「自分の名前で仕事する」ために本当に必要なこと──iPR奥川さん達人の仕事術(1/2 ページ)

» 2007年05月18日 07時31分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 会社の名前で仕事をするのではなく、自分の名前で仕事をする──。ビジネスパーソンならば、一度は聞いたことのある言葉だ。しかし、これを“意識”するだけではなく、“実践”している方はどのくらいいるだろうか。

 個人で広報代理業を営むiPRの奥川浩彦さんは、工夫を積み重ねながら“自分の名前で仕事をすること”を実践してきた。

 今でこそ独立を果たしているが、大手計測器メーカーから大手PC周辺機器メーカーを経て、2001年の春には知人と「イーレッツ」という会社を起業してきたという経歴を持つ。そんな奥川さんが、メールやケータイが必須のビジネスツールになり始めた1995年頃から心がけていたことがある。

 「基本的には会社に依存しない。独立することを想定していたわけではないが……」

 会社員時代から、会社からケータイを持たされてはいたが、相手の携帯にかけるときは自分の携帯を使っていた。理由は、相手が自分に連絡を取り続けられる唯一の手段がケータイだから。もちろん通話料は自分持ち。コストはかかるが「自分のための必要経費だと思っている」と、笑う。

 独立だけでなく転職をするだけでも、メールアドレスや電話番号は変わってしまう。「人のご縁は自分の資産」と考えて仕事をしてきた奥川さんにとっては、会社ではなく自分に紐づいた電話番号で、相手とやりとりすることを意識し続けてきた。

 年賀状も、敢えて会社のものではなく、個人の年賀状を出してきた。会社としてのつきあいではなく、個人としてのやりとりをしてきた奥川さん。そのポリシーはこうだ。

 「個人とつきあう。それが大事なスタンス」

 会社員時代から、“個人として仕事をする”ための布石は着々と打ってきた。

“個人の名前”で仕事をするための工夫とは?

 奥川さんが会社員時代から気をつけてきた工夫にはどんなものがあるのだろうか。「会社の名前で仕事をするんじゃなくて、自分の名前で仕事をするなら、名刺にケータイ番号は必須」だと話す。もちろん個人の番号だ。

 会社を相手にしているのか、個人を相手に仕事をしているのかは、電話をかけようと思ったときに、いつ・どこにかけるかに表れる。会社の番号に電話した場合は、本人がいなくても、同じ部署の誰かが対応してくれる。定時を回っていれば相手が帰宅していたとしても仕方がないと思う。それが会社を相手に仕事をしているということだ。

 一方で、個人を相手に仕事をするというのは、本人のケータイに、例え深夜であっても電話をかけられるということだ。逆にいえば、そうした電話を受けられて初めて“自分の名前で仕事をしている”と言えるのかもしれない。

 「会社員時代から、私は24時間いつでも電話OK。雑誌やネット媒体の方なら分かると思いますが、メーカーの広報の人と連絡がつくから記事にする、というのがありますよね。周辺機器メーカーの広報をやっていたときに、某社の編集部から『ビデオカードのドライバがうまく動かない。なんとかならないか。校了は明日』という電話を深夜にもらったとこがあります。急ぎ、開発に連絡してバグを確認して新しいドライバをメールしました。これがなかったらページは差し替えだったでしょうね」

 日本の会社は、個人で仕事をしようとしても実は簡単ではない。「名刺に個人の携帯番号を載せる? とんでもない」。そんな会社のほうが普通だろう。会社員時代、奥川さんも障害を乗り越えてきた。

 ある雑誌のページに、自分のメールアドレスを掲載したことがある。当時担当していた商品の保証外の使い方を紹介するページで、会社は掲載を嫌がったが、何か問題があったら自分が全部サポートすると説得し、問い合わせ先に自分のメールアドレスを掲載した。仕事相手に対して、会社としてではなく個人として対応した例だ。

 例え深夜でもあっても、この人に電話すればなんとかしてくれるかもしれない……。そんな期待に応え続けていくというのが“個人として仕事をする”ことの例なのかもしれない。

メールのレスポンスをどう高めていくか

 ITインフラの発展に伴い、ケータイだけでなくメールでも“個人として仕事をする”方法を整備してきた。メールは普通、会社ではなく個人宛に送られるものだが、即時レスポンスできる体制を整えてきたのだ。

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