体験乗車から貸し切りサービスまで――“世界でここだけ”「リニモ」の魅力とは?(前編)近距離交通特集(3/3 ページ)

» 2008年12月02日 14時20分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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3万7440円でリニアモーターカーを貸し切れる!?

 このようにリニモは「21世紀の公共交通システム」として、注目すべきポイントが多々ある。しかし、愛・地球博の終了直後は、利用客の少なさに悩まされた。「1日の利用者数が1万人を切ることさえあった」と、江尻氏は述懐する。

 「現在は沿線の大学・高校の通学需要や、(名古屋市営)地下鉄東山線と愛知環状鉄道を結ぶ連絡需要などを開拓しつつ、毎年2桁のペースで利用者数を増やしています。

 また、最近はリニモ自体を(愛・地球博当時と同じ)『動くパビリオン』とし、その魅力を体験してもらう様々なプランやキャンペーンの開発に注力しているところです」(江尻氏)

 その最初の成功例になったのが、「リニモ体験乗車券」だ。これはサツキとメイの家があることで人気のある愛・地球博公園からのみ乗降できる特別乗車券で、大人400円・子ども200円で販売。特典として、「リニモ体験乗車証明書」・「特製パンフレット」が付いてくる。

リニモ体験乗車用のパンフレットと乗車券。リニモそのものに「乗ること」を楽しんでもらう企画は、家族連れを中心に好評だという

 「本来は愛・地球博公園までリニモに乗って行ってほしかったのですが、(愛・地球博公園への)来園者の多くは自家用車で行ってしまう。しかし、子どもたちは『リニモに乗りたい』と親にせがむことが多かったのです。それならば、クルマで愛・地球博公園に来た家族が、アトラクションのひとつとしてリニモに乗って楽しめるサービスにしようと用意したのが、リニモ体験乗車券なのです」(江尻氏)

 リニモ体験乗車券は当初、2008年8月末までの期間限定キャンペーンだったが、予想以上に利用者に好評だったため期間を延長。2009年の5月末まで実施するという。

 同じく期間限定のイベントとしては、クリスマスシーズンにあわせて「リニモ de イルミトレイン」も実施される。これはリニモの沿線にある複数のイルミネーション観覧スポットで一時停車し、夜景を楽しみながらゆっくりと走るというもの。さらに車内では木管アンサンブルの生演奏も行われる。

 「リニモは加減速がすばやいので、営業運転中の路線でも臨時列車を軌道上に『一時停車』することができます。また走行中の騒音がほとんどないので、(3両編成の)中央の車両で生演奏をすると、車内でゆったりと音楽が楽しめます。リニモ de イルミトレインは、これらリニモならではの特徴を生かした企画です」(江尻氏)

 さらに極めつけの体験プランといえるのが、「リニモわくわく体験貸切列車」だ。これはリニモを1編成まるまる貸し切り、約30分間の“リニモ体験”ができるというもの。しかも価格は、1回あたり3万7440円。この値段で、最大104人まで乗車できるという。むろん、友達同士や家族など少人数で貸し切ることも可能だ。

 「体験貸切列車は通常の営業運転ではありませんので、本来の運行では体験できない急加速のデモンストレーションや、引き込み線に入って着地・浮上の体験ができます。運転資格のある乗務員が添乗いたしますので、リニモの動作説明から、その特徴ある乗り味まで存分に体験していただけます」(江尻氏)

 冒頭でも述べたとおり、常設のリニアモーターカーは世界で2カ所だけ。さらに「貸し切り」ができるのは、世界中を探してもリニモだけだ。個人でも申し込み可能で、しかも3万7440円というプライスは破格と言ってもいいだろう。リニモわくわく体験貸切列車は、完全予約制で1日4〜5本限定で運行している。

 「リニモでお勧めの乗り方は、やはり最前方席です。防音壁がなく、(無人運転なので)運転席が開けていて前方が眺望できますから、まさに『空中散歩』の気分が味わえます。最前方席に座れなくても、どの席も窓が大きいので、ぜひその景色の良さを楽しんでいただきたい」(江尻氏)

 リニアモーターカーの魅力が気軽に楽しめる「リニモ」。名古屋を訪れた際には、少し足を伸ばして乗ってみる価値は十分にある。(後編に続く)

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