シャープの「LED AQUOS」に注目する理由(2):本田雅一のTV Style
シャープの“LED AQUOS”には、機能面でも注目すべき点がある。それが「好画質(こうがしつ)センサー」。いわゆる自動画質調整機能の一種で、周囲の明るさや色温度を知った上で映像のバランスを整えてくれる。
前回のコラムでシャープの“LED AQUOS”「LX1シリーズ」が、以前に比べてずっと画質が良くなったと書いた。ポイントは新型パネルUV2Aのコントラスト向上とギラつき減少、視野角改善などで、絵作りのテクニックというよりも、新型液晶パネルを使ったことによる地力の向上が良い結果を引き出している。
しかし、LXシリーズは機能面でも注目すべき点がある。それが「好画質(こうがしつ)センサー」だ。
好画質センサーは、いわゆる自動画質調整機能の一種だ。現在のテレビにはさまざまな機能が搭載されているので、どの機能がどんな働きをするのか、他社比較も含めるととても複雑なのだが、東芝における「おまかせドンピシャ高画質」や日立の「インテリジェントオート」に相当するのが好画質センサーである。シャープの液晶テレビには、ほかにも「高画質アクティブコンディショナー」という、画質を自動調整してくれそうな名称の機能もあるが、これは画質自動調整ではなく、自動的に効き具合を調整する機能を持った適応型ノイズリダクション機能だ。
では、好画質センサーとはどんな機能? とWebページを見ても、あまり詳しい情報は出てこない。LXシリーズのWebページには「テレビの周りの明るさや色あいを検知するだけでなく、あらかじめ設定した自分の好みの映像を反映した画質に自動調整します」と書かれているだけで、よく分からない。
LXシリーズでは、単純な明るさセンサーではなく、周辺光のRGBバランスを検知できる色温度センサーを内蔵している。これはこの春に日立製作所の「Woooシリーズ」が採用したものと同様だ。Woooシリーズも周囲の色温度を知った上で、テレビの色温度を最適にするというアプローチを採っていたが、LX1でのアプローチも基本は同じ。
明るさと色温度を同時に得た上で、ユーザーに見せる映像の色温度バランス、バックライトの明るさ、それに色濃度などを微調整する。色の濃度を調整するのは、周囲が明るい場合にアンチグレア(もっとも、LX1は半光沢ぐらいでかなり光沢に近い)処理の関係でコントラストや色純度が落ちるため、それを補正する意味があるのだろう。
開発エンジニアによると、フィルムソースの映像ならば映画モード、通常のビデオ画像ならばスタンダードモードに近い画質を、どんな色温度、明るさの環境でも安定して楽しんでもらおうという意図で開発したという。実際にやっていることは異なるが、アプローチはWoooが搭載する自動画質調整に近い。
もちろん、液晶パネルが再現できる輝度の範囲はコントラストには限界があるので、どんな場合にも同じように見えるわけではないし、センサーに入射する光の加減によっても振る舞いが変化する、従来からの自動画質調整機能が持っている弱点はLX1でも同じだ。とはいえ、なかなか追従性は悪くない。明るめの部屋でやや色が濃くなりすぎたり、暗めの部屋でバックライトが明るくなるのが早いかな? といった感想は持ったが、個人差もある。重要なことは大まかでもいいから、その環境に合わせようとテレビ自身が動くことだ。
あくまで初心者向けと思うかもしれないが、真っ暗に近い場所で映画を観ると、手動で映画モードに合わせたのとあまり変わらない画質になる。マニアも、マニアではない人も、単純に便利な機能として使いこなすといい。
さらに「好画質」と歌われているのは、この自動画質調整機能をカスタマイズすることができるからである。ホームメニューを出して「お好み画質・音質設定」を選ぶと、画質をさらに柔らかめにしたり、クッキリさせたりと自動調整しようとするターゲットの画質をシフトさせることができる。この機能とセンサー感度の微調整を組み合わせれば、マニアックに自動画質調整機能を使いこなすこともできる。
「いや、私はそんなに詳しいわけじゃないから……」という方にも、実は簡単に調整はできる。お好み画質設定を選ぶと、スポーツ、ビデオ、フィルムという3つのジャンルについて、それぞれどんな画質が好きか、事例が表示されながら選択するようになっているので、リモコンで好みを指示すればいい。各タイプの映像ごとに好みを憶えてくれる。さらに細かな調整を行いたい人は、「プロ設定」を用いることで詳細に画質調整パラメーターを変更することもできるので挑戦してみるのもいいかもしれない。
これまでの自動画質調整機能は、カスタマイズの範囲がかなり限られており、一部メーカーの製品は全く画質調整を行えなかった。シャープの手法は、まだ煩雑で分かりにくい面も残っているが、自由度と簡便さをうまく融合させようという努力のあとが見える。
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