Blu-ray Discの現在地、進歩するプレーヤー:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
これまではレコーダーとパッケージの充実のみが先行していた感もあるBlu-ray Discだが、各社よりプレーヤーが多く投入されているほか、東芝が参入を検討するなど、新たな動きが見える。麻倉氏がBDの“現在地”と、充実するBDプレーヤーについて解説する。
現行BDプレーヤーの課題、秋モデルのトレンド予想
麻倉氏: これはプレーヤーという製品全体についてですが、リモコンを含めた「使いやすさ」の改良はまだ必要です。再生に特化した製品である以上、多機能製品であるレコーダーより使いやすく、圧倒的なまでに操作が簡便であることが求められます。
ですが、ボタン数を含めたリモコンの使い勝手に疑問を感じる製品もありますし、本体だけで操作できるのもプレーヤーの良さのはずですが、“本体液晶に経過時間は表示されるが、チャプターは確認しにくい”など、作り込みに甘さがみられる製品もあります。そのあたりは改善を進めて欲しいところです。
冬商戦に投入される、秋モデルの設計もそろそろ最終段階に入る時期です。基本的にはHDMI 1.4への対応を視野に入れているはずですが、現行バージョン(1.3a)の枠内でもいろいろなことができるのは既存モデルでも実証されています。それに、高画質化も進むはずで、CREASのような総合的な画質対策ももちろん、SBMのような要素技術も進歩するでしょう。画質についてはまだまだ進化すると思います。
秋モデルではパナソニックに期待したいですね。現在は「DMP-BD60」を販売していますが、米国市場の製品をそのまま持ち込んだという感が強く、情けないです。ちゃんとしたBDプレーヤーを出していない、BD大手というのは問題です。DVDの時代には「DVD-H2000」と言う素晴らしいプレーヤーを発売していたこともありますし、ソニーとならぶBDの盟主なのですから、揺るぎない自信とも表現できる映像と音声を再生する、BDプレーヤーを投入するのは責務でしょう。実は、用意はしているようで、後は市場の声が欲しいそうです。ユーザーとしては、ぜひ大声でパナソニックに投入を要請することにしましょう。
各社製品を眺めてみても、現在は価格帯的に高級機と普及機に製品が偏っているので、そのすき間を埋める製品の登場も期待できます。プレーヤーと組み合わせることの多いAVアンプは20〜30万円の製品が充実していますから、それらとの組み合わせに適した、10〜30万円クラスの製品が登場するでしょう。
ただ、プレーヤーは米国市場ほどの規模にはならず、日本市場でのマジョリティはやはりレコーダーだと思います。プレーヤーにはプレーヤーの良さがあることは確かですが、大衆的にはやはりBDレコーダーでしょう。レコーダーはBD機器のメイン、プレーヤーは低価格ゾーンや趣味性の高いひとへの製品として、住み分けが進むことになると思います。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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