リニモの走行システムにはもうひとつ、見逃せないメリットがあるという。それが静粛性の高さ、すなわち「静かさ」だ。
「リニモは走行中、レールから浮いていますから、車軸や車輪など摩擦音が発生する場所がありません。ですから、車内がとても静かなのです。
さらに構造的に静粛性が高いことは、『車両の遮音材を減らせる』、『窓を大きく取れる』、『軌道上の防音壁がいらない』など、様々なメリットがあります。特に防音壁が減らせることで、車内からの見晴らしがよくなるだけでなく、路線周辺の景観を損なわずにすむのです」(江尻氏)
詳しくは後編でレポートするが、リニモの「静かさ」は確かに驚かされる部分である。乗車中はかすかなモーター音と風切り音がするのみで、加速・減速どちらでも不快な金属音などは一切ない。また取材時、駅を出て軌道を走るリニモの撮影を行ったが、頭上を車両が通過しても、ほとんど気付かないほど静かだった。従来型の鉄道・地下鉄はもちろん、ゴムタイヤ式の新交通システムと比べても、その静かさはずば抜けている。
「走行音が静かということは、お客様の快適性向上だけでなく、(路線の)周辺環境を騒がせずにすむ。騒音のないリニモのシステムは、住宅地から(野生動物の多い)里山まで多くの場所でメリットがあるのです」(江尻氏)
また、詳しくは写真を見てもらうと分かりやすいが、走行中にレールと接触しないリニモは、鉄粉などブレーキダストを発生しない。住宅のすぐ側を走っても、騒音や鉄粉に悩まされることがないというのも、リニモのクリーンかつエコな部分だろう。
「実を言いますと、愛・地球博の時期は、乗客数が多すぎて『加減速性能』や『登坂性能』、『静粛性』といったリニアモーターカーならではの良さが、乗っていただいた方々に実感しづらかった。しかし、(乗客が減った)今乗っていただくと、リニモの良さが実感していただけるのではないかと思います」(江尻氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング