どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(1)横浜エリア編近距離交通特集、出発進行(1/3 ページ)

» 2008年10月02日 21時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
東京メトロ副都心線

 2008年の首都圏はちょっとした「鉄道開業ブーム」だった。3月30日には東京都交通局の「日暮里・舎人ライナー」と横浜市交通局の「グリーンライン」が開業し、6月には東京メトロ(東京地下鉄)の「副都心線」が走り始めた。

 また、既存の鉄道路線の改良工事も進んでいる。3月28日に東急大井町線で急行運転が開始されたし、それ以前のトピックとしては、JR東日本の湘南新宿ライン、都営三田線、営団南北線と東急目黒線の相互乗り入れ、東京モノレールの羽田第二ターミナル延伸や快速運転、東武特急スペーシアのJR新宿駅乗り入れなどが記憶に新しい。

 東京という大都市において、主たる交通機関の鉄道アクセスは常に変化している。そしてその変化は終わりを知らない。そこでこの記事では、今後予定されている首都圏の鉄道開発計画を洗い出してみた。

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(2)東京エリア編その1

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(3)東京エリア編その2

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(4)東京駅周辺編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(最終回)成田新線・新交通編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(前編)

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(後編)

キーワードは「運輸政策審議会答申第18号」

日暮里・舎人ライナー

 1987年の国鉄解体後、日本の鉄道は地方自治体と民間資本主体の事業となった。それらの事業主の利益に沿った経営が行われているが、好き勝手に路線を建設する、あるいは廃止することはできない。

 現在の首都圏の鉄道路線開発にはガイドラインが存在する。それは「運輸政策審議会答申第18号」(以下18号答申)というもの。鉄道の公共性を重視し、東京の流動人口を調査・予測した上で、路線開発の優先順位を策定した文書だ。2008年に開通した「日暮里・舎人ライナー」も「地下鉄副都心線」も、この答申に基づいて建設された路線である。

 運輸政策審議会は旧運輸省に設けられた運輸大臣の諮問機関で、答申は政策に生かされる実効的なものだった。答申で整備が必要だとされた路線については、鉄道事業会社の免許申請が速やかに処理されている。

 鉄道事業者が資金面で開発困難な路線については、特定都市鉄道整備促進特別措置法などを整備することで支援している。鉄道路線に関する答申は鉄道会社の指針となるだけでなく、自治体では区画整理や再開発事業の指針となり、不動産業者にとっても事業計画の重要参考資料となっている。

 18号答申が策定されたのは2000年のこと。2015年を目標年度とし、それまでに整備すべき鉄道路線、その後も整備を検討すべき路線を示している。掲げられた路線は全部で27路線。このうち、2008年現在開業しているのは下表の9路線。つまり、18号答申で名前が挙がりながら、まだ開業していない路線に注目すれば、今後の首都圏の鉄道開発計画が見えてくるのだ。

2015年までに整備すべき路線<開業区間>

答申での番号 項目名 工事対象区間 事業者
2 みなとみらい21線の建設 横浜−みなとみらい中央−元町 横浜高速鉄道
6 東京急行電鉄東横線の複々線化及び目蒲線の改良(1) 目黒−田園調布間改良工事 東急電鉄
10 東京6号線の建設 目黒−白金高輪−三田 東京都
11 東京7号線の建設及び延伸(1) 目黒−白金高輪−溜池山王 東京地下鉄
11 東京7号線の建設及び延伸(2) 赤羽岩淵−浦和美園 埼玉高速鉄道
15 東京11号線の延伸(1) 水天宮前−住吉−押上 東京地下鉄
16 東京急行電鉄田園都市線の複々線化及び大井町線の改良(1) 大井町−二子玉川園(改良工事) 東急電鉄
17 東武鉄道伊勢崎線の複々線化 業平橋(押上)−曳舟間複々線化、越谷−北越谷間複々線化 東京地下鉄
18 東京12号線の建設及び延伸(1) 都庁前 新宿西口 飯田橋 門前仲町 青山一丁目 新 宿 東京都
19 東京13 号線の延伸 池袋−新宿三丁目−渋谷 東京地下鉄
22 東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の建設(1) 東京テレポート−天王洲−大崎 東京臨海高速鉄道
25 常磐新線の建設及び延伸(2) 秋葉原−つくば 首都圏新都市鉄道
28 東京モノレール羽田線の建設 新東ターミナル−羽田空港 東京モノレール
31 日暮里舎人線の建設 日暮里−見沼代親水公園 東京都

2015年までに整備すべき路線<未完成>

答申の番号 項目名 工事対象区間
1 横浜3号線延伸 あざみ野−すすきの付近−新百合ヶ丘
3 横浜環状鉄道 元町−根岸−上大岡−東戸塚−二俣川−中山−日吉−鶴見
5 神奈川県東部方面線(仮称) 二俣川−新横浜−大倉山
7 川崎縦貫高速鉄道(仮称)の新設 新百合ヶ丘−宮前平−元住吉−川崎−京急大師線直通(検討)
8 京浜急行電鉄久里浜線の延伸 三崎口−油壺
9 東京1号線の東京駅接着 宝町−日本橋間の接続点−東京駅
11 東京7号線の建設及び延伸(3) 浦和美園−岩槻−蓮田
12 東京8号線の延伸及び複々線化 石神井公園−練馬間複々線化、豊洲−東陽町−住吉−押上−四ツ木−亀有−野田市
13 東京9号線の複々線化及び延伸(1) 東北沢−喜多見間複々線化
16 東京急行電鉄田園都市線の複々線化及び大井町線の改良(2) 二子玉川園−溝の口間複々線化
18 東京12号線の建設及び延伸(2) 都庁前− 光が丘 大泉学園町
20 京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線を短絡する路線の新設 大鳥居−京急蒲田−蒲田
21 区部周辺部環状公共交通(仮称)の新設(1) 葛西臨海公園−赤羽−田園調布
23 JR京葉線の中央方面延伸、総武線・京葉線接続新線(仮称)の新設及び中央線の複々線化 三鷹−新宿−東京、新木場−新浦安−船橋
24 JR東北線、高崎線及び常磐線の延伸 上野−東京
25 常磐新線の建設及び延伸 東京−秋葉原
26 北総開発鉄道北総・公団線を延伸し新東京国際空港へ至る路線の新設 印西牧の原−印旛日本医大−土屋−新東京国際空港
29 ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線の延伸 有明−豊洲−勝ちどき
30 多摩都市モノレールの延伸(1) 上北台−箱根ヶ崎
34 千葉都市モノレールの延伸 県庁前−中央博物館・市立病院前−星久喜ターミナル

今後整備について検討すべき路線

答申での番号 項目名 工事対象区間
4 相模鉄道いずみ野線の延伸 湘南台→相模線方面
6 東京急行電鉄東横線の複々線化及び目蒲線の改良(2) 多摩川園−日吉−大倉山
13 東京9号線の複々線化及び延伸(2) 和泉多摩川−新百合ヶ丘間複々線化,唐木田→横浜線・相模線方面延伸
14 東京10号線の複々線化 新宿−調布間複々線化
15 東京11号線の延伸(2) 押上−四ツ木−松戸
16 東京急行電鉄田園都市線の複々線化及び大井町線の改良(3) 溝の口−鷺沼間複々線化
18 東京12号線の建設及び延伸(3) 大泉学園町→武蔵野線方面
21 区部周辺部環状公共交通(仮称)の新設(2) 田園調布−羽田空港方面
22 東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の建設(2) 東京テレポート−東京貨物ターミナル−羽田空港
27 東海道貨物支線の旅客化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設(1) 東京テレポート−東京貨物ターミナル−羽田空港−浜川崎−桜木町
27 東海道貨物支線の旅客化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設(2) 品川−東京貨物ターミナル
27 東海道貨物支線の旅客化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設(3) 浜川崎−川崎新町−川崎
30 多摩都市モノレールの延伸(2) 八王子−多摩センター、町田−多摩センター
32 東西交通大宮ルート(仮称)の新設 大宮−さいたま新都心−県営サッカースタジアム
33 幕張地区の新しい交通システムの新設 海浜幕張→総武線方面
最近開業した路線の多くは18号答申に基づいていた。答申では1項目の路線の範囲が大きいため、ここでは便宜的に(1)、(2)と分割して表記する
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