第2話 頑張りすぎて空回り?Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(2/4 ページ)

» 2008年09月03日 04時30分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

 だけど、経験の浅い若手社員ばかりで大きな取り組みなんてできるのかなぁ。全員が協力的ってわけじゃないだろうし。このメンバーで今まで一緒に仕事をしたことがあるのは、坂口と仲居さんだけだ。仲居さんは仕事となるとものすごく厳しい人なんだよな。水戸工場ではずいぶんと鍛えられたし。ところでプロジェクトのリーダーって、最初に何をすればいいんだろう?

 とりとめもなく考える誠の脳裏に、さきほどの小栗の苦々しげな顔がよぎった。

 まあ、とにかく頑張るしかないか。まずは、キックオフミーティングをバシッと決めなくちゃマズいな。でもその前にメンバーには直接あいさつしといた方がいいかも。

 ということで、さっそく誠は市場調査室のある広報部フロアを訪ねた。ここには仕事柄よく来ていたが、プロジェクトメンバーである浜崎しほと直接話したことはなかった。

 商品企画室の中村と申しますが、浜崎さんはいますか?

浜崎 浜崎は私です。もしかして、プロジェクトリーダーの中村さん?

 え、はい! よろしくお願いしますっ!

 いきなり初対面でリーダーと言われ、思わず声が裏返ってしまった誠。フロア全体の注目が自分に集まるのを感じて、すぐにでも逃げ出したくなった。

浜崎 ふふ、そんな大声を出さなくても、十分聞こえるわよ。どうやら相当、元気があり余ってるみたいね。まあ体力もリーダーの資質の1つだし、頼りにしてますよ、中村リーダー。

 は、はい! えっと、キックオフミーティングは来月の5日です。その時、浜崎さんの自己紹介をお願いします。

 大きな瞳でいたずらっぽく笑う浜崎を見ていると、さらにどぎまぎしてしまいそうなので、そそくさと引きあげた誠が、次に足を運んだのは山口勉のいる商品販売部だ。

 山口さんはいますか?

商品販売部員 今日は「大豆っこ」のプロモーションで大阪に出張してますけど。急ぎの用事なら連絡を取りましょうか?

 ええと、そんなに急ぎじゃないので後でメールを入れておきます。

 軽く一礼して、誠は部屋を出た。いくら同じ社内とはいえ、アポなしでいきなり席を訪ねても本人に会えるとは限らない。

 ちょっと勇み足だったかな。突然小栗に突っかかられて、思わず頭に血が上ってしまった。リーダーたるもの、もっと堂々としてなくっちゃいけないな。

あなたが誠なら、どうする?

 新しいプロジェクトを始めることを「キックオフ」といいます。新プロジェクトのスタートを宣言するために行う、最初の集まりが「キックオフミーティング」です。顔合わせ程度で済ませることもありますし、プロジェクトの詳細を説明することもあります。

 再来週のキックオフミーティングを迎えるにあたって、誠はその前に、初対面のメンバーにあいさつをすることにしました。できれば対面で、事前にひと言あいさつしておくことは大切です。

 誠はキックオフミーティングで、今回のプロジェクトが会社の期待を背負った、非常に重要なものであることをメンバーに伝えたいと考えています。

 ここで質問です。もしあなたが誠だったら、キックオフミーティングの準備として、ほかに何をしますか?


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