どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(1)横浜エリア編近距離交通特集、出発進行(2/3 ページ)

» 2008年10月02日 21時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 18号答申が挙げている順に、今後整備されるべき路線を「概要」と「現状」に分けて紹介していく。

 タイトルに付いている「【数字】」は、答申で振られている番号を示す。答申では1項目が示す路線の範囲が大きいため、便宜的に(1)、(2)と分割して表記する路線もある。また、「現状」の部分では筆者の所感を多分に含んでいることをご承知願いたい。地図はGoogle Mapsより引用し、将来どのように鉄道が走るかを赤線で大まかに示した。

【01】横浜3号線の延伸

横浜3号線延伸計画の概要

 横浜市営地下鉄3号線は、JR根岸線の関内駅と東急田園都市線のあざみ野駅を結ぶ区間で開業している。現在は同1号線と一体的に運用されており、湘南台駅からあざみ野駅までを「ブルーライン」と称している。18号答申では、あざみ野駅からさらに北進し、すすき野を経由して小田急線の新百合ヶ丘を結ぶ路線が提案されている。

横浜3号線延伸計画の現状

 横浜市北部には東急と小田急があり、両社は東京都心から放射状に路線を伸ばしている。この「ヨコ糸」が強いため、横浜市住民といえども東京志向が強く、“横浜都民”という言葉もあるほどだ。

 3号線の延伸計画は、この地域に「タテ糸」を造り、鉄道空白地帯を解消することと横浜都心を中心とした地域作りをすることを目指している。しかし、横浜市交通局は現在財政難で、地下鉄やバスなどの公共交通事業を見直す時期にある。そのためか、次項のグリーンラインより優先順位は低いようだ。

出典:Google Map

【03】横浜環状鉄道

横浜環状鉄道の概要

グリーンライン

 元町−根岸−上大岡−東戸塚−二俣川−中山−日吉−鶴見を結ぶ環状の路線。このうち中山−日吉間が2008年3月に横浜市営地下鉄4号線「グリーンライン」として開通した。路線図としては「C」の字になるが、横浜市の構想としては元町駅で「みなとみらい21線」と連絡し、横浜駅に達する状態を「環状」ととらえているようだ。

横浜環状鉄道の現状

 JR横浜線中山駅と東急東横線日吉駅を結ぶ先行開業区間は、これまで東京へ遠回りしていた横浜線沿線の人々を東横線に誘導する役目を果たしている。そのせいか平日の日中でも、4両編成の電車は座席が埋まり、立ち客もいるという混み具合だ。しかしそれでも輸送量は建設前の見込みを下回っている。

 また、本来は横浜を中心とした放射環状路線を計画しているにもかかわらず、結果的に横浜都民の移動を助けるという皮肉な状況にもなっている。環状線は環状を完成し、放射路線をつながなければ本領を発揮しない。しかし、横浜市交通局は企業債の利子負担が重く、営業黒字にもかかわらず経常赤字という現状。当面は新規投資よりも借金の返済を優先したいようだ。

【05】神奈川県東部方面線(仮称)

神奈川県東部方面線(仮称)の概要

 相模鉄道の二俣川と東海道新幹線の新横浜、東急東横線の大倉山を結ぶ計画。新横浜駅を核とし、相模鉄道を分岐して新横浜へ、東急東横線を分岐して新横浜を結び、両線を直通して相模鉄道沿線から東京都心へのアクセスを狙った。

神奈川県東部方面線(仮称)の現状

 18号答申は東京へのアクセスを主眼に置いており、横浜中心構想の横浜市とは相いれない部分もあった。また、相模鉄道は新横浜が横浜駅に近く、既存路線の旅客のスライドに終わることを危惧していたと思われる。そのため計画は進まなかった。

 2004年、相模鉄道西谷駅とJR貨物線羽沢駅に短絡線を建設する案が浮上する。相模鉄道としては既存の横浜方面を維持しつつ、湘南新宿ライン経由新宿へのアクセスで新規旅客を獲得するチャンスと判断したようだ。

 一方、この路線が実現すると、東急としては相模鉄道から横浜駅経由で乗り換える東横線の客を失う。そこで東急と相鉄は共同で日吉−新横浜−横浜羽沢を結ぶ路線を計画した。この2つの案が結果的に神奈川県東部方面線の機能を有するため、国土交通省と横浜市も新路線案を新東部方面線として推進することになった。

 横浜市にとっては横浜都民の便宜を図ることになったが、相模線沿線、東横線沿線から新横浜にアクセスしやすくなるため、他地域から新横浜への流入も期待できる。なお、相模鉄道はJRとの直通を2015年度予定、東急は相模鉄道との直通を2019年4月予定と発表している。

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