グロービス・マネジメント・スクールで教鞭を執る、小西賢明氏による新連載。マーケティング分野・新規事業分野を中心にプロジェクト支援や企業アドバイザーなどを務めてきた知見を生かし、巷の気になる商品・サービスのマーケティング戦略について、独自の視点で分析する。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年2月26日に掲載されたものです。小西氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
僕はスイーツ全般が大好きだ。とりわけハーゲンダッツのアイスクリームは好物の1つ。帰宅途中のコンビニで新製品を見つけては、思わず購入、深夜にミニカップを開けてしまうファンの1人である。
ハーゲンダッツが身を置くアイスクリーム業界は今、どんな環境にあるのか。
社団法人日本アイスクリーム協会によれば、業界の年間販売金額は2006年度が約3500億円。ただ、この9年間で見ると3%減、ほぼ横ばいの市場である。これに対してハーゲンダッツジャパン(以下、ハーゲンダッツ)の売上高はどうか。先日発表された、「ハーゲンダッツジャパン、2008年度の事業計画を発表」というリリースによると、2007年度実績で438億円。アイスクリーム市場全体の1割を超えるシェアを占め、しかも、この9年間に25%の売上増を実現している。
市場が横ばいの中でも、着実に売上を伸ばし続ける。ハーゲンダッツは商品だけでなく、ビジネスも磨き続けている企業だ。
同社は1961年、米国に生まれた。「Dedicated to Perfection(完璧を目指す)」という哲学を持ち、高品質にトコトンこだわり、ブランドを育んできた。
ニューヨークでハリウッドセレブに愛されて大人気に。その上で日本には1984年に上陸。高感度な街、東京・青山への出店戦略で、高付加価値のイメージを作り上げた。「子供のおやつと考えられていたアイスクリームに都会的な大人のデザートという新しい価値観が誕生した」と同社ホームページは語るが、その言に異論はないだろう。
その後1990年代にアイスクリームの輸入自由化が始まり、日本市場は競争が激化した。しかし、ハーゲンダッツはこれを機会として、日本オリジナル商品の開発に積極的に挑戦し始める。抹茶を代表とする日本オリジナルのフレーバーの開発や、食べきりサイズのミニカップの展開などにより、厳しい競争下でも着実な成長を実現し続けた。
加えて2000年に入ってからは従来のアイスクリームの概念を覆す新たなカテゴリーの開発にも挑戦。「今までになかった新たなコンセプトや形態」として、「クリスピーサンド」や「パルフェ」を商品化している。上品に見えて、常に果敢に競争を仕掛け続ける。話題を欠かさず、着実に結果を出して成長し続ける。それが、ハーゲンダッツなのである。
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