ジョインベスト証券でWeb編集室長を務める小川尚志氏は、元マネー雑誌の編集長。野村グループがジョインベスト証券を立ち上げる際に、マネー誌での編集手腕を買われ、創業メンバーに招かれた。
マネー誌の編集長を務めるまで、自分の金融資産には無関心だったという。給与振込は普通預金に貯まっていくだけ。どういった保険に加入しているかも分からない。ましてや株式や投資信託といった投資は、未知の世界だった。だが「人に情報を伝えるという編集の仕事をしている以上、投資の世界を経験しなければならない」というのが小川氏のスタンスだ。
そして株・投信・外貨預金を始めたほか、保険の見直しや住宅ローンを借り換えていった。編集者という「外」と証券会社の「内」、両方の側面から見てきた小川氏にとって、投資とは何だろうか。初心者向けに「投資の方法」を聞いた。
――投資をすることに対し「難しい」「怖い」といった感情をもつ人は、まだまだ多いようです。
「たしかに投資はリスクがあり簡単ではない。ただ、それほど難しくはなく怖いものでもない。まずは1冊の本やWebで『投資ってなに?』といった基本的なことを学んでほしい。『株は紙くずになる。だから怖い』といった漠然としたイメージではなく、正しい知識を学ぶことが大切だ。
まずは投資の世界に入り、自分の皮を“1枚脱げ”ば、『難しい』『怖い』といった考えが変わってくると思う」
――自分の皮を“1枚脱ぐ”ためには、どうすればいいでしょうか?
「投資に関する本を1冊読んだけど、まだまだ理解できない。だから2冊、3冊と読んでいく人がいる。またWebの投資サイトで情報収集ばかりする人も多い。よく『投資について教えてください』と質問されるが、大半の人が勉強するだけで終わり、投資を実行していない。
そうした人は頭でっかちの状態なので、まずは証券会社の口座を開くことから始めてはどうか。ネット証券の口座を開ければ、コンテンツを見ることが出来る。株式市場の見方やヒントなど役立つ情報を楽しむこともできる。そこから投資の世界に1歩入ることもできるだろう。
また投資というものは、“自転車乗り”に例えることもできる。『自転車の乗り方』といった本を何冊読んでも自転車には乗れない。まずはコマ(補助輪)をはずして、ぶつかったり転んだりして多少の痛みを感じながら、いつの間にか乗れるようになっている。投資も同じことだと思う。そういった意味で私の仕事は、“お父さん”の役割だと考えている。自転車に乗れない子供を、後ろで支えて、頃合いを見てこっそり手を離すような感じだ」
――初心者が投資を始めると、どういった点が面白く感じられるのでしょうか?
「例えば任天堂の株を買えば、ニンテンドーDSやWiiの売れ行きが気になる。ソフトの売れ筋や新商品、他社の動向なども注目するでしょう。そうなれば個人投資家としての“株アタマ”ができてくる。“株アタマ”になると、これまでとは違った新しい世界観が広がる。さらに違う銘柄を保有すれば、世界観がどんどん広がっていくので、そこが投資の面白いところだ」
――初めて株を買う際には、不安や迷いがあります。銘柄選びで注意する点は何でしょうか?
「他人が勧める銘柄は、絶対に買わない方がいい。友人から『あの銘柄は上がるから、買った方がいい』と勧められ、慌てて口座を開き購入する人がいる。仮に儲かっても投資の勉強にはならないし、失敗すれば頭では自己責任と分かっていても、気持ちが友人のせいにしてしまう。そこに“株アタマ”の育つ余地はない。もちろん雑誌やWebの情報を参考にするのは大切だが、最終的には自分で決めることが重要だ。
もう1つ、慣れない間は自分が知らない企業は避けた方がいい。株価が『上がった、下がった』という理由を、理解するのが難しいからだ。自分に身近な銘柄を保有すれば分析がしやすく、結果的に“株アタマ”を鍛えることにもつながる」
――「貯蓄から投資へ」と言われていますが、それでも自分のお金は、郵便貯金か銀行の定期預金にしか預けないという人も多いです。
「大阪万博が開かれた1970年の時、はがき代は1枚7円だった。現在の50円を考えると、インフレを実感できると思う。また銀行の定期預金(年0.35%)に預けても、2倍に増やすには約200年かかる。そう考えると、自己資金の何%かを投資に回してもいいのではないか。
『自分は働いて稼ぐから、投資をする必要はない』といった考えの人もいる。その考え方は素晴らしいと思う。ただ、お金にも少し“働いてもらう”のはどうか。どれだけ“働いてもらう”かは、自分の投資スキルと許容できるリスクを考えて決めることが大切だろう。そうすれば、お金に“働いてもうらう”ことで、見えることがきっとあるはずだ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング