「省エネ対策」をビジネスに――ドイツのエネルギーエージェンシー欧州エコビジネス最前線(2/3 ページ)

» 2008年12月09日 11時15分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

環境円卓会議がきっかけ

 ハイデルベルクのエネルギーエージェンシー「クリバ」を例にして具体的な活動を説明しよう。

 バーデン・ヴュルテンベルク州の古都ハイデルベルクでは、以前から都市気候の改善が重要課題となっていた。そのため市環境局は1997年に市民団体、住宅建設協会、商工会議所、研究機関、環境局の代表を集めた「環境円卓会議」を開催。そこから公益企業クリバ(KliBA)※が生まれた。クリバは非営利の有限会社であり、ハイデルベルクをはじめとする近隣5つの地方自治体とコンサルティング契約を結んでいる。

※クリバ(KliBA)……Klimaschutz- und Energie- Beratungsagentur(気候保護・エネルギーアドバイザー)

ハイデルベルク中心市街地に立つ大気モニターの電光掲示板。数字は、左から二酸化硫黄、粉塵、二酸化窒素、オゾン、一酸化炭素の濃度。いずれも基準値を下回っている

省エネ対策にエネルギー報告書を活用

 クリバと契約する自治体は市民1人当たり年間0.35ユーロのコンサルタント料を支払い、クリバは定期的に市民向け相談窓口を開設する。古い暖房・給湯用ボイラーを付け替える際の公的補助、太陽電池の設置、断熱改修など、市民がクリバのような専門機関のアドバイスを必要とする機会は多い。

 また、クリバでは自治体向けに公共施設の「エネルギー報告書」を作成し、省エネアドバイスを行っている。州の統計資料によると公共施設で消費されるエネルギー料金は(水道も含む)「市民1人当たり年間35ユーロ」。これまでの実績によると、クリバのアドヴァイスを受けた自治体はそれを5〜10%削減できるというのだ。

 例えば人口10万の自治体の場合。全公共施設の光熱・水道費は年間およそ350万ユーロで、その10%を削減すれば35万ユーロの経費節約となる。エネルギー報告書の作成はオプションなので1万ユーロの費用がかかり、10万人分のコンサルタント料(3万5000ユーロ)は必要だが、それを差し引いても年間30万ユーロほどの経費を削減できる。頭割りすれば少額だが「行政が自ら努力して経費を削減し、環境保全に寄与した」という具体的なアピールにはなるはずだ。

クリバのDr.ケスラー代表

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