人のポランスキーは29歳の時に「水の中のナイフ」で監督デビュー。研ぎ澄まされたその感性は世界中の評判を呼び、その後「反撥」「袋小路」を製作。(以上の3作品は「オリバー・ツイスト」公開時にDVDが発売された)

 67年にはコメディの「ポランスキーの吸血鬼」を発表。ヒロインを演じたシャロン・テートと結ばれる。翌年には名作「ローズマリーの赤ちゃん」を発表するが、その直後、悲劇に見舞われる。身重だった妻シャロンが、チャールズ・マンソンとその仲間により惨殺されてしまうのである。その事件はポランスキーに強烈なまでの暗い影を落とし、以降の作品からは「吸血鬼」に見られたような明るい面は一切削られ、底がないほどの暗さがポランスキー作品の特徴となったのだ。

 「マクベス」「テナント/恐怖を借りた男」の2作はその傾向の最たる作品と言えよう。「テス」の発表前、ポランスキーは13歳の少女モデルと性的関係を持ったとして有罪判決を受けるものの、服役を恐れ、国外へ脱出。以降アメリカには2度と入国していない。

 しかし、監督としての手腕は大勢のスターから評価され、ハリソン・フォード主演の「フランティック」、シガーニー・ウィーバー主演の「死と乙女」、ジョニー・デップ主演の「ナインスゲート」などを発表してきている。

「戦場のピアニスト」で復活

 その一方で、作家としての評価は徐々に落ちてきて、もうポランスキーも終わりか?と思った頃に発表されたのが、あの「戦場のピアニスト」だった。ポランスキー自身の過去をえぐり出すかのようなこの作品は、主演のエイドリアン・ブロディの名演と共に世界中に衝撃を与え、オスカー3部門を受賞し、興行的にも成功を収めた。そんなポランスキー監督が新作に選んだのは児童文学ということで、意外な感じもしたが、期待を込めて作品を見てみた。

 「オリバー・ツイスト」は「クリスマス・キャロル」「大いなる遺産」などで知られるイギリスの文豪チャールズ・ディケンズ原作の映画化作品である。ポランスキーは原作に忠実に19世紀のロンドンを舞台に物語を描くことに挑戦した。「戦場のピアニスト」で成功を収めた彼には世界中から資金が集まり、大手スタジオの言いなりにならなくとも自由に映画製作できる環境が手に入ったからである。

 しかし、長大な原作を2時間程度の作品にするため、ストーリーは割愛され、部分的には設定の省略も行われている。そうしたことは原作のファンにとっては残念なことかもしれないが、映画を見る限り大きな影響はないものと思われる。

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