「発想はベンチャー、やることは大企業」――ソニーが作ったイノベーションの芽を育てる仕組み(2/2 ページ)
最近、ソニー製品がなんだか面白そう。そんな風に感じたことはないだろうか。今までにない製品を次々と送り出す「Seed Acceleration Program」の仕組みについて、同社新規事業創出部の小田島伸至担当部長に話を聞いた。
今までになかった、でも“ソニーの技術”が詰まっている
「wena wrist」は、バンド部に非接触ICカードで知られる「FeliCa」のほか、スマートフォンと連携する通知機能、活動量計のログ機能を搭載している。注目は、バンドという可動する場所に細かい部品を分散配置し、しかもアンテナとしても活用しつつ、バンドとしての機能を阻害せず、IPX5/IPX7準拠の防水機能まで実現していることだ。もちろん、アイデアだけでは実現できない。
「アンテナは『Xperia』で培った技術を活用しました。また、バンドという小さな場所にたくさんの回路を入れるのはソニーが得意とする部分です」と小田島氏。一見アナログ時計なのに、中にはソニーの先端技術が詰め込まれていた。
「wena wrist」の構造イメージ。一番大きなピースに基板やバイブ、アンテナなど基幹部品を、別の2つのピースにバッテリーを搭載している。また時計の部分はシチズン時計と協業するなど、「餅は餅屋」の考え方も併せ持っている
いつでもどこでも気分に合わせて香りを楽しめる「AROMASTIC」(アロマスティック)。揮発性の香りを閉じ込めるため、カートリッジは光造形技術を駆使して開発した。現在も開発中で、カートリッジのレパートリーも増やしていくという
「小回りの効く組織のほうが、新しい製品は作りやすい。でも、お客さんは信頼性の高い“しっかりしたもの”が欲しい。だから大企業の持つ技術や経験を元に、製品のクオリティーを上げていきます。『発想は小さい企業、やることは大企業』です」(小田島氏)
かつて「ウォークマン」などのAV機器で世界を席巻したソニーもヒット商品に恵まれない時期を経験し、縦割り組織が新しい挑戦を阻む“大企業病”の典型例として語られることもある。しかし、中ではそれを打破する試みが着々と進んでいた。
オーディションという形で若い技術者たちのアイデアを受け止め、ユーザーを巻き込みながら製品を磨く。一方では古参技術者の経験とノウハウを取り込み、製品のクオリティを上げていく。小田島氏は、大企業における新規事業創出の新しいビジネスモデルを作り上げたようだ。
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