どん欲なまでの技術指向が生んだ“忠実な音”~パイオニア(1/4 ページ)
2001年11月に発売されたパイオニアの「VSA-AX10」は、それまでの国産AVアンプの概念を変える製品だった。ピュアオーディオで培ったノウハウ、デジタルサラウンドなどのテクノロジ。自動音場補正。そして42万円という価格設定……。
投入された物量や機能はもちろんだが、これだけの高級志向がAVの分野でも求められ始めたことを示すものだった。AX10の成功は、国産AVアンプの高級化を後押しすることになる。
そのAX10はその後、オーディオ信号の伝送にiLINKを用いた2002年の「VSA-AX10i」、シャシー強化や自動音場補正機能をパワーアップさせた2003年の「VSA-AX10Ai」と進化・熟成が進み、“音”を重視するAVマニアの大きな支持を得ている。
では(変な言葉だが)オーディオ系AVマニアに支持を受けるAX10シリーズは、どんな人物が作っているのか。3製品の製品企画を担当してきたパイオニアホームエンターテイメントビジネスカンパニーAVコンポ企画グループ主査の小野寺圭一氏に話を伺った。
無類のオーディオ好きがパイオニアの伝統と融合
小野寺氏と話を進めていくと、意外な素顔が見えてきた。入社して17~8年という同氏は当初、レーザーディスクのカラオケソフト制作、レーザージューク(レーザーディスクを用いた映像ジュークボックス)のソフト制作といった、今では懐かしい製品のソフトウェア部分を担当していたというのだ。
「その後にアメリカ向けカラオケソフトの企画担当を勤めたあと、1991年からは英国を拠点として、欧州でレーザーディスクソフトの製作管理を担当しました。家庭向けプレーヤーがある程度普及してくると、日本のアニメソフトのライセンス業務を担当。アニメ作品の欧州市場立ち上げを行いました」(小野寺氏)。
つまりソフト制作畑のプロではあったが、オーディオ機器に関しては担当したことがなかったというのである。では小野寺氏とAVのハードウェアとは、全く接点がなかったのか?
あるハイエンドAV誌の元編集長は、1990年代半ばにあまり接点がなかったハズの小野寺氏と会ったことがあったそうだ。小野寺氏は、実は自他共に認めるハイエンドオーディオ好きで、世界的なピュアオーディオ企業が数多く点在する欧州でインスパイアされ、良い製品を作ることに携わってみたい、というエネルギーを蓄積していたようだ。
「子どもの頃からオーディオ好きだったんですよ。ですから、ずっと転属願いを出していたんです。そして1998年に欧州から帰国し、オーディオCD-Rレコーダーなどを担当しました。AX10は、AVアンプの開発に携わるようになって初めて企画を担当した製品です」。
オーディオ好きの少年は社会人となり、AVソフトウェアの制作と欧州の環境にインスパイアされ、その想いをそれまでは例が無かったハイエンドAVアンプの企画として爆発させる。
「初代AX10の開発には、3年もの時間をかけました。また、当初からコストよりも品質と機能を重視しようと考えていました。最終的には42万円という価格で市販されましたが、それまでは、そこまでの高価格製品は市場として存在していたとはいえませんでした。したがって、自社のラインナップはもちろん、他社との比較でも、圧倒的な存在感と性能がなければ市場を創造することはできません。すべてのライバルを圧倒する“チカラ”を求め、商品の企画も、そしてオーディオエンジニアも、作りうる最高のものを目指したんです」と小野寺氏。
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