浮き上がってくる映像にゾクゾク
TH-65EZ1000とTH-55EZ950/TH-65EZ950の3モデルを、スタジオのように遮光を徹底した空間で、主にUltra HD Blu-ray(以下、UHD BD)の映画コンテンツを中心に映画用画質モードで確認したが、完全暗黒から映像がフッとスムーズに浮き上がってくる瞬間に、ゾクゾクするような快感を覚えた。これこそ画素1つ1つの振る舞いを制御でき、種火を必要としない自発光デバイス=有機ELならではの魅力だろう。液晶テレビでは、とてもこうはいかない。
HDR(ハイダイナミックレンジ)仕様のUHD BD「レヴェナント:蘇えりし者」「La La Land」(米国盤)の夜闇に沈むシーンを見たが、さすがに暗部階調の表現は秀逸だった。
前者の焚き火を前に2人の男がしゃべるシーンや後者のジャズ・クラブの照明が徐々に落ちていくシーンは、階段状のバンディングノイズが目立ちやすいのだが、先述した「暗部階調スムーサー」が的確にはたらいているのだろう、3モデルともにノイズやガタつきがまったく気にならない。
ピーク輝度の伸び、ハイライトの階調表現も見事だ。「レヴェナント:蘇えりし者」の朝焼けのシーンの雲のグラデーションの表現は非常に滑らかで、さすがパナソニックの最高級テレビと思わせる精妙な階調表現なのである。
映像調整機能を精査してみると、24fpsの映画コンテンツのフレーム間に黒画面を挿入できる機能を発見したが、APL(平均輝度レベル)の低い場面でこの機能を動かすと、映像のキレが増し、より解像感が上がった印象となった。これは暗室環境で観たいというマニアにはぜひお試しいただきたいテクニックだ。
まあいすれにしても、この3モデルは当代家庭用大画面テレビの最高峰に位置する高画質モデルであることは間違いないだろう。満を持しての日本市場デビューにふさわしい仕上がりだ。
さて気になるEZ1000とEZ950の画質差だが、短時間のチェックではそのクオリティーに大きな違いはないという印象だった。確かに表面ブラックフィルターの有り無しで漆黒の艶に微妙な違いが出るのは間違いないが、EZ950だけを見ていれば、黒の質感表現に不満を覚えることはないと思う。
EZ1000は、先述のように1台1台ガンマカーブの調整ポイントを増やしてその精度を向上させているので、その性能にいっそう安心感を抱くことができる。その安心が得られるのなら10万円余計に出してもいいという方もいらっしゃるに違いない。
また、音質については大きな差異がある。テクニクス技術陣がチューニングに参画したというだけあって、EZ1000のサウンドはワイドレンジで力強く、声の質感もとても良い。
しかし、画面下にステレオ・スピーカーがサウンドバーのように横置き配置されているので、音が下から出てくる違和感が非常に大きいのも事実。画面からうーんと離れればその違和感は薄らぐが、そんなに離れて観るのなら高解像度4Kテレビを買った甲斐がないわけで……。
画面に映し出された人物が、ほんとうにしゃべっている、歌っているという実感が得られるかどうかがAVにおいてもっとも重要と考える筆者は、映像と音像位置が合致しないサウンドバー・タイプを認める気にはならない。欧米では受けないそうだが、やはりこの本格スピーカーは、画面両サイドに配置すべきだと思う。
EZ950の音は、EZ1000に比べると確かにショボいが、スピーカーユニットが下向き配置されているだけに定位があいまいで、EZ1000よりも画面下から音が聞こえてくる違和感は少ない。テレビのニュースやバラエティ番組を観る分には十分使えるクオリティーだといっていいだろう。
そう考えると、EZ950を買って、EZ1000との価格差10万円でテレビの両脇に置く質のよい小型スピーカーを購入するというのもうまいやり方ではないかと思う。繰り返し述べるが、EZ1000とEZ950の画質に決定的な差異はないわけだから。
また65V型と55V型の違いだが、個人的経験を踏まえていわせてもらえば、無理をしてでも65V型を選ぶことをお勧めしたい。部屋に置いた当初は「でかっ!」と思うかもしれないが、ほんの1〜2時間でその違和感はなくなるはず。
そして、UHD BDやNetflixのような良質な4K/HDRコンテンツを65V型の大画面で見る楽しさといったら、もう……である。はっきりいって、低コントラストで暗く、2K解像度が主流の近所のシネコンに出かけるよりも、断然晴々とした気分で映画が楽しめることを太鼓判を押して保証します。
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