日本語学習のきっかけに最適なコンテンツは「ポルノ」?ロサンゼルスMBA留学日記

» 2008年02月12日 18時43分 公開
[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 台湾人の友達が、出し抜けに聞いてくる。

 「日本語で『Almost!』とか『So close!』(あとちょっとだったのに)というときには、『ほしー』って言うんだろ」

 「……? ああ、『惜しい』の間違いだろ。『Oshi-i』と発音するんだ」

 「先日日本人とゴルフに行ったんだ。あとちょっとでパターが入らなかったときに、日本人の友達が『ほしー』って言ったんだ」

 「惜しい、だろ」

 「そのあと日本語のビデオを見ていたら、登場人物が『ほしー』って言うんだ。それで、ああ、あの時の言葉だと思って覚えることに成功したのさ」

 「それってどんなビデオ?」

 「実は、アダルトビデオなんだけど」

 「……! それは『欲しい』だバカ! 『I want it』だ、まったく違う言葉!」

アダルトコンテンツという情報源

 というわけで、いきなり下ネタから入ってしまったが、MBA留学生の中には日本語を理解する学生も存在する(関連記事)。また、日本語に興味を持っていて「これは日本語でどう言うの?」と興味深そうに聞いてくる学生もいる。こうした会話は楽しいものだが、時として“妙な情報源”から日本語を仕入れてくる学生もいる。例えばアダルトコンテンツという情報源だ。

 先日も別の友人が「オレは『ヤメテ!』という日本語を知っている」と得意げにいうので、どこで習ったのかと聞くと「Sora Aoiさん(蒼井そら)がいつもそう言っている」という。……これにはあきれるしかないというか、かなり脱力したのだが、それなりの理由があるのだ。

 実はアジア圏で、日本ほどアダルトビデオが自由に流通している国はない。儒教国家ではアダルトが厳しく取り締まられている場合が多く、中国のようにネットの世界(アダルトに限らず)にまで検閲が入っている国もある。性にオープンなイメージがある米国ですら、地上波放送はアダルトコンテンツが厳しく制限されているし、女性の胸部などが露出しようものならFCC(連邦通信委員会)から厳しく取り締まりを受ける。少し前になるが、ジャネット・ジャクソンがスーパーボウルのハーフタイムショウで胸をはだけるという騒ぎがあった。この問題に対しては、放送側であるCBSが当局から罰金を課されている。

 米国の場合は、放送中に「Fワード(=Fuckin')」を発言しただけでも問題になる。Fワードは性交渉にまつわる言葉とはいえ、若者の間では「ちょー(超)」ぐらいの意味だから、ついうっかり使ってしまうタレントもいる。朝の情報番組である「グッドモーニング・アメリカ」で、女優のダイアン・キートンがうっかり口をすべらせ、“F---ing personality”と発言してしまうという事件もあったが、この場合もたちまちFCCが懲罰を課した。要するにそれだけ規制が厳しいということだ。

ポルノ先進国の日本

 翻って日本では、アダルトコンテンツに対する規制が弱い。コンビニで男性誌が売られていたり、電車の吊り広告で写真週刊誌が刺激的な画像/文言を載せていたりという現状に、驚く外国人も多いようだ。こうした環境では、外国人留学生の旺盛な知識欲が日本のアダルトコンテンツに到達するのも当然かもしれない。

 聞く限りでは、ビデオの“クオリティ”も日本が相当先端を行っているとのこと。アジアの国々では、アダルトビデオに出演する女優の質が低い場合がままあるという。日本のようにAV女優が一種「アイドル」化して、相当の美女がビデオに出てしまう状況というのは、日本人以外には驚くべきことのようだ。気が付けば、日本は相当な「ポルノ先進国」「ポルノ大国」だった、とも言える。

 語学とアダルトの関係をめぐっては、「nakedNEWS」というコンテンツが英語学習に最適であるという主張もあった(関連記事)。nakedNEWSは、ブロンドのお姉さんが洋服を脱ぎながらニュース原稿を読み上げる……というコンテンツだ。運営側いわく「ニュースの場合は映像を見て『こんな会話だろう』と想像して補うことができない。そのため純粋に聞き取りの力が磨かれる」とのこと。真偽のほどは控えるが、とにかく妙なコンテンツをきっかけとして、海外の言語に対する興味が増すというケースは、ひょっとしたらあるのかもしれない。

 会話を続けながら、筆者もなんとなく語学を学ぼうかという気になり、友人に「自分もちょっと台湾の言葉を習ってみようかな」とコメントした。

 するとその友人は、おごそかにこう言ったものだ。

 「残念だったね。台湾には日本ほどハイクオリティのアダルトビデオはないよ!」

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