この秋、注目の2アイテム――ヤマハ「CX-A5100」とソニー「CAS-1」を聴く:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(3/3 ページ)
今回は、この秋に登場した2つの新製品をご紹介。ヤマハのAVプリアンプ「CX-A5100」と、ソニー入魂のデスクトップオーディオシステム「CAS-1」を取り上げる。
デスクトップ・オーディオの大注目作、ソニー「CAS-1」
ヤマハ「CX-A5100」が本格ホームシアターのための超オススメ最新AVギアだとすれば、ソニーから発表されたばかりの「CAS-1」は、お一人様専用デスクトップ・オーディオシステムの大注目作といっていいだろう。
ハイレゾ音源(192kHz/24bitまでのPCMと2.8MHz DSDに対応)をスピーカーでもヘッドフォンでも楽しめるカジュアルなコンパクト・オーディオシステムというのが本機の企画コンセプトで、システム価格8万円とは思えない本格サウンドを聴かせてくれ、筆者は少なからず驚いた。
本機は辞書サイズを意識したというヘッドユニットとステレオ・スピーカーの組合せで構成される。ヘッドユニットの入力はUSB A/B とBluetoothのみという潔い割り切り。しっかりと結線できる大型スピーカー端子が背面に、ヘッドフォン端子が前面に装備されている。
スピーカー駆動用とヘッドフォン用をそれぞれ独立させたデュアルアンプ構成が採られており、スピーカー駆動用アンプにはソニーが十年以上培ってきたフルデジタル構成の「S-Master HX」が採用されている。興味深いのはボリュームの考え方で、ドライブアンプの電源電圧を可変することで音量調整を行い、デジタルアンプで問題視されることの多い小音量時のビット落ちによる音質劣化を防いでいる。
本機の仕上げは2種類ある。1つはヘッドユニット、スピーカーともにホワイト仕上げ、もう1つがヘッドユニットがブラック、スピーカーが木目タイプというもの。このスピーカーも販売価格を考えるとちょっと信じられない贅沢な仕様で、木目タイプは胴板が9ミリ厚のバーチ合板で、ウォールナットのツキ板仕上げだ(バッフルは12ミリ厚のMDF)。ユニット構成は62ミリコーン型ウーファーと14ミリソフトドームツィーターの2Way。バスレフポートは底面前方向に設けられ、ダクトで生じがちな風切り音やノイズを抑えるために大型のフレアー型にデザインされている。
また、本システムには5ミリの鉄製スピーカーベースと真鍮(しんちゅう)製スパイクが付属しているが、真鍮製スパイクは2種類あり、8度の仰角が付けられるタイプも付属している。デスクトップ使用時にチェアーに座ったリスナーに音軸を向けるためだろう。こういうきめ細かな仕様に、低価格製品ながらHi-Fiオーディオの勘どころをつかんだ精鋭部隊によって開発された製品であることが読み取れる。
本システムをデスクの上に置き、PCとUSB接続してハイレゾファイルをいくつか聴いてみたが、驚かされたのはその音場表現能力の豊かさだった。ワンポイント・ステレオ録音のクラシック作品を聴いてみると、L/Rスピーカーの間に扇形に配置されたオーケストラがくっきりと浮かび上がり、まるで自分がガリバーになって、ミニチュアの楽団員たちを見下ろしているかのようなイメージが得られるのである。
また女性ボーカルを聴いてみると、センターにぽっかりと浮かび上がる声がL/Rスピーカーを結んだ線のやや後方に定位することが分かる。音場が奥へ奥へと展開されるこの個性はとても興味深い。ベテランのオーディオマニアの方にしか通用しない表現かもしれないが、往年のBBCモニター「LS3/5A」に共通する資質を持っているように思える。これでもう少しボーカルの滑らかさと艶やかさが表現できるようになれば申し分ないのだが……。また、このような見事なステレオイメージを得るためには、スピーカーを少し前に出し、机後方にスペースを与えることが重要なポイントになる。
スピーカーのないところから音が聞こえ、眼前に生々しいサウンドステージが出現するステレオ・マジック。その面白さをまずは本システムで実感していただき、多くの音楽ファンに広くて深いオーディオの森に足を踏み入れてほしいと思う。
そうそう、書き忘れるところだったが、同社製高級ヘッドフォン「MDR-Z7」を本機のヘッドフォン端子につないで聴いた音もたいへんすばらしかった。スピーカーリスニング以上に中低域が充実した、なめらかでスムーズなサウンドが楽しめ、このエネルギーバランスならば、どんな音楽を聴いても違和感を抱くことはないだろうと実感した。
時宜を得た商品企画が光る「CAS-1」。秋の夜長に1人じっくりと音楽に向き合いたいという方にお勧めしたい逸品だ。
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