アメリカン・エキスプレスは“生活の一部”になりたいInterview(1/2 ページ)

» 2008年02月14日 13時06分 公開

 “アメリカン・エキスプレスカード”と聞いて、何をイメージするだろうか。

 クレジットカードの老舗の1つにして、5大国際ブランドの1つ。そして、ダイナースと並んで、“高級そう”“近づきがたい”と感じる人も少なくないだろう。確かにアメリカン・エキスプレスカードは日本で初めてゴールドカードを発行した会社であり、その上には招待制の「プラチナ・カード」がある(※)。一般的なクレジットカードよりも格式があるのは間違いないが、一方で、旅行やショッピング関連の付帯サービスは“出張や旅行、買い物が増えた20〜30代”の一般ユーザーにも役立ちそうだ。

アメリカン・エキスプレスのグリーン(一般)カードと、ゴールドカード。この上に招待制のプラチナカードがある

 アメリカン・エキスプレスカードとは、どのようなカードなのか。また、日本でのビジネスはどのような状況なのか。

 アメリカン・エキスプレス・インターナショナルで個人事業部門マーケティングを担当する中島好美副社長に話を聞いた。

※アメリカン・エキスプレスには、以前から“プラチナの上”の「センチュリオン」と呼ばれるエグゼクティブやセレブ向けのブラックカードが存在すると噂されており、編集部でもそのセンチュリオンの実物を確認した。だが、アメリカン・エキスプレスが日本で公式に認めるラインアップは、「グリーン」「ゴールド」「プラチナ」の3種類のみである。

改正貸金業法が“追い風”になる

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル副社長の中島好美氏

 アメリカン・エキスプレスのプロパーカードに、いわゆる“年会費無料”のカードは存在しない。年会費はエントリー向けのグリーンで1万2600円、ゴールドカードで2万7300円。プラチナカードは招待制なので、年会費は非公開だ。時々、入会キャンペーンとして初年度年会費無料のプログラムはあるものの、全体的に見れば割安感を追わないプレミアム傾向のラインアップになっている。

 一見、割高にも見える年会費は、クレジットカードの会員獲得競争の中で不利なようだが、実情は逆だと中島副社長は話す。特に上限金利の抑制などで、クレジットカード業界のビジネスに大きな影響を与えた「改正貸金業法」は(参照記事)、アメリカン・エキスプレスカードにとって“追い風”になったという。

 なぜ、改正貸金業法が追い風になったのだろうか? 「我々は昔から有料カードとして『プレミアムセグメント』を顧客層にしてきました。(経済的に)生活基盤を確立し、年会費に見合ったサービスに価値を見いだす方々が、アメリカン・エキスプレスカードの会員になっていただいています。年会費無料カードのように、融資(による金利収益)を前提にしたモデルではありませんので、改正貸金業法によりクレジットカード業界が適正化することは、むしろ追い風として受け止められるのです」(中島副社長)

 アメリカン・エキスプレスにもキャッシングサービスはあるが、それはあくまで「ショッピング」や「保険」などと併存する多様なサービスの1つという位置づけだ。さらに同社では、会員に一律の与信枠を設定するのではなく、取引の実績に応じて与信内容が変動するユニークな仕組みを取っている。「会員ひとりひとりのニーズや実績に応じて、適切なサービスを提供する自信がある」(中島副社長)

 さらにアメリカン・エキスプレスにとって強みになるのが、優良顧客をベースにした稼働率の高さだ。

 「細かな数字は申し上げられませんが、(アメリカン・エキスプレスカードの)稼働率は昔から高いですね。我々のカードは年会費1万2600円からですので、利用する意志がはっきりしているお客様が多い。

 さらに、『アメリカン・エキスプレスが生まれて初めて持ったクレジットカードだ』という人は意外と少ないんです。他のカードから乗り換えてくるお客様がほとんどですので、カードの使い方はよく分かってらっしゃいますし、自らの意志で移ってこられるのでメインカードとして使う意志がはっきりしています。他のカードとは、まったく桁違いな稼働率だと思います」(中島副社長)

 他社のクレジットカードからアメリカン・エキスプレスカードに乗り換える人のニーズとして、最も大きいのは複数あるクレジットカードを“1つにまとめたい”というものだという。現在、クレジットカードは有料・無料合わせて多種多様なものが発行されているが、「それらを1枚のプレミアムカードにまとめたい。そう考える人が、アメリカン・エキスプレスカードのお客様には多い」(中島副社長)のだ。

 さらにアメリカン・エキスプレスの強みになるのが平均利用額だ。同社のカードラインアップは、エントリー向けの「グリーン」のほか「ゴールド」「プラチナ」を合わせた3グレードだが、グリーンのユーザーから平均利用額の平均はかなり高い。

 「(平均利用額は)非公表ですが、相対的に見ますと、グリーンとゴールドの差はほとんどありません。どちらのお客様も平均的によくお使いになっていただいています。

 さらにプラチナになりますと、(グリーンやゴールドとは)桁違いの平均利用額になります。これは弊社のプラチナが招待制のみで、カードをよくお使いになるライフスタイルを送られている方を選んでインビテーションしているからです」(中島副社長)

プレミアムだが、“高級なだけ”のカードではない

 アメリカン・エキスプレスの基本戦略は2つある。1つは消費者の“カードをまとめたい”というニーズを掴み、プレミアムカードとして「他社クレジットカードユーザーの取り込む」こと。そして、もう1つが日本で多い「現金の利用をカードに移行させる」ことだ。生活における決済すべてをアメリカン・エキスプレスカードにまとめることで、会員に“安心”“便利”を提供したいという。

 「アメリカン・エキスプレスカードというと、(レストランやホテルなど)高級なところでしか使ってはいけないようなイメージがありましたが、今はスーパーマーケットやコンビニでの利用もできるようになりましたので、我々としては1枚のアメリカン・エキスプレスカードをどこでも使ってほしい。プレミアムカードとしてのサービスやイメージは大切にしていますが、だからといって『高級なところだけ』のカードではないのです」(中島副社長)

 また、都市伝説的な“噂”として、「アメックス(アメリカン・エキスプレスカード)を庶民的なところで使うと、プラチナ以上のインビテーションが届かない」というものがあるが、これは誤解だと中島副社長は話す。

 「プラチナカードのベースは『グリーン』や『ゴールド』ですが、この時にたくさん使っていただくことが重要です。様々な決済をアメリカン・エキスプレスカードにまとめていただき、多くのシーンでお使いいただくことで、お客様との信頼関係が構築されていく。そのような考えを我々は持っています。

 ですから、1回あたりの決済が高額かどうかは、よりプレミアムなカードをお持ちいただく上で、それほど重要じゃないのです。むしろ、フリークエンシー(接触頻度)の方が重要だと考えています。

 例えばですが、1カ月に1度だけ50万円の決済をするお客様と、1回あたりは数千円の決済でも生活全般で(アメリカン・エキスプレスカードを)お使いいただけているお客様がいたとしたら、我々にとって大切なのは後者のお客様です。アメリカン・エキスプレスは、お客様の生活の一部になりたい」(中島副社長)

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