エプソン「EH-TW8300W」で分かったHDRコンテンツとスクリーンの相性:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)
HDR対応の4Kプロジェクターが各社から登場している。高価な製品が多い中、筆者が実際の画質とプライスタグを見て、これなら多くの映画ファンにお勧めできると確信したのが、8月に発売が開始されたエプソンの「EH-TW8300W」だ。
さて、本機でもっとも注目すべきはHDRコンテンツに対するきめ細かな対応だ。Ultra HD Blu-rayで採用された「HDR10」では、人間の視覚特性に合致させたPQカーブという明るさの入出力トーンカーブが採用されているが、その明るさは絶対輝度として扱われる。つまり、HDR10規格の最大輝度として規定されている1万nits(カンデラ/平方メートル)で制作されたHDRコンテンツを1000nitsを最大輝度とするディスプレイで観た場合、明るさは十分だとしてもハイライトの多くは飛んでしまうことになる。1000nits以上の階調情報は表現できないからだ。
プロジェクターで1000nitsの明るさをゲイン1の100インチスクリーンに投写して得ようとした場合、およそ 1万ルーメンの明るさが必要といわれており、2500 ルーメンという明るさを実現した本機でも、同条件でHDRコンテンツを映し出した場合、250nits相当の明るさとなり、1万nitsで制作されたHDRコンテンツを再生した場合、十分な明るさが取れないうえにハイライトがサチってしまうという悲惨な画質になってしまう。
もっともHDR映画コンテンツの制作に用いられることの多い有機ELマスターモニターの最大輝度は1000nits程度なので、HDR10規格で制作されるほとんどのUHD BD映画作品の輝度レベルは最大1000nits 、フレーム内の平均輝度の最大値は400nitsだという(JVC DLA-X750Rの発表資料より)。
そんな知見に基づいてのことだろう、本機は入力コンテンツの最大輝度を500nits /1000nits /4000nits /1万nitsに想定した4つのHDRモードを用意して、ユーザーが自由に選択できるようにした。デフォルトは1000nits(HDR2モード)。「オート」モードも用意されており、この場合は「SDR」と「HDR2」の切り替えとなる。
HDRで見直されるハイゲインスクリーン
「レヴェナント:蘇えりし者」「エクソダス:神と王」「オブリビオン」など画質のよさで定評のあるUHD BDの映画作品を観てみたが、「HDR2」モードでUHD BDらしい高精細かつハイダイナミックレンジな魅力的な映像が楽しめた。3作品ともにハイライトの階調表現にも瑕疵を感じさせず、明るさの表現にも大きな不満を抱かせなかったのである。
試みに「レヴェナント:蘇えりし者」で500nits想定の「HDR1」モードで観てみたが、「HDR2」以上に明るく力強い映像が楽しめ、いっそう好ましかった。通常は「オート」モードに設定しておき、明るさに不満を感じたときは「HDR1」に切り替えるといった使い方をするといいだろう。4000nits/1万nits想定の「HDR3」「HDR4」の出番は正直いってないと思われる。暗くなりすぎて、HDRらしいハイコントラストな映像の魅力が味わえないからだ。
まあいずれにしても、明るさが十分に取れないプロジェクターでHDRコンテンツを再生するのは難しい。そこで、1つお勧めしたい方法がある。それがハイゲインスクリーンの利用だ。
ハイファイ映像を得るためには、指向特性が良好でクセの少ないゲイン1.0を目指したマット・スクリーンを使うのがベストといわれてきたが、HDRコンテンツ再生を前提にした場合は、よりゲインが取れるスクリーンに投写したほうが好ましい結果が得られるのである。
考えてみればそれは当たり前だろう。本機の2500ルーメンをnits換算で250相当とすれば、例えばゲイン1.4のキクチ/スチュワートのMALIBUに投写した場合、350nitsの明るさが得られることになるのだから。
そんなわけで、ビーズやパール・タイプなどのハイゲイン・スクリーンをもう一度精査し、HDRコンテンツにふさわしいスクリーンを洗い出してみようと筆者は考えている。
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