JEITA(電子情報技術産業協会)は10月30日、文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会が発表した中間整理公開を受けての懇談会を開催。小委員会で行われた私的録音録画補償金問題の議論を「早急なものだ」とし補償金制度自体についての在り方に疑問をしつつ、「JEITAらしいアピールをして問題を広く知ってもらいたい」と問題の周知に注力する意向も示した。
同協会は10月16日に録音録画補償金問題について、「補償の必要性に関する議論が尽くされていない」「制度の維持、対象機器の拡大を前提としたような議論は問題」「コピー制限されているコンテンツの複製は、著作権者等に重大な経済的損失を与えるとは言えず、補償の対象とする必要はない」との3点を協会の意見として表明している(→「録音録画補償金、抜本的な見直しを」とJEITA)。
同協会専務理事の半田力氏は「議論は尽くされていない。これまでの大枠はアナログ時代に作られたもので、可用性に富んだデジタル時代にはそぐわない。権利者の権利もそうだが、利用者の利便性も確保しないと全体の発展は望めない」と主張する。
「権利者が利用者の複製によって“重大な経済的損失”を被るのが補償の前提だが、そのライン引きについて議論がなされていない。指摘した3点については、JEITAでは重大な損失には当たらないと考えている。それに、議論が十分になされないまま、対象機器や金額についての議論がなされているのは、結論を急ぎすぎている」(同協会著作権専門委員会 委員長 亀井正博氏)
同協会は名前の通り電子機器・情報通信産業に携わるメーカーが中心となって組織する団体であり、市場の拡大という観点から補償金制度に反対するという。「市場の維持にはバランスが不可欠。技術的な制約も、金銭的な負担も2つの負担を利用者に強いるのはナンセンスだ。“いかに市場を大きくしていくか”を命題とするならば、補償金制度はないほうがベターだと考える」(亀井氏)
ただし、金額の見直しや課金方法の改正、補償金をかけるならばDRMはフリーにするなどの制度改正を行うことで、補償金制度という大枠は残したままで「市場の拡大」を成し遂げることも不可能ではないはず。そうした場合にバランス維持のため、「補償金制度は継続、DRMはナシ」といった方向性がJEITAが受け入れることはあるのだろうか。結論からすれば「消費者次第」だというが、亀井氏はこれからそうした方向に変化させるのも難しいと見解を示す。
同協会では補償金制度について「少なくとも2011年で廃止にすべき」との意見を掲げるが、これまでの審議を見ている限り、このままのペースで会合を重ねても抜本的な改革案がまとまるようには思えず、それはJEITA側でも認識している。議論を重ね、関係者すべてが納得できる結論にたどり着くことが理想とはいえ、「審議会のテーブルで物事を決めるには、こう着状態な気がする」(亀井氏)というのが現状。
こう着状態を打ち破るものとして亀井氏が期待しているのが、10月16日から募集開始されたパブリックコメント(「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」に関する意見募集の実施について)だ。「パブコメでどれだけ意見が集まるかが、大きなカギになるかも知れない。権利者団体のように記者会見を開くといったことはしにくいが、JEITAらしいアピールをして問題を広く知ってもらいたい」
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