そして次の週、第2回チーム討議が行われた。小栗順の発表の後、誠はホワイトボードの図をメンバーに示しながら、小栗からの情報を反映していった。
誠 小栗さんの原価予測を反映してみると、収益性の円の大きさはこんな感じになると思います。ところで、以前僕がいた「新製品企画部」で、国産大豆を使うと原価が上がるが収益性も約2割上がるという調査結果があったんですけど、小栗さん、当時と比べて国産大豆価格ってどう変わりました?
誠の突然の切り返しに、いささか戸惑いながらも小栗は平然と応えた。
小栗 正確な数字は、席に戻ってみないと分からないが、たぶん原価ベースで1割アップぐらいじゃないか。
誠 では、次回までに調べていただけますか? それと新製品とはいえ、原価を抑えて収益を確保するには、よく仲居さんがおっしゃっている「品質とのトレードオフ※」、つまり品質確保のためのコスト負担を考えなくてはなりません。今度の新製品で譲れないポイントは「高濃縮の維持」と「簡易パックでも長期保管可能」だったはずなので、テストマーケティングでしっかりと品質面を検証していきたいと考えます。仲居さん、ご協力よろしくお願いします。
仲居 お、おう。なんか今日はやけに張り切っているけど、なにかあったのか、誠。
浜崎 この図って、中村リーダー1人で考えたものじゃないんでしょう?
見透かしたような浜崎の突っ込みに直接誠は答えず、部屋の後ろに座っている星野に軽く目を合わせただけで話を進めた。
誠 もちろん収益確保には原価予測も重要なので、小栗さんにはさらに協力してほしい項目があります。この後、仲居さんともう一度山口さんから情報を出していただいたら、新商品ターゲットの仮説を立てるために必要な追加情報を皆さんとリストアップしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
相当驚いた様子で自分を見ている小栗と仲居の表情を見ながら、誠は「僕には頼れる参謀が付いているんだ」と心の中で自慢げにつぶやいた。(第6話に続く)
ジェネックスパートナーズ取締役会長。ゼネラル・エレクトリック(GE)で、シックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルト(専従リーダー)として参加後、経営コンサルタントに転身。
2002年11月、お客様とともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から、お客様の成果実現のために企業変革を支援し、事業価値向上に貢献するプロフェッショナルファーム「ジェネックスパートナーズ」を設立。日本企業再生を目指して、企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』などがあり、中国、韓国、台湾等でも翻訳出版されている。
「誠」世代が“自立する=自ら考え正しく行動できる”ことが、今後の日本経済を支えるといっても過言ではありません。社会に出たビジネスパーソンとして自立するためのきっかけは誰にでも必ずありますから、そのチャンスに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
しかしその際、気合と根性だけでは徒手空拳も同然。本連載でご紹介するようなビジネスリーダーとしての心構えと基本動作を身に付けておいたほうが無難でしょう。これらは難しく考えるのではなく、実際に試してみることが大切です。
本連載の主人公・誠は、おっちょこちょいではありますが、好奇心と向上心を持ち合わせたがんばり屋です。誠のように『天は自ら助くるものを助く』の精神でプラス思考で臨んだリーダーこそが、最後にはきっと生き残るのです。
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