ある雑誌編集者に見る、“優しいリストラ”の手口山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年01月22日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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 根掘り葉掘り細部を聞くことはできなかったが、1人が言うには、会社の状況が分かり、「辞めてもえると助かる」と上司に言われたときに、彼は「辞めてあげよう」と思ったのだという。もう1人も、そういうことらしい。

 本当に会社に同情したのかもしれないし、「辞めてほしい」と自分が言われた事実に向き合いたくなかったのかもしれないし、別の理由があったのかもしれない。筆者は、当事者ではないから、そこまで立ち入って、あれこれ言う立場にはない。

 一方、社員をリストラする会社の側としては、現在の法制では、前記のように会社が不利な争いになる可能性が大きいので、後の禍根を断つためにも、何とかして、社員が自発的に辞めた形を整えようとする。

 そのために、解雇の対象者に優しく語りかけるケースもあれば、精神的なショックを意図的に与えるケースもあるし、「自分から円満に辞めた方が、君の経歴に傷が付かない」などといった半ば以上嘘を言うケースもある。

一見優しいだけのリストラ

 出版業界に限らず、対象者を自己都合退社に誘導する「優しいリストラ」(より正確には「一見優しいだけのリストラ」)が、今後しばらく増えるだろう。

 運悪く対象となった方は(今どきのリストラは、世間も「不名誉」ではなく「不運」と解するだろう)、最終的な意思決定は本人次第だが、損得と状況をよく理解して、ある程度先を読み、本当に納得した上で身の振り方を決めてほしい。もちろん本当に決めるまでは、「辞める」といった、同意とも取られるような言動は避けるべきだ。

 何はともあれ、先の2人には、何とかして幸せな職業人生を歩んでほしい。

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