中高生が古紙回収を担当!?――ドイツの古紙収集システム松田雅央の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年02月03日 07時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

松田雅央(まつだまさひろ):ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及びヨーロッパの環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ(http://www.umwelt.jp/)


 日本の「ちり紙交換」同様、ドイツでも業者が古紙を買い取る時代があったが、今日では古紙は市民にとって処分に料金のかかるゴミでしかない。

 古紙の一番簡単な処分方法は、各戸備え付けの資源ゴミコンテナにほかの資源ゴミ(金属、プラスチック、木材など)と一緒に捨てること。この資源ゴミコンテナは市の清掃局から有料で借りているもので、月々のコンテナ使用料がすなわち「公共のゴミ料金」ということになる。コンテナの容量には数種類あり、古紙でコンテナが一杯になるようなら、料金の高い大きなコンテナに借り換えなければならない。

 そのため、賢い市民は古紙を分別しておき、無料の収集日を活用する。ゴミを減らせばコンテナを小さいものに借り換えられるわけで、分別やゴミ削減の努力次第でゴミ料金は大きく節約できるのだ。

資源ゴミコンテナ(容量1100リットル)

清掃車に飛び乗る子どもたち

 無料の古紙収集は2〜3カ月に1度行われ、自治体(清掃局)の委託を受けた地元の市民団体が作業する。筆者が住む地域では地元のスポーツクラブが活動資金を集めるために担当しており、収集日が近づくと予定日・時間・責任者・連絡先が書かれた小さなチラシが各戸のドアに貼られる。もちろん、市民団体が古紙収集用の車両や分別作業場を所有しているわけではないので、作業は業者と共同で行われることになる。

古紙収集日を知らせるチラシ

 実際の収集作業は子どもたちが中心となって行うのだが、その様子は日本人の感覚からすると衝撃的ですらある。

 作業は運転手1人、アルバイトの子どもたち(中学生や高校生)3〜4人、ボランティアの大人1人が1組となって各戸を回る。しかし、子どもたちが自分で清掃車のプレス機を操作し、清掃車は子どもたちを後部ステップに乗せたまま走っているのだから、驚かずにはいられない。もし事故が起きたらどうするのか、見ているこちらが心配になるほどだ。

 日本ならば安全面から絶対に有り得ない作業を子どもたちに任せる感覚には首を傾げるが、ここまで子どもたちに責任を持たせる社会の勇気には感心させられるものもある。蛍光ラベルの付いたオレンジ色のジャケットを羽織り、次々と作業をこなす子どもたちの姿が実にたくましい。

古紙収集作業の様子
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