著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・運営、海外駐在を経て、1999年よりビジネスブレイン太田昭和のマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。現在、マーケティング・コンサルタントとしてコンサルティング本部に所属。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
衝動買いには“音”がある。「これが出会いだ!」と“ガ〜ン”と鳴り響く音。「おっとここにあったじゃない!」という“コツン”と突き当たる音。「これ欲しい!」と心がおどり“ツンツン”とスキップする音。フロアで陳列台と自分だけにスポットライトが当たり、周りは“シーン”と静けさに包まれる。そんな“衝動音”を一身に受けとめブツクサつぶやく。買おうか買うまいか。やがてししおどしが“カ〜ン”と鳴り響くように、衝動買いに突き落とされる。
衝動を告げる心の音はさまざまだが、衝動買いはおおよそTPOで整理ができる。
Time:時間帯、曜日、季節、行事など
Place:お出かけ店(ハレ)、近所のお店(ケ)など
Occasion:日常購買、ウインドウショップ、クリアランスなど
衝動買いの多い時間帯イメージは夕刻か夜、平日より休日、冬より春。もちろん何周年記念や自分記念日でもそれは起きる。都心の百貨店でもあるし、近所のお店でもむくむく頭をもたげる。3個100円のお得品をつい手に取ることもあるし、計算しつくされたウインドウの陳列に恋して“落ち着け自分”と心でつぶやくこともある。年に数度のクリアランスは衝動の爆発が許される場だろう。
衝動買いはそこかしこにあるが、衝動買いと言えばオンナの牙城だ。
リサーチ会社のハー・ストーリィがまとめた「女性の衝動買いについて<2008>」によれば、過去半年に衝動買いをした女性は6割にのぼる。
購入品は食品(お菓子やチョコほか)、生活雑貨(食器、サーモマグ、調理器具ほか)、服飾雑貨(靴、バッグ、サンダルほか)、衣服(スカート、ジャケットほか)、化粧品・トイレタリー(日焼け止め、洗顔料ほか)などが主なもの。衝動買いの理由は「かわいい、素敵、一目ぼれ」をキーワードに挙げた人が24%、「ニーズ充足」が17%、「機能・効果への期待」が14%と、“ぐっときた”と“冷静な目線”が交錯している。
注目は「広告・話題・他者評価」が8%に留まること。「使用後の気持ちはどうでしたか?」との質問に対し、「ネタになる」はわずか2%。衝動買いは“踊らされての買う”のではなく、ネタのために買うのでもなく、「心から湧き出てくる衝動に身を任せたの!」というのが主婦の衝動意識である(回答者属性は既婚者86.6%)。
夫が帰宅すると、妻は玄関口でこう告げる。「ねえ今日、あるものを衝動買いしちゃったの!」。夫、一瞬身構え「いったい……何をだい?」。妻、ほほえながら「ふるふるシェイカーのオレンジ味!」
この調査によると衝動買いの平均額は3000円。近頃は夫の小遣いもこぢんまりしているが、主婦の衝動金額もカワイイもの。このくらいの衝動なら、夫もブルブル震えなくて済む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング