有機ELにHDR、中国メーカーの躍進、そしてテレビ向けOSの行方――「2015 CES」を象徴する4つのトピック:2015 CES(4/4 ページ)
4K対応が一段落し、8KやHDRといったさらなる高画質競争へと移りつつあるテレビメーカー各社。今年のCESを俯瞰(ふかん)してみると、いくつかのトレンドが見えてきた。
Android TV、webOS、Firefox OS、Tizen――テレビ用OSの行方
一部で注目を集めていたのが「モバイルOSのテレビ進出」だ。モバイルOSとは、スマートフォンやタブレットのような“スマートデバイス”で主に利用されているAndroidのようなOSのことで、これらOSがTVプラットフォームへと移植され、メニューやコンテンツの制御に利用されるようになってきている。この傾向は昨年LGから発表された「webOSテレビ」で顕著になり、さらにGoogleの「Android TV」発表やパナソニックの発表を受けて、今年2015年のCESで出そろう形となった。
なぜテレビが独自のプラットフォームを捨て、これらモバイルOSの採用を進めたのかは、「技術開発のスピードアップ」と「周辺事情」の2つの側面があると思われる。各メーカーがOSも含めてテレビ向けに独自のプラットフォームを開発し続けるのはコスト的にも時間的にも負担が大きく、特に日進月歩で進化するインターネット系の技術をつねにキャッチアップしていくのは難しい。Android TVが典型だが、ユーザーインタフェースのカスタマイズに厳しい一方で、テレビ画質に関する処理エンジンや専用プロセッサの利用は許容するといった具合に、自社が強みとする画像処理はそのままに新技術を取り込むことが容易なため、「プラットフォームを共通化してもコストを削減しつつ一定の差別化は行える」という目算が働いたのだろう。ソニーのように全面採用のケースもあれば、シャープのようにハイエンド中心といった具合に、メーカーにより方針はさまざまだが、大枠では「年々厳しくなるビジネス事情に対処するため」だと考えられる。
モバイルOSを採用するメリットはソフトウェア開発のコスト削減や開発期間短縮以外にもある。例えばスマートデバイスですでにこなれたOSを採用することで、Webブラウザによるネットへのアクセスや通信機能での周辺デバイスとの連携が容易になり、さらにアプリやサービス開発環境が整備されているメリットが考えられる。またFirefox OSテレビが典型だが、基本的なメニューやサービスはHTMLベースで記述されており、非常にシンプルでカスタマイズが容易だ。また、ハードウェア的にはスマートフォンで採用されているARMプロセッサなどの汎用部品をそのままテレビに搭載するだけなので、部品コスト的にも(量販店で500ドル以下で廉売されているような製品でなければ)大きなデメリットにはならない。ソニーはAndroid TV製品の開発にあたり、プロセッサ供給に台湾MediaTekとの提携を発表している。
今回、「どのモバイルOSがテレビ業界で勝利するのか」といった話題が一部マスコミで盛り上がったようだが、重要なポイントはそこではない。スマートフォンの世界ではシェアの拡大はアプリ利用やプラットフォーム選択のうえで重要な指標となるが、テレビの世界ではサードバーティーが寄り集まってプラットフォームを盛り上げていくのではなく、テレビそのものの機能や使い勝手がより重要。OSはあくまで裏方と目されている。そのため、各社ともモバイルOSを搭載したテレビでは専用コントローラやメニューの遷移、スマートデバイスとの連携に説明を割いており、OSの名称そのものよりもむしろ、テレビ自体の使い勝手をアピールしていた。
ユーザーインタフェースやレスポンスの良さでテレビの使い勝手が大幅に変化するのは、昨年最初のwebOS TVを実際に触れて実感しているので、これは納得の方向性だ。実際、展示ブースでOS名を大々的に出していたのはLGの「webOS」くらいで、ソニーとシャープではAndroid TVの表記は小さく、パナソニックでもコンテンツ関連のコーナーで「Firefox OS」の表記がかろうじて発見できるくらいだ。サムスンにいたっては「Tizen」という表記そのものがなく、各社ともにOSのブランドを重視していないことが分かる。各社がばらばらのモバイルOSプラットフォームを採用したのは、政治的な事情が大きいと思われるが、OSの継続開発が行える限り、“Android TVがテレビ業界を制す”ようなことは当面発生しないだろう。
CES開催直前にサムスンのテレビ製品で「PlayStation Now」アプリの提供が行われることが発表されている。PlayStationなしでも、このようにゲームタイトルがストリーミング配信で遊べる
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