第5話 まとまらない会議を意義あるものにする方法Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(2/3 ページ)

» 2008年09月24日 18時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

星野 さて、この表から次に、何を考えればいいと思いますか?

 次回のチーム討議では、小栗さん、仲居さんから発表してもらうだけでなく、山口さんに販売部としての意見を説明してもらわないといけないですね。前回の彼の話は、ただの愚痴みたいだったので。

星野 例えば、彼にはどんなことを説明してもらいたいですか?

 新商品を成功させる上で必要な情報ですから、できれば競合他社製品の販売規模や売り方、販売経路ごとにかかるコストの違いなんかを教えてくれたらいいと思います。あっ、そうか。今、僕が知りたいと思ったことを前もって山口さんに知らせておけば、きっと彼も当日までに準備をしてくれますよね。

星野 そうそう、いい感じで気付いてくれましたね。つまりそれが、「今までの情報を整理した上で、論点を明確にする」ということです。では「仮説」、つまりこれらの情報から想定される方向性や解決策といったものは、どうやって考えましょうか?

 うーん、いろんな種類の情報があふれていて、うまくまとまらないなあ。整理する道筋みたいなものがあるとやりやすいんだけど……。

星野 では、ちょっと工夫してみましょう。

 星野はさっきホワイトボードに書いた表のコピーを取ると、ホワイトボードを何も書いていない面へ裏返し、別の図を書き始めた。(図)

新商品企画のための仮説

星野 坂口さんと浜崎さんの報告内容に基づいて、製品の位置付けをイメージしてみました。先ほどの仮説の1つは、この点線で囲った部分を目指してはどうか、ということです。またここでの競合製品の円の大きさ、つまり収益性はあくまでも推測でしかありませんが、おそらく山口さんや小栗さんが詳しい情報をお持ちではないでしょうか。

 確かにこうやって絵で表すと分かりやすいですね。うちの製品が目指す製品の方向性も一目瞭然だし。……でも、この横軸の買いやすさの順序は、対象となるお客様の立場によって変わってきますよね?

 気が付くと星野と一緒にホワイトボードの前に立っていた誠は、思わず赤ペンで「この軸は購買層によって異なる」と書き足した(図をクリックすると表示)。

星野 いいところに気が付きましたね。私は今回のターゲット層が女性中心で、しかも中高年層も含まれると思い、この順番にしてみました。特にテレビ通販は中高年女性には非常に高く支持されていますからね。

 師匠、この図はこのまま残しておいてもいいですか? 次回の討議で使いたいと思うんです。僕もそうですが、こうやってボードの前に立って直接情報を書き込めるとその場で整理できるし、新しいアイデアもわいてきそうです。

 誠は、自分でも不思議なくらいリーダーとしての自信のようなものがみなぎってくるような感覚を持った。

星野 ぜひその調子でリードしてみてください。それと、メンバーの発表では言わせっ放しにするのではなく、こうした仮説に沿って自ら質問していくようにしてください。会議を仕切るのなら、積極的な攻めの姿勢も大切ですよ。

 はい。でも、いざとなったら師匠に聞けばいいから安心です(笑)

星野仙八のアドバイス:「会議で出てきたさまざまな情報を整理し、論点を明確にするには?」

他人から聞いた話を頭の中だけで整理しようとしても、抜け漏れが起きたり、すぐに忘れてしまったりします。

 参加者のコンセンサス(合意)を図り、その場で議事録を残すためにも、会議中積極的に、ホワイトボードやメモに話の要点を書き留めましょう。特にお勧めなのは、付箋紙(ポストイットなど)に書いて貼りながら整理する方法です。

 例えば本記事の「新商品企画のための仮説」のような図は、一般に「ブロックチャート」と呼ばれます。ブロックチャートで情報を整理するとき、縦横2軸で見たときにどこに位置するかを付せん紙に書けば、何度も書き直さずに簡単に修正できます。


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