第2話 頑張りすぎて空回り?Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(1/4 ページ)

» 2008年09月03日 04時30分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます。

前回のあらすじ

 加工食品メーカー・アイティフーズでは、CFT(Cross Functional Team、部門を横断してメンバーを集めたチームのこと)を編成して新商品を開発することにした。プロジェクトのリーダーに抜てきされたのは、入社10年目の中村誠、32歳。これまでマネージャー経験のない誠だが、どのようにプロジェクトをかじ取りしていけばいいのか、リーダーとしてなすべきことを手探りし始めた。(登場人物紹介は記事の最終ページにあります)


 プロジェクトキックオフを再来週に控え、着々と準備を進めていたある日、中村誠は廊下で購買部の小栗順に呼び止められた。

小栗 中村! 今度の社内プロジェクトって、お前がリーダーなんだってな。

 うん、そうだけど。でもどこで聞いたの?

小栗 もしかしてお前、まだイントラネットの人事掲示板を見てないのか? そんなんでリーダーが務まるのかよ?

 え?

小栗 リーダーのくせに社内情報に疎いようじゃ困るよな。いいか、プロジェクトメンバーは各部門から選ばれた若手5名で、俺もその1人だ。……ったく、ツイてないぜ! お前みたいなデキない奴がリーダーなんて、会社も何を考えてるんだか。もしプロジェクトが失敗しても、俺たちのせいにしないでくれよ。ま、せいぜい頑張ってくれ。

 そう言い残すと、小栗はさっさといなくなってしまった。誠とは同期入社だが、どうも反りが合わないタイプだ。それに、仕事の引き継ぎや自分自身の心配で頭がいっぱいだった誠にとって、それまでほかのメンバーのことなど考えている余裕すらなかった。

 まさかあいつがメンバーだとは……。東山部長は何も言ってなかったし。さっそくPCで掲示板をチェックしなきゃ。もし、小栗みたいな奴ばかりだったら嫌だなあ……。

 そう不安に思って席に戻ろうとした矢先に、内線の携帯電話が鳴った。電話をかけてきたのは飲料開発部の坂口賢二。彼とは新入社員時代に“新製品企画部”で一緒に苦労を分かち合った仲だ。

坂口 よう誠、元気か? さっきウチの部長から聞いたんだが、今度お前がリーダーの社内プロジェクトに入ることになったそうだな。ヨロシク頼むな。

 えっ? ああ、こちらこそよろしく。そういや、一緒にやるのは“新製品企画部”以来だね。

坂口 おう、その部署名は懐かしいな。あの時はお互い入社したばかりで、すごく会社に期待していたのにさ。市場規模を読み違えたからって、3年もたたずに部が解散したもんな。おかげであれからずっと会社不信だよ。

 まったくひどい話だったよな。ところで坂口、ほかのメンバーが誰だか知ってる? うっかりしていて、まだプロジェクトメンバーを知らないんだよ。

坂口 今度のキックオフミーティングで全員が顔を合わせるんだろ? たしか購買部の小栗順、商品販売部の山口勉、市場調査室の浜崎しほ、それに製造部の仲居先輩だったな。そっちの準備は大丈夫なのか?

 うーん、なんとかね。でも君がメンバーだって聞いて少しほっとしたよ。なんかリーダーっていわれてもピンとこなくてさ。

坂口 何言ってんだよ、せっかくのチャンスじゃないか。モノにしなけりゃもったいないぜ。俺も頑張って協力するからさ! じゃあな。

 携帯電話をポケットにしまいながら、誠は坂口の励ましに感謝していた。

 そうだよ。そもそもプロジェクトは1人だけでやるものではなく、チームプレイなんだ。

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