どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(最終回)成田新線・新交通編近距離交通特集(2/5 ページ)

» 2008年11月07日 18時12分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 一方、北総線延伸案は18号答申に盛り込まれ、引き続き整備が行われた。印旛日本医大−土屋の新線については、2002年に設立された第三セクターの成田高速鉄道アクセスが建設、保有することになった。同社の過半数の株式を持つ筆頭株主は成田国際空港で、ほかには千葉県と京成電鉄が出資している。列車の運行は京成電鉄が担当し、新しいスカイライナーと各駅停車列車を走らせる。18号答申で「関係者が多岐にわたる」ため「関係者間の調整」が必要と記された理由は、このように1本のルートに複数の鉄道会社が絡む事態となっているためだ。しかし、実態としてはすべての会社に京成電鉄の資本が入っており、調整とリーダーシップ役は京成電鉄が担っていると言えよう。

 成田新高速鉄道が全通した場合、京成電鉄は都心から成田空港への直通特急列車と、印旛日本医大−成田空港の各駅停車の運行を担当する。また、京成高砂−印旛日本医大は引き続き北総鉄道が運行を担当する。

 問題は、複数の線路保有会社を経由するため、運賃の上昇が懸念されることだ。特に北総鉄道は、日本で最も高額運賃で知られる鉄道会社の1つである。新スカイライナーは到達時間が短縮されるため、現在のスカイライナーよりは高めの運賃が設定される可能性はある。しかし、東京モノレールのように、各駅間の運賃を割高に、空港直通運賃を割安に設定するなどの施策が取られると思われる。だがその結果、北総線利用者の割高感が強調されることになると反発が大きくなるだろう。

 一方、京成電鉄にとっては、スカイライナーが成田新高速鉄道へ移転することで、既存の京成本線のダイヤに余裕が生まれる。成田空港優先のダイヤから地域優先のダイヤへ回帰することになるだろう。これにより、船橋、津田沼、千葉などの沿線都市の利便性が増す。また、現在のスカイライナー車両は新スカイライナーの導入によりすべて廃車という報道もあるが、一部を残してリニューアルし、朝夕の有料通勤ライナーを増発する案や、一部スカイライナーを京成本線に残す案も検討されるはずだ。この場合、京成本線運行のスカイライナーは青砥駅、京成船橋駅、京成津田沼駅、八千代台駅など停車駅を増やし、沿線地域と成田空港を結ぶ列車として設定されるだろう。

 なお、18号答申では都営浅草線の東京駅アクセスに触れており、ここで新型スカイライナーを東京駅に乗り入れる案もある。こちらは進ちょくが見られないため、京成側としては考慮していないようだ。京成としては東京側のターミナルを日暮里駅と京成上野駅に設定している。現在、日暮里駅の改良工事を進めているほか、京成上野駅では東京都が御徒町駅、上野駅を結ぶ地下道の整備に着手している。

青線が開業部分、赤線が延伸部分、緑線が現在のスカイライナーのルート。地図上は新旧ルートの距離は差がないように見える。しかし、新ルートの赤線部分は時速160キロメートルで運行。青線部分の北総鉄道部分は時速130キロメートルで運行するため、旧ルートよりも大幅に時間を短縮できる

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