eco検定って何だ?――東京商工会議所に聞いてきた

» 2008年10月15日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 問題。次の空欄に入る言葉は(1)〜(3)のうちどれか?

環境にやさしい食生活のためには、近くでとれたものを食べる【   】の考え方が大切であるとされている。

(1)旬産旬消

(2)地産地消

(3)一村一品

 正解は(2)の地産地消。

 これは環境社会検定試験(通称eco検定)で実際に出題された問題だ。eco検定とは東京商工会議所が年2回実施している検定試験で、環境に関する基礎知識を問うもの。

 eco検定は2008年7月までに4回行われ、のべ5万2258人が受験し、3万9487人が合格した。なぜeco検定を始めたのか、何を目的にしているのかを東京商工会議所検定事業部の川瀬健介部長に尋ねた。

福祉住環境コーディネーター検定試験の成功がきっかけ

東京商工会議所検定事業部の川瀬健介部長

 「eco検定の基本は啓発にあります。環境に関する幅広い知識を身に付けることで、地球環境が危機に直面していることに改めて気付いてもらいたいのです」と東京商工会議所検定事業部の川瀬健介部長はeco検定の意義を説明する。

 東京商工会議所では、eco検定以前にも「カラーコーディネーター検定試験」「ビジネス実務法務検定試験」「福祉住環境コーディネーター検定試験」「BATIC(国際会計検定)」といった4つの検定試験を行っていた。

 それぞれ企業に勤めるビジネスパーソンを対象とした検定試験だったのだが、福祉住環境コーディネーター※検定試験では様子が違った。主婦や学生、高齢者の受験者も多く集まったのだ。そして、そうした人々が合格すると、それぞれが住んでいる地域で独自にグループを作り、活動を始めたのだという。この出来事を目の当たりにした川瀬氏は「福祉住環境コーディネーター検定試験でできたことが、環境でもできるのではないだろうか」と考え、そこからeco検定の構想が生まれた。

※福祉住環境コーディネーター……高齢者や障害者に対して住みやすい住環境を提案するアドバイザー。

 企業へのヒアリングなどを経て、2006年10月15日、第1回のeco検定が行われた。受験者は1万3767人と初回から1万人を超えたが、その背景について川瀬氏は「日本人は検定好き。それに加えて、環境問題について何かしたいという意識が高まっていたことが現れたのではないか」と分析する。

 eco検定の問題は環境問題の仕組みや歴史などがまとめられた公式テキストのほか、『環境白書・循環型社会白書(日経印刷)』などからも出題される。あくまで「知識を身に付けてもらうことが目的」(川瀬氏)なので、合格率は80%前後と高くなるようにしているという。

 第1回eco検定では、12歳から86歳までが合格した。川瀬氏が意図した通り、企業人だけではなく、学生や主婦なども多く受験。そして、盛り上がりは一過性のものとならず、2008年7月の第4回eco検定では過去最高の1万4983人が受験した。

eco検定結果一覧

実施日 施行商工会議 申込者数 実受験者数 合格者数 合格率
1 2006年10月15日 33 1万5166人 1万3767人 1万1025人 80.1%
2 2007年7月15日 137 1万942人 9817人 5059人 51.5%
3 2007年12月16日 137 1万5267人 1万3691人 1万1461人 83.7%
4 2008年7月20日 176 1万6426人 1万4983人 1万1942人 79.7%
5 2008年12月21日 176

エコピープルからエコユニットへ

 eco検定に合格するとどんなメリットがあるのだろうか?

 「試験勉強を通じて知識を獲得できるということが第一にありますが、転職などの際に履歴書に書くと、人事も何らかの評価をしてくれるでしょう。最近はCSR(企業の社会的責任)を重視している企業も多いですから」と川瀬氏は話す。また、企業の人材育成でもeco検定を利用する意義は大きいという。「環境対策をしていない中小企業が、大手企業から取引を切られたというケースも耳にしています。社員の環境意識を高めるためにも、eco検定を利用してもらえれば」

eco-people.jp

 「eco検定は合格すれば終わり、という類の試験ではない」と川瀬氏は強調する。東京商工会議所ではeco検定の合格者を「エコピープル」と呼び、その活動を支援するためのWebサイト「eco-people.jp」を設けている。

 Webサイトではeco検定の合格者2人以上が環境サークルを作ってeco-people.jpに申請すると、「エコユニット」として紹介してもらえる。2008年7月までに、80団体ほどが登録。「企業の有志や商店街の人たちなどが集まって、社会全体を動かす力となれれば」と川瀬氏は期待する。また、合格後も知識を深められるように、eco-people.jpでは最新の環境ニュースも配信している。

 東京商工会議所では「エコピープル100万人計画」を打ち出し、検定の普及に努めている。「無謀な大風呂敷かもしれませんが、環境問題を改善するために貢献できれば」と川瀬氏は意気込む。

 次回の第5回eco検定は2008年12月21日に行われる。申込みは11月7日まで受け付けている(団体の場合は11月5日まで)。編集部からも筆者が受験する予定だ。

第5回eco検定

eco検定公式テキスト

試験日:12月21日(日)13時30分〜15時30分

申込登録期間(個人):11月7日(金)18時まで

申込登録期間(団体):11月5日(水)18時まで

受験料:5250円

試験場:北海道から沖縄県まで全国176カ所

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