紅葉の秋が来た――ドイツ人の落ち葉処理の知恵松田雅央の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2008年11月04日 02時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

 紅葉を美しいと思う人はドイツにも多い。しかし、日本のような紅葉狩りの習慣はなく、そもそも“紅葉”というドイツ語が見当たらない。植生の違いから赤やオレンジより、黄色く色付いた木が目立つのだ。

 一方、日本もドイツも秋になると落葉掃除に苦労するのは一緒。先日訪れたベルリン郊外のファルケンベルク住宅地も庭や街路が落葉で覆われていた。

 ここは世界的建築家ブルーノ・タウトが1913年に建設した労働者のための緑豊かな住宅地。こういったタイプの住宅地は“グリーンシティー”とも呼ばれ、2008年7月には彼が手がけたほかの住宅地とともにユネスコの世界遺産に登録されている。タウトは日本とも縁が深く、ナチスドイツの迫害を逃れて日本に亡命していた3年間に多くの本を著した。当時の日本人が特に価値を見い出していなかった桂離宮を、アテネのパルテノン神殿に並ぶ建築物として世界に紹介するなど、日本の伝統建築に新たな光を投じている(ドイツニュースダイジェスト、外部リンク)。

ユネスコの世界遺産“ファルケンベルク住宅地”の街路樹

街の緑を守る

 ファルケンベルク住宅地を管理するベルリンのBBWO1892住宅組合の役員ヘルマン氏と歩きながら落ち葉掃除の話題になった。住宅敷地内は住民、共有地は組合、公共の道路や歩道は自治体が落ち葉の処理をする仕組みは日本もドイツも同じ。しかし「日本の自治体の中には財政難のため、落ち葉処理の費用を節約しようと街路樹を切り倒してしまうところがある」と話したらヘルマン氏の目が点になった。

 ドイツにも、破産寸前で街路樹を管理する公園局や緑地課を閉鎖する自治体はある。しかし、街路樹は都市景観を織りなす財産だという共通認識があるため、切り倒すという発想はまず出てこないように思う。

 また、市街地の立ち木を守るための法律があり、私有地や公有地の別なく胴回り80センチメートル以上の木は伐採することが禁じられている。伐採するには特別な理由が必要で、個人宅ではこの許可がなかなか下りない。これはこれで「庭の針葉樹が嵐で倒れそうで怖いが、それでも切れない」といった弊害はあるものの、街の緑を守ろうとするドイツの覚悟がよく分かる。

送風機を用いた公園の落ち葉集め
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