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» 2008年10月31日 15時00分 UPDATE

近距離交通特集:どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(4)東京駅周辺編 (3/4)

[杉山淳一,Business Media 誠]

【24】JR東北線、JR高崎線及びJR常磐線の延伸

東京縦貫線計画の概要

 上野駅と東京駅にJR東北本線の複線を復活させて、上野駅発着のJR東北本線、JR高崎線、JR常磐線とJR東海道線を相互直通させる計画である。途中に駅の設置はしない。

東京縦貫線計画の現状

ah_tokyo.jpg 工事中の東京縦貫線予定地(東北新幹線車内から撮影)

 この計画は上野駅と東京駅という両ターミナル駅を結び、JR山手線とJR京浜東北線の混雑を緩和するというもの。JR東日本が2008年5月に工事に着手、完成予定は2013年度となっている。

 しかし、それだけに終わる話ではない。 たった3.6キロメートルの整備計画が、東京を大きく変えようとしているのだ。尾久(東京都北区)、田町(東京都港区)にあるJRの車両基地を整理することで、東京の一等地に広大な再開発用地を確保できる。新東京タワーと同じか、それ以上のプロジェクトを生み出す源泉。それがこの東京縦貫線計画だ。

 東京から北方面の長距離列車は上野駅発着、南方面の長距離列車は東京駅発着。新幹線が東京駅で接続するまではそれが常識だった。しかし、東北新幹線の工事が行われる以前は、東京駅や品川駅からも東北方面の長距離列車が発着した時代がある。

 それが中断された理由は、東北新幹線の工事で用地が削られてしまったからだ。その路線を今度は新幹線の上を通して復活させることになった。現在でも上野駅から秋葉原駅までは複線が通っており、JR常磐線の留置線(一時的に電車を留置するための線路)として使われている。東京駅の北側にも複線が延びており、やはりJR東海道線の折り返しに使われている。用地が足りない部分は神田付近で、この部分の新幹線の上に線路を造るのだ。

 この路線が完成した時の効果としてJR東日本は、「朝通勤時間帯で最も混雑度が高い上野−御徒町の混雑率の軽減」、「JR東北、高崎、常磐線各線とJR東海道線各線との所要時間の短縮」といった首都圏のネットワークの強化を挙げている。首都圏を南北に結ぶネットワークの効果は湘南新宿ラインが実証済みだ。これがもう1本加わるとすれば心強い。

 特に期待を持っている地域は、湘南新宿ラインの恩恵を受けられなかったJR常磐線沿線だろう。JR常磐線の特急「ひたち」や中距離列車が東京駅や品川駅に乗り入れると、東海道新幹線や京急経由での羽田空港へのアクセスも便利になる。またJR東海道線沿線でも、大宮発伊豆方面行きのリゾート特急、大船、横浜発の水戸行き特急が走るかもしれない。鉄道ファンでなくても想像すれば楽しくなりそうだ。

 この計画はJR東日本の輸送体系を大きく変えることになるが、そこで生み出される大きなメリット、それはJR東日本が都心の一等地に保有する大きな車両基地を整理縮小できることにある。JR東日本は南北直通運転を開始することで、品川車両基地に収容している車両を東北本線方面の車両基地に分散配置できる。すると、約20万平方メートルの品川車両基地の一部を空けられるようになる。JR東日本はその空いた用地に「札の辻新駅(仮称)」を新設し、大規模な再開発をしたい意向だ。東京縦貫線の費用は大企業のJR東日本にとっても大きい。しかし、そのメリットはもっと大きいのだ。

ah_19.jpg 赤線は建設中部分、青枠は品川車両基地(この一部が札の辻新駅と再開発予定地となる)

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