体験乗車から貸し切りサービスまで――“世界でここだけ”「リニモ」の魅力とは?(前編)近距離交通特集(2/3 ページ)

» 2008年12月02日 14時20分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

静粛性の高さが、乗り心地と近隣環境に貢献

 リニモの走行システムにはもうひとつ、見逃せないメリットがあるという。それが静粛性の高さ、すなわち「静かさ」だ。

 「リニモは走行中、レールから浮いていますから、車軸や車輪など摩擦音が発生する場所がありません。ですから、車内がとても静かなのです。

 さらに構造的に静粛性が高いことは、『車両の遮音材を減らせる』、『窓を大きく取れる』、『軌道上の防音壁がいらない』など、様々なメリットがあります。特に防音壁が減らせることで、車内からの見晴らしがよくなるだけでなく、路線周辺の景観を損なわずにすむのです」(江尻氏)

 詳しくは後編でレポートするが、リニモの「静かさ」は確かに驚かされる部分である。乗車中はかすかなモーター音と風切り音がするのみで、加速・減速どちらでも不快な金属音などは一切ない。また取材時、駅を出て軌道を走るリニモの撮影を行ったが、頭上を車両が通過しても、ほとんど気付かないほど静かだった。従来型の鉄道・地下鉄はもちろん、ゴムタイヤ式の新交通システムと比べても、その静かさはずば抜けている。

走行中のリニモ。高架線と高架駅であるが、防音壁がなく、とても見晴らしがよい。また、リニモの走行音はとても静かで、注意していないと近付いてきていることも気付かないほどだ

 「走行音が静かということは、お客様の快適性向上だけでなく、(路線の)周辺環境を騒がせずにすむ。騒音のないリニモのシステムは、住宅地から(野生動物の多い)里山まで多くの場所でメリットがあるのです」(江尻氏)

 また、詳しくは写真を見てもらうと分かりやすいが、走行中にレールと接触しないリニモは、鉄粉などブレーキダストを発生しない。住宅のすぐ側を走っても、騒音や鉄粉に悩まされることがないというのも、リニモのクリーンかつエコな部分だろう。

 「実を言いますと、愛・地球博の時期は、乗客数が多すぎて『加減速性能』や『登坂性能』、『静粛性』といったリニアモーターカーならではの良さが、乗っていただいた方々に実感しづらかった。しかし、(乗客が減った)今乗っていただくと、リニモの良さが実感していただけるのではないかと思います」(江尻氏)

リニモは稼働中は常に浮上しており、駅停車中に静止状態を保つ以外はレールと接触しない。そのため鉄道やクルマのようなブレーキダストはほとんど発生せず、写真のように洗浄前の車両でも下回りはかなり綺麗だ。リニモは構造的に騒音やブレーキダストの鉄粉が発生しにくいので、住宅地や自然の多い地域でも、周辺環境への影響を最小限に抑えられる

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