私、山崎元の“ものぐさ情報管理術”山崎元の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年01月08日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『超簡単 お金の運用術』(朝日新書)など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 2008年の出版界の大きなトレンドの1つは「勉強法」だった。著者でいうと、何といっても勝間和代さんだ。茂木健一郎さんの脳の本もよく売れていたが、こちらにも需要の底流には効率のいい勉強をしたいというニーズがあったと思う。実際には勉強法を変えただけで、人間が急に利口になることはまれだろうが、ノウハウ本の著者を恨んではいけない。この種の本は、本を読んでいる間に「この方法でもっと効率が上がるに違いない!」という精神的高揚感があれば、商品として十分ではないだろうか。

昔から情報管理法に興味を持つ

情報は一冊のノートにまとめなさい』(奥野宣之著、ナナ・コーポレート・コミュニケーション)

 さて筆者は、勉強法にはあまり大きな期待を持っていないのだが、効率が良くて実用的な情報の管理法には興味を持っている。正確にいうと、過去から現在まで大いに興味を持ち続けている。それは、筆者自身が情報の管理がうまくなかったということだ。

 筆者は証券会社の社員、小さな自分の会社の社長、それに経済評論家を兼ねているので、情報管理法には興味がある。日々の情報収集のほかに、文章を1つ書くにも、データが必要な場合が多々あるし、記事の出典を確認しなければならない場合も多い。

 そんな中、昨年手に取ったノウハウ本の中では、『情報は一冊のノートにまとめなさい』(奥野宣之著、ナナ・コーポレート・コミュニケーション)がなかなか実用的だった。この本は、どこにでも100円ほどで売っているようなA6のノートに情報をまとめる方法を説明している。詳しくは原本にあたってほしいが、1冊の小さなノートに何でもメモして、記事のスクラップなどもできるだけ集約して、このノートをいつも持ち歩こう、ということが書いてある。最後の2ページをテープで貼ってポケット状の袋を作り、この中に名刺やスケジュール(表)などを入れておくといった、細かなテクニックも紹介されている。ローコストな方法でもあり、試してみたくなった。

100円ノートが役立っている

 奥野氏の本については、既に多くのレビューが書かれているので、以下、整理下手な経済評論家である筆者の、現時点での情報管理法を報告してみよう。実は100円ノートが大いに役立っているのだ。

 筆者が使っている100円ノートは現在3冊目だが、基本的にメモは、ボールペン(三菱鉛筆のジェットスリームの3色で太字のものが圧倒的に書きやすい)で何でも書くことにしている。電話の相手、用件のメモのこともあれば、経済指標の数値を書き込むこともある。携帯で自分にメールする方法もあるが、この種の情報のメモは手書きの方が早い。

 経済ニュースは日付が分かれば、要点をネットで検索することができるので、詳しい記事を保存しておく必要はまずない。「08年12月22日 トヨタ、今期営業赤字1500億円に下方修正!」くらいのことが書いてあれば、あとは必要に応じて内容を調べることができる。「いつ」と「何」だけが残っていれば十分だ。

 新聞は仕事の必要上6紙購読しているが、新しいニュースのチェックは、Googleリーダーを使うことが多い。ロイター、日経ネット、asahi.com、ウォールストリート・ジャーナル(これだけ有料)など複数のニュースサイトを登録している。

 切り抜きやコピーを100円ノートに貼ることがあるのは、要人の発言など、文のニュアンスが重要な情報の場合だ。昨年、原油価格が夏にピークを打って急落したが、FRBのバーナンキ議長は4月の時点(2日の議会証言)で商品市況が将来下落する見通しであることを明言していた。こういう発言は、スクラップのしがいがある。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.