SBIホールディングスは4月27日、2007年3月期の決算説明を実施した。市場環境の悪化からSBIイー・トレード証券や商品先物取引のSBIフューチャーズが苦戦するなか、4期連続の増収増益を確保。また子会社株式の減損を実施したものの、3期連続で経常最高益となった。
経常利益は対前年同期比76.6%増の906億9600万円、当期純利益は同1.2%増やした(2006年3月期の当期純利益は、みなし売却益253億6700万円が含む)。
ファンドの連結については会計方針を中間期から変更、3月期は計12ファンドを連結処理し、今期からは全てを連結にする。こうした新会計処理に対し北尾吉孝CEOは「経常利益には反映されなくなり、当期純利益にのみ反映される」と不満を漏らすとともに、変更を指示した金融庁も批判した。またライブドアの粉飾決算を受けて、会計方針を指導されたことについても、不満の声が漏れた。
ファンドを通じて企業に投資をするアセットマネジメント事業については、前年同期比2.8倍の営業増益を達成した。この結果、ベンチャーキャピタルの大手JAFCOよりも、売上と営業利益において上回った。「長い間、JAFCOがナンバーワンだったが、私どもがナンバーワンと言えるのではないか」と述べた。
大きなITファンドは6月に終了し、成功報酬などは現時点で45億円と181億円を見込んでいる。来年の6月までに償還するため、株価の動向を見ながら清算していく予定だ。今後は新興市場に依存せず、海外企業への投資を拡大していく考えを示した。
海外企業との提携を進めるため、シンガポールに拠点を設立する予定だ。これまでITとバイオを中心に投資してきたが、海外投資先としてBRICsやベトナムなどを予定し、5年後には事業全体の半分の収益を目指す。「投資効率を考えると、日本よりもアジアに魅力を感じている」と語った。
証券事業に関してはSBIイー・トレード証券の純営業収益が対前年同期比で−5.4%、経常利益は同−18.3%だった。手数料収入が20%以上減少したため、収益の悪化に影響した。ただ、他のネット証券と比べると減少率は低く、売買代金のシェアは過去最高の36.3%を記録。この高いシェアを受けて「ネットの世界では、整理統合されていくと思うが、ほぼ決着がついた」と自信をのぞかせていた。
証券業界において、口座数は4位、預り資産残高は7位となっている。業績面でもトップ10以内に位置しており「創業してから、ここまで育てることが大変だった。大手の一角になることは、難しいことではない」と意欲を示した。
SBIイー・トレード証券とSBI証券は10月1日に合併することを発表した。会見の席でイ・トレードの井土太良社長は「(合併によって)大幅なコスト削減を実現する」と話した。さらに「投資信託の販売がまだまだ。ネットの限界を感じている。SBI証券の対面営業で伸ばしてほしい」と期待を寄せた。
今回の合併について北尾CEOは、証券業のビジネスモデルついて語った。ネット証券の長所である低コストや集客力を基本にして、対面営業力を強みとする従来型の証券を通じ、高度なサービスが提供できるという。その反対の例として、野村證券の例を挙げた。野村グループのジョインベスト証券はシステム投資に費用がかかり、手数料競争によって収益を高めることが難しい。そのため「野村證券からの増資などに頼らざるを得ない」とし「このビジネスモデルはうまくいかない」と指摘した。
SBIホールディングスは多方面の事業を展開しているが、その多くが「道半ば」といった面がある。イー・トレード証券についてはネット証券界でトップの位置を占めているが、SBI証券との合併は成功するのか。
ジャパンネクスト証券によるPTS(私設取引システム)の共同運営、投資信託の手数料と信託報酬を還元するSBIファンドバンクを設立する。さらにネット銀行やネット生保、ネット損保の新設も予定している。これらがスタートすることで「金融生態系の完成」としているが、完成後の収益体質はどうなるのか。まだまだ未知数な点が残っている。
今期も増収増益と業績は拡大したが、ライブドア事件以降は株価の低調が続いている。投資価値を判断するPER(株価収益率)も割安感を示しており、市場判断では「様子見」といったところか。ただ今年度から、多くの事業が新たにスタートするため、業績に連動した株価の動きが見られるかもしれない。
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