どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(4)東京駅周辺編近距離交通特集(1/4 ページ)

» 2008年10月31日 15時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 2000年に策定された「運輸政策審議会答申第18号(以下、18号答申)」で描かれている首都圏の鉄道構想を追っていく連載記事の4回目(全5回)。今回は東京駅周辺の新線計画を取り上げる。

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(1)横浜エリア編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(2)東京エリア編その1

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(3)東京エリア編その2

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(最終回)成田新線・新交通編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(前編)

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(後編)

(注):タイトルに付いている【数字】は18号答申で振られている数字を示す。また、「○○の現状」では筆者の所感を多分に含んでいることをご承知願いたい。地図はGoogle Mapsより引用し、将来どのように鉄道が走るかを大まかに示した。

【23】JR京葉線の中央方面延伸、JR総武線・JR京葉線接続新線(仮称)の新設及びJR中央線の複々線化

JR京葉線改良計画の概要

 名前が長くて説明しづらいため、ここでは「JR京葉線改良計画」としておく。この計画は「東京駅始発のJR京葉線を地下トンネルで西へ延伸し、三鷹駅でJR中央線と相互直通運転を行う計画」と、「JR京葉線の新浦安駅より西側とJR総武線の船橋より東を直通運転する計画」とによって構成される。また、新木場駅でJR京葉線とりんかい線を相互直通運転することも含まれる。JR京葉線の活性化、JR総武線とJR中央線の都心部の混雑緩和を狙う。また、東西方向の高速直通運行を促す計画でもある。

JR京葉線改良計画の現状

 まったく進んでいない。将来に向けた動きも、目立った事柄は伝わってこない。

 まずは「東京駅始発のJR京葉線を地下トンネルで西へ延伸し、三鷹駅でJR中央線と相互直通運転を行う計画」から解説しよう。

 JR京葉線の東京駅は地下深くにあり、しかも東京駅(他路線)の南側、正確には有楽町駅に寄っていることから、乗客は大変不便な乗り換えを強いられている。不便な構造になった理由は、JR京葉線の東京−越中島付近までは、成田新幹線の計画を転用した経路だからだ。成田新幹線は東京都心部と成田空港の連絡を目的として計画されたが、1983年に工事は凍結している。

 では、なぜ成田新幹線の東京駅を従来の東京駅の真下に作ろうとしなかったか。それは、成田新幹線を新宿方面に延伸し、中央新幹線(リニア中央新幹線)と接続する構想があったためである。東京駅の直下に駅を作ると、西に延伸する際に皇居に当たってしまうのだ。

 つまり、現在のJR京葉線東京駅は成田新幹線の経路を転用しているために、いつでも西に延伸できる構造になっている。また、地下深くを走るので、用地買収も駅地上部だけで済む。JR京葉線三鷹駅は、現在のJR中央線三鷹駅の直下とする計画だ。18号答申では「JR中央線と直通運転」と表記されているが、「現在のJR中央線に乗り入れる」という意味ではない。JR中央線には地下に高速列車用の複線を建設する計画があり、京葉線はその新線に乗り入れるのだ。

 JR中央線ではこの計画とは別に、三鷹−立川で高架化事業が始まっている。2011年の完成を目指しており、すでにいくつかの区間は高架となっている(ただし、国分寺−西国分寺は地上区間)。また、改良された西国分寺駅は複々線化に対応できるホームになっているなど、JR中央線側の受け入れ態勢は整っている。後は都心部分の地下開発が残るわけだが、膨大な資金が必要なため、JRのみの路線開発事業としては厳しい。

JR京葉線延伸区間。正式発表された具体案がないため直線で示した。実際には接点駅が設けられる可能性が高い
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