デジカメの“非”高画素化は定着するのか:コラム
「デジカメの新機種はより高画素」そんな流れを覆すコンパクトデジタルカメラが登場し始めている。あえて高画素化を図らなかった製品たちがどのように受けいられるか、注目だ。
8月も終わりに近づき、ほぼ各社のコンパクトデジタルカメラの秋モデルが出そろったようだ。
画素数アップから始まり、レンズ倍率の向上、手/被写体ブレ補正、顔/シーン認識の実装と高機能化を進め、ハイビジョン動画の撮影までも可能な機種が登場するに至ったコンパクトデジカメだが、最近では機能面アップによる差別化が難しくなった。また、携帯電話のカメラ機能の向上や、デジカメそのものが広く普及して1人1台が当たり前となったこともあり、市場全体としては苦戦を強いられる状態となっている。
そんな状況下で発表された今シーズンの各社コンパクトデジカメだが、一部の主に高画質を指向する製品には共通するキーワードが見て取れる。それが“非”高画素化だ。
代表的な製品としては、シリーズ前機種の有効1470万画素から有効1100万画素へと改めたキヤノン「PowerShot G11」や、前機種の有効1001万画素から有効1000画素へとほぼ据え置かれたリコー「GR DIGITAL III」などが挙げられる。
また、スタンダードモデルでも有効1200万画素ないし1400万画素の撮像素子を備える製品が複数登場している中で、最新モデルながら画素数は既存モデルと変わらない有効1020万画素のソニー「DSC-WX1」「DSC-TX1」、有効1000万画素のキヤノン「PowerShot S90」もこうした“非高画素化”の製品といっていいだろう。
一般的にコンパクトデジタルカメラはあまりサイズの大きな撮像素子を搭載できず、高画素化を進めると、1画像あたりの縦横解像度を増すことができる半面、1画素あたりの受光面積が小さくなってしまうというデメリットも抱える。
これまではどうしても「高画素=高画質」のアピールが行われがちだったためか、各社ともに「新機種で画素数が下がる(あるいは変わらない)」という製品を投入することにためらいがあったようだ。実際、あるカメラメーカーが行ったユーザー調査では、「カメラ選択時に重視する項目」の1位は「画素数」だったそうで、そうした状況下で「画素数ダウンの新製品」を出すことが英断であることは想像に難くない。しかし、最新製品であることを最も体感できる「さらなる高画質」の提供を目指すため、画素数神話ともいえる領域に足を踏み入れてきたといえる。
「画素数向上」のくびきから解放された各製品が、「高画質」のためにとったアプローチはさまざまだ。キヤノン「PowerShot G11」は前機種に比べて1画素あたりの受光面積を45%アップさせ、同時に「最新技術」(同社)を盛り込むことで、S/N比も大幅に向上させた。リコー「GR DIGITAL III」は微細化プロセスと集光技術の向上により前モデル比約2倍の感度を実現し、アナログ部の改良も進めることで、高感度時に発生する色つき現象を抑制している。
ソニー「DSC-WX1」と「DSC-TX1」は撮像素子に、“感度2倍/暗所ノイズ半減”をうたう裏面照射型CMOSセンサー“Exmor R”を搭載した。この撮像素子は、通常、表側(配線側)にある受光面を裏面へと変更し、同時に専用フォトダイオードとオンチップレンズを新開発することで高感度/低ノイズを実現している。同センサーのデジカメへの搭載は本製品が初めてであり、“非高画素化”の影響の受けているとは言い切れないが、画素数を有効1020万画素としているところに、高画素だけを追求しない姿勢が伺える(実際、既存モデル「DSC-W220」などは1210万画素CCDを搭載しており、画素数だけを比較すれば新製品ではスペックダウンとなっている)
「画素数としては1000万画素で十分。いかにダイナミックレンジを広げるか、いかに高感度化を進めるか――それこそが高画質化とわたしは信じています」
GR DIGITAL III発表会の席上にて、リコーの湯浅一弘氏(パーソナルマルチメディアカンパニー プレジデント)は高画素=高画質のだけの競争はもう終わったと思わせる発言を行っている。分かりやすい指標としての画素数表記は今後も継続されるだろうが、芽吹き始めた“非高画素”コンパクトデジカメ群がヒットするかどうか、注目だ。
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