なぜ人はストレスを抱え、損ばかりするのだろうか?内藤忍インタビュー(1)(1/3 ページ)

» 2008年08月21日 09時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

内藤忍(ないとう・しのぶ)

1986年東京大学経済学部卒。1991年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。大学卒業後住友信託銀行に入社。その後、留学をはさみ10年にわたって外国債券など運用業務に従事。1997年シュローダー投信投資顧問株式会社に入社。1999年マネックス証券の設立理念に共感し入社。商品開発、資産設計などを担当。2004年個人向け投資商品企画・運営会社であるマネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役就任。現在株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長。著書に『【新版】内藤忍の資産設計塾』(自由国民社)など多数。


 「ここ数年、感謝されることが多くなった」――と話すのはマネックス・ユニバーシティの内藤忍氏。日経平均株価が低迷している状況でも、内藤氏の投資手法を手本にして、確実にリターンを手にする個人投資家が存在している。

 そんな内藤氏とはどのような人物なのだろうか。「投資のスキルは誰にでも身に付けられる」という内藤氏。しかし“誰にでも儲けられる”といった甘い言葉は決して言わない。どちらかというと地味な投資手法で、「大きく資産を殖やすことはできないが、長く投資を続けられる『分散投資』」を勧めているのだ。

 内藤氏自身が信託銀行や投資顧問会社、ネット証券、投資教育会社での経験、さらに個人投資家としての運用経験をまとめた『内藤忍の資産設計塾』。3年で10万部を突破したシリーズは、今なお売れ続けている。その著者である内藤氏は年間50回を超える投資セミナーをこなすなど、個人投資家のファンは多い。

 しかし読者から批判される“時期”もある。「あなたが勧めている分散投資ではダメだ」。こういった批判があるときは必ず、相場環境が好調のとき。つまり儲かりやすい相場なので分散投資の真逆、「集中投資の方がリターンが大きい」という理屈だ。だが日経平均株価が低迷している今、内藤氏が勧める分散投資を批判する人は少ない。

 最初の出版から3年が過ぎ、投資環境は大きく変化した。株価が低迷している今、どのような運用をすれば投資を続けることができるのだろうか。内藤氏に話を聞いた。

マインドセットを学ぶ必要がある

 2006年度の個人株主数(延べ人数)は前年度比120万人増の3928万人、11年連続で過去最高を更新中だ。投資といえば、まず日本株を思い浮かべる人は多いだろう。しかしこの考えが日本株式に偏った運用となり、リスクを取り過ぎるという結果を招いているのかもしれない。

 日経平均株価で見ると1989年12月に史上最高値を付けたが、2003年4月バブル経済崩壊後の最安値とを比べると、実に80%も下落している。また2000年4月ITバブル時の高値と最安値を比べてみても、63%のマイナス。これはあくまで日経平均株価の動きなので、値動きが激しい個別銘柄に投資した場合にはさらにマイナス幅が広がっているかもしれないのだ。「日本株式市場は過去38年間で見ると、年平均10.4%のリターン。しかし個別銘柄だけに投資していると資産の変動が大きいので、損をした状況に耐えられなくなって投資を止める人がいる」と指摘する。

日経平均株価(月末値)の推移

 過去の実績を見ると、インデックス運用(日経平均株価またはTOPIXなどと同じ値動きを目的とする運用)を続けていればリターンを手にする可能性は高い。しかしなぜ多くの個人投資家は、損を出して投資を止めるのだろうか? そこで内藤氏は資産を殖やしていくためには、3つの要素が必要だと分析した。1つは投資理論や運用技術といった「セオリー」、2つめは金融商品を理解する「ナレッジ」、3つめが投資の心構えや精神的な部分をコントロールする「マインドセット」だ。中でも投資を始める前には、まずマインドセットを学ぶ必要があるという。

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